ガス・ヴァン・サントの長編3作目で、リバー・フェニックスとキアヌ・リーブスの共演で話題を呼んだ青春ロードムービー。

 

 

 

 

 

 

    -   MY OWN PRIVATE IDAHO  -  監督 脚本 ガス・ヴァン・サント

 

 出演 リヴァー・フェニックス、キアヌ・リーブス、ジェームズ・ルッソ、

                            キアラ・カゼッリ 他

 

こちらは1991年制作の アメリカ映画 アメリカ です。 (102分)

 

 

 

 

  マイクは筋金入りのストリート・キッド。父親を知らず12歳のとき母親にも捨てられ、故郷のアイダホを離れポートランドに移り住んだ。街角に立ち、中年男に体を売っては日銭をかせぐ。そして緊張すると睡眠発作を起こし、昏睡状態に陥るという、重症のナルコレプシー病でもあった。

 

 

 

 

そして売春仲間のスコットは、彼と正反対の生い立ちの美少年。ポートランド市長の父を持ち何不自由なく育ったが、家庭の温かさを知らず、3年前に家を飛び出して男娼をして生きている。スコットは奇病を持つマイクの面倒をみることを楽しんでいるようで、2人で、ストリート・キッズたちの現代のフォルスタッフボブをからかったりしている。

 

 

 

 

ある日スコットは、父親が病魔に冒されていることを知り、21歳の誕生日を境に生まれかわることを秘かに自分自身に誓った。一方、マイクは故郷アイダホに残してきた兄を訪ねて、母親探しを始める決意をし、スコットを誘いバイクでアイダホに向かう野宿する2人は色々なことを話し、マイクはスコットへの愛を告白するが、スコツトは「お前は親友だ」といい、彼の愛を拒絶する。

 

 

 

 

翌日、2人はマイクの兄リチャードに会い、マイクは日頃抱いていた疑問をリチャードにぶつけた。「あんたが俺の本当の父親だ」リチャードにもらった手がかりのハガキから、2人はマイクの母親を探してスネーク・リバー、そしてローマへと渡るが、彼女はアメリカヘ帰るといったまま消息を断ったという。悲しみにくれるマイクを慰さめるスコットだったが、その一方で、そこで出会った美少女カルメラと恋に落ちる。

 

 

 

 

マイクは淋しく独りでポートランドに帰り着き、またホモの男たちに抱かれる毎日へと戻った。キッズたちの父親代わりであるボブはすっかり弱って、浮浪者にもからかわれる始末だったが、「スコットがきっと助けてくれる」と言い張る。しかし、高級スーツに身を包みカルメラを連れて故郷に戻ったスコットは、ボブを冷たくつきはなすのだった、、。

 

 

 

 

ウィリアム・シェイクスピアの「ヘンリー四世 」と「ヘンリー五世」を原案にした作品で、主演のリヴァー・フェニックスはこの脚本が気に入り自ら出演を希望したそうで、ほぼノーギャラで参加したといいます。 そんな努力もあってか、この作品の演技によって、ヴェネツィア国際映画祭、全米映画批評家協会賞、インディペンデント・スピリット賞で、それぞれ主演男優賞を受賞しています。

 

 

 

 

マイフェバリット監督の一人、ガス・ヴァン・サントが監督したこの映画。 あのリヴァー・フェニックスとキアヌ・リーブスが 男娼 というショッキングな設定からしてかなりエグイ作品になっているのでは?と心配しましたが、そこはサント監督、美しい映像表現と独特な編集によって詩的な映像叙情詩映画に仕上がっておりました。

 

 

 

 

ポートランドの街角に立ち、体を売って日々を暮らしているストリート・キッズのマイク。彼には緊張すると眠ってしまうという奇病があり、場所を選ばず気絶するように眠ってしまうマイク。 母親の面影を追い求める彼とは対照的に、父親が市長で裕福な生活に反発して家を飛び出した友人のスコット。 全く異なる環境で育った二人の家族を探す旅を描いた私的映画でもあります。

 

 

 

 

身体を売っても愛を知らない二人。 母親の行方は掴めず、スコットに愛を打ち明けるも受け止められる事のなかったマイクの愛。 初めて愛するものが出来たスコットはそれを守る為にマイクの前じゃら去って行きます。 切ない別れと責任、それぞれの居るべき場所へと戻っていく二人、、。

 

 

 

 

どこまでもうねうねと伸びる道路に横たわるマイクを、ただただ傍観する山の風景とその上を気にも留めずに流れていく雲たち。 ラストはあえて俯瞰で写したマイクを救う人物はいったい誰? 兄なのか、スコットなのか、誰でもない他人なのでしょうか。 そう思案している画面に映される 「HAVE A NICE DAY!」 の文字。 やられました

 

 

 

 

原色に写されるゴシックのフォント文字や8ミリの回顧映像、性的シーンがストップモーションの静止画でシュールなアート感、ポルノ雑誌の表紙になって会話を始める登場人物そこに挟み込まれる人間の俗世界を達観するような自然の風景など、ガス・ヴァン・サントの作家性と私的な感情が織り交ざった、ある種のプライベートフィルムな一面を持つ詩的なラブストーリー映画です。

 

 

 

 

ストーリー自体のディテールは忘れてしまいそうですが、映画の空気感やその抽象的な映像はずっと記憶に残り、行間を味わうタイプの作品で、終わった後に映画の余韻がしばらくつづくタイプの作品でした。

 

 

 

 

リヴァー・フェニックスとキアヌ・リーブスの美しさに酔うも良し、BLの儚さを味わうも良しガス・ヴァン・サントの映像美を観るも良しと、様々な視点で楽しめる映画だと思いますので、機会がありましたらご覧になってみて下さいませ、です。

 

 

では、また次回ですよ~! パー

 

 

 

 

 

 

 

ガス・ヴァン・サントの愛しい作品を坂本龍一の音楽でコラージュしてみました。音譜