「女囚さそり」シリーズの伊藤俊也監督が、日本各地の犬神憑きをベースに、自ら脚本を書いたもので、東京の技師と山村の乙女の結婚から、つぎつぎと起る異常で怪奇な現象を描く。

 

 

 

 

 

 

    -  犬神の悪霊(たたり) - 監督 脚本 伊藤俊也   音楽 菊池俊輔

 

 出演 大和田伸也、泉じゅん、鈴木瑞穂、室田日出男、小山明子、岸田今日子 他

 

こちらは1977年制作の 日本映画 日本 です。(103分)

 

 

 

 

 

 

  ウラン技師・加納竜次は同僚の安井・西岡と共にウラン鉱探査のためにある地方の寒村を訪れるが、その際に車が路傍の小さな祠を破壊してしまう。その後、加納は村長・剣持剛造の娘である麗子と結婚するが、その直後に西岡が発狂して自殺し、安井が野犬の群れに襲われて殺される。

 

 

 

 

 

 

麗子は祠の件や、親友の垂水かおりが竜次に惚れていた事を知り、犬神の祟りだと断定し、次第に精神に異常をきたしていく。現代医学でも治療はできず、やむなく竜次は麗子の実家へ帰郷する。そして犬神に憑かれたと断定された麗子は、憑き物落としの責め苦に耐え切れず、自殺する。

 

 

 

 

 

 

それにより、村で犬神憑きの家系として忌み嫌われていた垂水家は村人達の憎悪を集めることになり、さらに竜次の会社がウラン採掘時に使った酸が村の水源に流れ込み、村人たちの中に死者が出る。村人達はそれを犬神=垂水家の仕業と断定、主人である垂水隆作の留守中に、かおりたち家族を皆殺しにする。

 

 

 

 

 

 

隆作は犬を土中に埋めて呪いと共に犬の首を刎ねた。隆作は宙を飛ぶ犬の首に喉笛を噛み切られる形で絶命する。そしてその瞬間、磨子に犬神が取り憑き、村人たちへの復讐が始まる、、。

 

 

 

 

 

 

前からそのタイトルが気になっていたこの作品でしたが、このたび遂に行きつけのT〇UTSYAに準新作で登場!ザワザワ気分を抑えつつ、早速レンタルいたしました。 あの天下の東映さんが製作した本作ですが、その制作過程の概要は以下の通りです。

 

 

 

 

 

 

1973年の「エクソシスト」、1976年の「オーメン」などの1970年代におこったオカルト映画ブームと、公開時前年の「犬神家の一族」の好評にあやかって、「日本初のオカルト映画」として製作された。 また、松竹が準備中の「八つ墓村」のメディア露出の増加を見た東映の岡田茂社長が「恐怖映画を作れ!」と号令をかけ製作されたとも言われている。

 

 

 

 

 

 

パニック映画ブームには新幹線、SFブームにはスター・ウォーズ、当然オカルトブームが来たのならそれに乗らない手はないというフットワークの軽さで製作にGOされたこの映画、意外にもそのアプローチは日本古来の犬神信仰を基盤にしたお話で、ウラン鉱を探して訪れた技術者に降りかかる犬神の祟りが、時に恐ろしく、時にシュールな映像で描かれます。

 

 

 

 

 

 

オープニングは東映の任侠映画を思わせる独特の書体によるスタッフロールでスタート。 車に乗って村にやってきたウラン技師の加納と他2人がいきなり目撃するのが、裸で川遊びをする村の娘、麗子とかおり。 オジサマへのサービスなのか、東映だからなのかは謎に、ヌードやセクシーな場面が沢山登場するのも本作の特徴です。

 

 

 

 

 

 

女性の裸を見た上にウラン鉱まで発見した3人は浮かれてドライブ、道端にあった犬神の祠を車で破壊してしまいますが、気にも留めず調査を続行します。 その行いを諫めるように立ち塞がった犬のタロまでも誤って轢き殺してしまいます!この場面で轢かれた後のタロの演技?ですが、眠らせたの?まさか、、?!と勘繰ってしまう、恐怖と謎に満ち溢れたシーンでした。

 

 

 

 

 

 

飼い主の少年勇が泣きながらタロに駆け寄りますが、この3人のとった行動は、謝りもせずに「しょうがない」と申し訳なさそうにするばかり。 オイオイ!昭和ってそんな時代だったのか、この鬼畜の所業には、早く今すぐにでもこいつらに神の鉄槌をー!と願って止みませんでした。

