杉谷庄吾【人間プラモ】による原作漫画を映画化した『映画大好きポンポさん』は、映画を愛する青年と映画に愛された女性が映画制作を通して"自分"を見つけ出す、映画愛に満ちあふれた作品。

 

 

 

 

 

  -  POMPO: THE CINEPHILE  -    監督 脚本 平尾隆之 原作 杉谷庄吾

 

 出演 清水尋也、小原好美、大谷凜香、加隈亜衣、大塚明夫、木島隆一 他

 

こちらは2021年制作の 日本映画 日本 です。(90分)

 

 

 

 

  敏腕映画プロデューサー・ポンポさんのもとで、アシスタントとして働くジーンは、観た映画をすべて記憶している映画通。映画を撮ることにも憧れていたが、自分には無理だと毎日を過ごしていた。

 

 

 

 

そんな折、ポンポさんに15秒CMを任されたジーンは、映画制作に没頭する楽しさを知るのだった。ある日、ジーンはポンポさんから、次に制作する映画『MEISTER』の脚本を渡される。 それは、伝説の俳優の復帰作にして、頭がしびれるほど興奮する内容であった。

 

 

 

 

ジーンは大ヒットを確信するが、監督に指名されたのはCMが評価されたジーンだったポンポさんの目利きにかなった新人女優をヒロインに迎え、ジーンは監督として撮影に臨むのだが、、。

 

 

 

 

普段あまり漫画やアニメを観なくて、映画ではせいぜいピクサーやジブリ作品を観る程度の私ですが、このアニメ映画の評判はチラチラと耳に入っておりました。 どうやら映画製作を扱ったお話という事で、このチャンスにナウでヤングなこの映画を観てみようとレンタルした次第でございます。

 

 

 

 

とはいえ、今風なアニメの絵柄に慣れていない私にはポスターにある画風のキャラクターに多少の不安がありましたが、映画を観始めて数分のうちにそんな気持ちはあっさりと消えて、映画のストーリーとキャラクターの住む世界に引き込まれていました。

 

 

 

 

敏腕映画プロデューサー・ポンポさんを中心に、彼女のアシスタントとして働いている映画オタクのジーンと、女優を夢見るナタリーが、新作映画の製作を通じてそれぞれの夢を叶えていくという、ある種定番の成長サクセスストーリーです。

 

 

 

 

漫画原作のこのアニメ、まず驚いたのがこの作品のぶっ飛んだ設定で、物語の舞台はなんと映画の都 「ニャリウッド」(笑) というハリウッドをもじった世界。 ポスターの表記やメモする日常の文字は英語で表記されますが、言葉は当然日本語会話という設定。 

 

 

 

 

登場人物に至っては、主人公ジーンは日本人風の青年で、その上司であるポンポさんはまるでプリキュアの世界から抜け出て来たようなキュートなルックス、初めて画面に登場した瞬間に放った 「ポンポさんが来ったぞ~!」 という一言で、見事にこの作品の世界観に引き込む一撃をくらわされ、「こういう世界なのね」 と納得してしまった私。

 

 

 

 

そんなポンポさんから新作映画の15秒スポットを作るよう依頼されるジーン。 ポンポさんの 「掴みがあって、意外な展開があって、見所を紹介しつつ、ミスリードさせながら引っ張って、最後にドーンって感じで!」 という的確な指示がお見事。

 

 

 

 

これをきっかけにジーンの初監督映画を製作する事となり、同じく女優を夢見ていたナタリーも加わっての映画撮影が始まります。 実際の撮影でのアクシデントや撮影スタッフとの共同作業、プロデューサー、監督、役者といった映画製作の現場でのそれぞれの役割がどのようなものかがリアルに描かれ、ハウツー物としての楽しみもあります。

 

 

 

 

撮影が終了してスタッフは打ち上げとなりますが、監督としてのジーンの仕事はこれからという所もリアルで、70時間以上撮影したフィルムを編集して1本の作品に仕上げなければならないという作業が待ち受けています。 現場で苦労して撮影したフィルムの大半を切り捨てなければならないという苦行と、人生の選択が重なる場面には感動しました。

 

 

 

 

アニメならではの表現方法や作画のクオリティの高さ、光の演出や声優の演技、音楽と編集の見事さは勿論ですが、個人的には物語以上にポッポさんというキャラクターの魅力に惹かれました。 可愛らしい見た目に反して時折発する格言のような言葉が刺さります。 そもそもアシスタントにジーンを選んだ理由に 「目に光がなかったから」 と答えるポンポさん。

 

 

 

 

「他の若い子は光り輝く青春を謳歌した目をしてる。だけど満たされた人間ていうのは、ものの考え方が浅くなる、幸福は創造の敵。それに比べジーン君は社会に居場所がない追い詰められた目をしている。現実から逃げた人間は心の中に自分だけの世界を作る。社会と切り離された精神世界の広さ深さこそがクリエイターとしての潜在能力の大きさなの」 とジーンと似たような人間にも居場所がある事を示唆します。

 

 

 

 

他にもB級映画ばかり撮る事について、「極論、映画は女優を魅力的に撮れればそれでOKでしょう?」 や 「泣かせ映画で感動させるよりお馬鹿映画で感動させる方がカッコいいでしょ?」 とか 「自分の直観を信じないで何を頼りに映画を撮りゃいいのよってね。」と、さりげない言葉がいちいちカッコいいポンポさん。 

 

 

 

 

幼い頃、お爺さんに付き合わされて沢山の映画を観た事で長い映画が苦手になったポンポさんの長い映画嫌いもう一つの理由が 「2時間以上の集中を観客に求めるのは現代の娯楽として優しくないわ。製作者はしっかり取捨選択して出来る限り簡潔に伝えたいメッセージを表現すべきよ。 ブヨブヨした脂肪だらけの映画は美しくないでしょ?」 という理由に共感しちゃう人も多くいるのではないでしょうか?(笑)

 

 

 

 

多くの苦難を乗り越えて完成したジーンの映画が、彼だけでなくナタリーやポッポさんをも成長させる作品になるという心地よさ。エンディングの「ニャカデミー賞」の授賞式の裏で、モグラモンスターが登場する新作を撮っているポッポさんの姿に、B級映画だけでなく物づくりをしている人達への愛と応援を感じる私でありました。

 

 

 

 

映画自体もポンポさん同様にルックスとのギャップのある作品で、編集という映画的な決断の作業と人生の決断、何を捨て何を残すか、それに伴う犠牲と信念といった深いテーマをあくまでも明るくポップに伝え、人生の全てを肯定的に訴えています。

 

 

 

 

ただ映画としてあまりに美しく、良い人間ばかりが登場するストーリーに不満を感じる所も無きにしも非ずですが、それらを補っても余りある魅力と楽しさに溢れた作品です。そして映画が終わって時間を見たらキッチリ90分という 粋な演出もお見事!

 

 

 

 

「名作ってやつの匂いを嗅ぎにきただけよ」 というポッポさんの数々の名言にキュンキュンなる事請け合いですので、機会がありましたらご覧になってみて下さいませ、です。

 

では、また次回ですよ~! パー

 

 

 

 

 

 

この映画の主題歌MVです。 こちらもナウでヤングなパワーが満載の疾走感です 音譜