パーフェクトブルー PERFECT BLUE

 

「パプリカ」 「千年女優」 などで国内外で高い評価を受けたアニメーション監督・今敏が1998年に手がけたデビュー作。 竹内義和の小説「パーフェクト・ブルー 完全変態」を原作に、アイドルから女優に転身した女性を襲う悪夢のような出来事を描く

 

 

 

 

 

 

               -   PERFECT BLUE   -  監督 今敏  原作 竹内義和

 

 出演 岩男潤子、松本梨香、辻親八、大倉正章、秋元羊介、塩屋翼 他

 

こちらは1997年制作の 日本映画 日本 です。(81分)

 

 

 

 

  アイドルグループ 「CHAM」 に所属する霧越未麻は突如グループ脱退を宣言して女優への転身の道へ進む事になります。 未麻は事務所の方針に流されつつも、かつてのアイドルからの脱却を目指すと自分を納得させます。 しかし、アイドルから女優への転身はそう簡単にいくものではありませんでした。 初出演のドラマはセリフが一言だけの端役から始まり、続いて過激なレイプシーンまでも演じることとなります。

 

 

 

 

仕事の過激さは増していき、次にはヘアヌード写真集の撮影をするなど、アイドル時代からは考えられなかったような仕事をこなしてゆく未麻。 「CHAM」 以来のファンたちは未麻の厳しい現状を嘆くが、彼女の女優生活は話題もあってか次第に軌道に乗り始めます。 しかし、人気とは裏腹に未麻は現状への不満を募らせ、アイドル時代の自分の幻影を見るようになります。 

 

 

 

 

レイプシーンやヘアヌードは本当の自分の姿なのか。 自分が望んだことなのか。 そんな疑問を抱く中、インターネット上に未麻になりすました何者かが「未麻の部屋」 と題するウェブサイトを開設していました。その内容は虚実を織り交ぜつつも、まるで未麻本人が書いたかのように日常を綴ったリアルなものでした。 

 

 

 

 

未麻は彼女の熱狂的なファンであるストーカーに監視されていたのでした。 「アイドルとしての未麻」 が更新を続けるウェブサイトを見て、未麻は徐々に精神的に追い詰められていきます。 それと同時期に、未麻の事務所に手紙爆弾が送りつけられたり、遂にはドラマのレイプ場面を書いた脚本家や、未麻のヘアヌードを撮影したカメラマンが次々と殺される事件が発生するのでした。

 

 

 

 

そんな中で、二重人格を題材としたドラマ 「ダブルバインド」 の収録を終えた未麻は、打ち上げ会場でストーカーに出くわし、本物の未麻からメールを送られたと告げられる。ストーカーは目の前にいる未麻を偽物だとして殺そうとしますが、未麻の反撃を受けて気絶して事なきをえます。 助けを求めてテレビ局をさまよっていた未麻を後から来たマネージャーのルミが見つけ、彼女の車で自宅まで送ってもらいます。 

 

 

 

 

自室に戻ってきたと安心していた未麻でしたが、部屋の窓から見える景色がいつもの景色と異なることに気づきます。 そこは自分の部屋そっくりに飾り付けられた別の部屋だったのです。 未麻が戸惑い振り向くと、そこんはアイドル時代の未麻の衣装を身にまとったマネージャーのルミが目の前に立っていたのでした、、というお話です

 

 

 

 

普段からあまりアニメって観ないのですが、なかなかクセが強い作品という噂を聞きつけ「パプリカ」に手を出す前にまず本作をみておこうという事でレンタルしてみました。ピクサーやジブリ作品とは違ったリアル志向の絵面に、普段見慣れていない事もあってその世界観に溶け込むのに正直苦労しましたが、その内容が分かるとこの画でなければ成立しない作品だという事が理解できました。

 

 

 

 

映画の冒頭、デパートの屋上で行なわれているヒーローショーの模様が描かれていますが、ここで本作のテーマともいう構図が説明されています。 テレビでお馴染みの仮面を着けたヒーローが悪と戦うという内容のよくあるショーなのですが、テレビの中のヒーローと実際に舞台に居るヒーローは見た目は同じでもやはり変身は出来ないし高くジャンプも出来ないという虚像でもどかしい存在です。 その後、同じ舞台の上で未麻はアイドルグループから脱退して女優になる宣言をファンにします。

 

 

 

 

このアイドルという偶像から抜け出し、未麻自身で女優という架空の人物を演じる側に転身しようとするのですが、その過程で現実の自分と女優としての自分、そして夢だったアイドルの頃の自分とが心の中で錯綜し始めます。 その上、アイドルとしての未麻に対して異常に執着する過剰なファンの現実とネットでのストーカー行為、女優として参加しているドラマの中の仮想の世界が幾重にも折り重なって、未麻の生活と心を混乱させ、遂にはアイドル時代の未麻が彼女の前に実像のように表れ、未麻自身を翻弄し、彼女は現実と妄想、ドラマ、夢という区別がつかない日常の中で混乱していくさまが描かれていくのです。 

 

 

 

 

普通のアニメで描かれるファンタジックで夢や友情を歌い上げる多くの作品とは一線を画した本作ではレイプ場面や殺人場面という、およそアニメでは描かれないシーンが多く登場し、その上、主人公の女性の精神がどんどんと病んでいくという内容である事もあって、アニメ映画でありながら鑑賞するにはそこそこの精神的体力が必要な作品です。

 

 

 

 

劇中で何度か登場し、映画のポイントとなる言葉 「あなた、誰なの?」 というセリフに込められた意図、鏡に映る別の世界、現実と虚構の危うさをアニメという技法の特製を巧みに利用して表現した今敏監督のセンスは時代の先駆けともいえる凄さを感じます。そんな事もあってかアメリカのダーレン・アロノフスキー監督は、本作を自身の監督作、「レクイエム・フォー・ドリーム」 「ブラックスワン」 で虚構と現実の世界をオマージュという言葉を使って多くを引用していたりします。 監督同士の対談で白状しておりました。

 

 

 

 

一度観ただけで理路整然とつじつま合わせが出来る作品ではなく、細かい部分では様々なパターンと考察が出来る作品ではありますが、この独特な世界観とアニメ的な表現には一見の価値がある映画だと思います。 体調が良い時に今度は「パプリカ」にチャレンジしてみようと心に誓った私でありました。 不思議な作品をご覧になりたい方は、この機会にでもご覧になってみてはいかがでしょうか、です。 

 

では、また次回ですよ~! パー