 

 

 

 

 

 

この時点で当然の如く祟り確定。 都会に帰った加納は村の娘麗子と結婚しますが、他の2人はビルから身を投げて、野良犬の大群に嚙み殺されて、それぞれ謎の死を迎えます。 この犬の大群シーンはなかなかの迫力がありました。

 

 

 

 

 

 

犬神の祟りを疑った麗子(シャワーを浴びながらのお色気ラブシーンに時代とロマンポルノを感じます)も徐々におかしくなり、加納に連れられ村へ戻ってお祓いをする事に。ここで登場する霊媒師がなんという事でしょう、あの白石加代子さん!

 

 

 

 

 

 

金田一シリーズで毎回事件の核心に触れる証言をするエキセントリックな役そのままの憑依演技に痺れます。 しかし、そのお祓いも効果なく麗子も亡くなってしまいます。三谷昇が駐在さんてのも金田一好きにはナイスです。

 

 

 

 

 

 

麗子が亡くなった原因が犬神の祟りだと考えた村の人達は、昔から村で犬神憑きの家系として差別されていた垂水家に憎悪が集中するまでに至ります。 

 

 

 

 

 

 

この垂水家の面子ですが、主人に室田日出男、その妻に岸田今日子という最強コンビ他の映画なら絶対負けなしのお二方ですが、この作品では虐げられている家族側というのも特殊です。

 

 

 

 

 

 

村ではそれと同時期にウランの採掘場になった山から地下水へ硫酸が流出、それを飲んでしまった村人が亡くなり、何も知らない人々は垂水家の仕業だと思い込んで一家を斬殺してしまいます。息子の勇まで殺された姿を見た垂水家の主人は犬神の儀式を行い犬神を自分に憑依させようとします。 

 

 

 

 

 

 

この憑依の儀式がなかなかのクレイジーさ、まさかの飼い犬を首だけ出して土に生き埋めにしてその首を刎ねるというもの。 今ではアウトと思えるワンちゃんの身体を実際に土に埋めての撮影。 刎ねた首は男の首に嚙みついて主人共々死んでしまい、その儀式を見ていた剣持の次女、磨子に犬神が取り憑いて怒涛の裁きが展開される事になります。

 

 

 

 

 

 

いや~ホラーやオカルト映画として怖いかと言えば怖さはほぼ無いんですが、色々と見所は満載の映画でした。 コメディ風の入口からお色気オッパイ、オカルトチックな世界へ行くと思ったら差別や村八分といった因習とそれに反発するような弱小暴走族、ウランや原爆、会社の隠蔽などの社会派な側面まで網羅する貪欲さに監督の意気込みを感じます。

 

 

 

 

 

 

タイトルにもある犬が関連した場面はことごとく残酷で、動物好きでない人でも引く破壊力があります。 他にも公害によって大量に死ぬ魚や、無駄にエロいお祓いシーン、

 

 

 

 

 

 

掘削機にくし刺しにされるスプラッター?ショット、大量の火薬による工場爆破シーンや唐突登場の白い長男、一瞬毛深くなる磨子の足、川原で火葬からの蘇り、からの蠟人形ドロドロなどなど、、。

 

 

 

 

 

 

そもそもこのお話の始まりとなっているのが加納という人物の人でなしぶりが諸悪の根源で、その為、全く彼に同情出来ないから収拾がつきません。 友人は同罪としても、彼に関わった事で亡くなった人ばかり。 

 

 

 

 

 

 

バタバタ村をかき乱すだけの加納が時折道徳的な事をしたりするから余計にイラっとする負のスパイラル。 演じる大和田伸也の顔まで暑苦しく感じてしまうのでした。 磨子を演じた女の子が、後に「ねらわれた学園」で超能力を操る学生を演じているというのも感銘深い所です。

 

 

 

 

 

 

「犬神家の一族」、「八つ墓村」、「蔵の中」といった横溝作品が時折顔を覗かせ、「エクソシスト」、「オーメン」そして「キャリー」をも網羅して、最後は犬ならぬ化け猫映画のエッセンスを振りかけて完成した、

 

 

 

 

 

 

紛れもない 「東映怪奇オカルト映画」 作品でなんとも奇妙、そここそがとっても楽しい映画となっていますので、機会があればご覧になってみてはいかがでしょうか、です。

 

 

では、また次回ですよ~! パー