現金強奪に成功した若者3人組と一味を追う警察側のカー・アクションによる追跡劇。

 

 

 

 

 

 

              -  DIRTY MARY, CRAZY LARRY  -     監督 ジョン・ハフ

 

   出演 ピーター・フォンダ、スーザン・ジョージ、ヴィック・モロー 他

 

こちらは1974年制作の アメリカ映画 アメリカ です。(93分)

 

 

 

 

  ストークカー・レーサーのラリーは、レース用のカーを手に入れるために、相棒の機械工のディークと共謀して、ある町のスーパーマーケットの金を強奪する計画を立てた。ディークがマーケット支配人スタントン宅に押し入り、スタントン夫人と娘を人質に、ラリーがスタントンを脅迫する筋書きでまんまと15万ドルを奪い取った。

 

 

 

 

首尾よく目的を達成したラリーがマーケットから出てくると、前夜一緒に寝た女メリーが彼の車の中で待っていた。ディークとメリーを乗せたラリーの68年型ブルー・シボレーは国道を突っ走った。一方、警察はスタントンの通報で活動を開始した。

 

 

 

 

担当責任者はすご腕のフランクリン部長が当たることになったが、ラリーの車には発信受信兼用の無線機が備えつけられており、やすやすと捜査の裏をかける仕組みになっていたが、車内で3人がトラブルを起こしているうちにパトカーに発見されてしまう。ラリーはスピードをあげるが、相手は執拗に喰い下ってくる。

 

 

 

 

ラリーはストックカー・レーサーの腕をふるって相手の車に自分の車をぶつけて見事振り切るが、ラリーが無線機を備え、逐一警察側の動静を知り翻弄し、しかも仮保釈中のズベ公メリーが同乗していることを知ったフランクリン部長は、ついにヘリコプターに乗って空から陣頭指揮にあたる。 ラリー達はやがてある村の露天市に車を乗り入れダッジ・チャージャーに乗り換えて逃走を再開するのだが、、。

 

 

 

 

タランティーノの「デス・プルーフ」等に多大な影響を与えたカルトロードムービーな本作。 アメリカン・ニューシネマ後期の作品ではありますが内容はとってもパワフルで、とにかく広大な土地を疾走する車のスピード感と、それを追う警察のパトカーとのカーチェイスをただただ楽しむ為だけにストーリーがあるといっても過言ではない作品です。

 

 

 

 

過去にカーレースに携わっていたラリーとディークは再びレースに出る為の資金を調達する為スーパーマーケットの売り上げを強奪する計画を立て実行します。 このオープニングの強奪も電話を使った手口だったりと70年代テイストでなかなかグッド。 その上、スーパーの店長があのロディ・マクドウォールというのもたまりません。

 

 

 

 

さて相棒と合流して逃走となるはずが、昨晩一緒だったメリーが「サヨナラも言わないの?」 と乗り込んでいて、旅は道連れとばかりに逃亡に加わる事になります。 このメリーがなかなかのトラブルメーカーで、はすっぱな態度やよく喋って落ち着きがない感じが「母をたずねて三千里」のアメデオみたいで、こちらまでイライラしちゃいましたよ。

 

 

 

 

そこからはもう逃走するラリー達が乗る青のシボレーと、それを追いかける警察とのカーチェイスが繰り広げられていきます。 彼らを追う事になる警察の部長を演じるのがヴィック・モローで、彼も上司の命令を聞かないはぐれ者というのもお約束。 自分のテリトリーで起きた事件は意地でも捕まえてやるという昔ながらの熱血漢がたまりません。

 

 

 

 

そして本作の最大の魅力は何といってもカーチェイスの迫力です。 ほとんどのカースタントを自分でこなしたというピーター・フォンダの見事なアクション。 砂ぼこりを撒きながらの疾走シーンや車同士のぶつかり合い、派手なジャンプと車好きじゃない人が観ても十分楽しめる見所が満載の、正にアクションにつぐアクションの痛快作です。

 

 

 

 

他にも車内のジョークや、パトカーが突っ込んだ看板に「シートベルトを締めましょう」と書かれてあったり、運転席のドアをもぎ取られたされたパトカーが情けない姿で走っていく場面や、「マッドマックス」を思わせる特殊なエンジンを積んだパトカーに乗り込むマックスばりの警官など、愉快なシーンも多く登場しているのも特徴的で、ラリー達も警察すらも拳銃が一切登場しないというのも粋な演出です。

 

 

 

 

警察部長自らヘリコプターに乗り込み、ラリー達の車とバトルする場面はなかなかの見ものです。 最近のアクション映画にある細かい編集でごまかすのとは違い、そこそこのロングショットで車の屋根をヘリで叩く場面等の本気のスタントシーンには今観ても感動する程で、無線機で会話しながらのやり取りもとっても愉快。 ヘリに乗っているヴィック・モローの姿にあの、「トワイライトゾーン」の悲劇がチラついたのは私だけでしょうか、、。

 

 

 

 

そんなアクションがメインの作品ですが、やはりアメリカン・ニューシネマの血筋はしっかりと受け継がれているのも特徴で、3人の会話から漏れてくる挫折や悲しみ、そして心の交流と信頼。 社会から外れてしまった若者が運命共同体の車で権力から逃れる為に疾走する姿にいつしか共感している自分。 

 

 

 

 

そして微かな希望と夢がもう少しで手に出来ると思った瞬間に現れる現実の壁。 この無慈悲で躊躇のない旅の終わりに、これぞアメリカン・ニューシネマと改めて打ちのめされ、そして泣き、何故かしら感動してしまいました。 いや、最高のエンディングです。 そこからのエンドロールの短さ、最近のやたら長いエンドクレジットには無い作り手側のこれでもくらえ!とでもいうような潔さを感じてワクワクします。

 

 

 

 

父親とは真逆なキャラを多く演じるピーター・フォンダがなかなかセクシーで魅力的、その相棒ディークを演じるアダム・ロークも渋くて素敵、メリーを演じるスーザン・ジョージのクセの強さには戸惑いましたが、後半からはそれがチャーミングに見えてくるから女優さんて不思議ですよね。 「宇宙からのメッセージ」のヴィック・モローもビックでした(笑)。

 

 

 

 

カーアクション映画として観るも良し、犯罪映画として観るも良し、ロードムービーとして観るも良しと、アメリカン・ニューシネマ、そして70年代のエキスと映画としての面白さが凝縮されて詰め込まれた作品だと思いますので、機会がありましたらご覧になってみて下さいませ、です。

 

では、また次回ですよ~! パー