謎の女によって翻弄されるエリート社員の姿を描くコメディ・スリラー映画。

 

製作・監督は「羊たちの沈黙」のジョナサン・デミ

 

 

 

 

 

 

                -  SOMETHING WILD  - 監督 ジョナサン・デミ

 

 出演 ジェフ・ダニエルズ、メラニー・グリフィス、レイ・リオッタ 他

 

こちらは1986年制作の アメリカ映画 アメリカ です。(113分)

 

 

 

 

  マンハッタンの税金コンサルタント会社のエリート社員チャーリーは、レストランでランチの無銭飲食や新聞の万引きを秘かに行っていたが、ある日1人の若い女性に見咎められる。ルルというその女性はチャーリーを強引に車に乗せて、どこかへと向かう。 2人が着いたのはペンシルヴェニアのとある小さな町。

 

 

 

 

チャーリーはルルの母親に彼女の夫として紹介される。この町は彼女の生まれ故郷だった。そしてチャーリーは、彼女の本当の名前がオードリーであることも知る。次にチャーリーはオードリーの高校の同窓会に連れて行かれ、そこでも彼女の夫として紹介される。チャーリーは完全に彼女の術中にはまり、“何かおかしな事”(サムシング・ワイルド)に巻き込まれてしまっていた。

 

 

 

 

そんな2人につきまとう1人の男がいた。その男はオードリーの実の夫で、粗暴な前科者のレイだった。レイはチャーリーからオードリーを暴力的に奪い取るが、チャーリーも策を講じてオードリーを奪い返し、2人はオードリーをめぐって争う羽目に、、。

 

 

 

 

サイコスリラーの傑作「羊たちの沈黙」や、エイズ問題を扱った「フィラデルフィア」等、一時代を築いたジョナサン・デミ監督の一風変わったコメディ・スリラー作品です。 日本公開時のポスターは、どこかスウィング・アウト・シスターズのジャケットを思わせるお洒落80sなデザインで内容は不明でしたがポスターだけは印象に残っていた映画でした。

 

 

 

 

そんな印象に残っているくせに末鑑賞だったのは微妙なキャストの顔ぶれのせいでしょうか、監督も出演者も本作以降にブレイクする方々ばかりという作品で、今観るとその爆発前の若々しいパワーがふつふつとみなぎっているような不思議な魅力があります。

 

 

 

 

次期副社長に内定しているエリート社員のチャーリーはスリルを味わう為にレストランで無銭飲食を働きます。 が、それを客のルルという女性に見つかってしまったのが運の尽き。 口の上手いルルに言い包められて、気がつけば彼女の車の助手席に座らされているチャーリー。 ポケベルも捨てられ謎のドライブに付き合わされる羽目になります。

 

 

 

 

このルルが登場する時の服装が黒いボブヘアーに大きなサングラス、黒のドレスに多数のアクセサリーを腕に巻くという80年代風で個性的なファッション。行動も破天荒でレジのお金を盗んだり、チャーリーを挑発するように無銭飲食を促したりとかなりアナーキーなキャラクター真面目なチャーリーは彼女の行動に一方的に巻き込まれ目的も分からないまま連れまわされます。 

 

 

 

 

この前半の二人のギャップによるコメディ感と、車に乗って解放されるロードムービー感が、チャーリーからすれば無理矢理ですが、退屈な日常からの現実逃避が心地良く感じる作品です。 なんといってもこのルルという女性がとっても魅力的で、嫌々ながらもついつい付き合ってしまうチャーリーの気持ちが理解出来てしまう憎めなさがあります。

 

 

 

 

結局着いた先は彼女の故郷で、母親を安心させる為にチャーリーを夫として紹介します。 そこでルルは偽名でオードリーが彼女の本名だと知るチャーリー。オードリーの目的は無事に済み、普通の恋愛映画ならここでめでたしめでたしとなる所ですが、実は彼女には逮捕され保護観察中の夫レイがいました。 二人が地元の同窓会に出席したもんですから凶暴な夫レイに知れる事となり、オードリーは力づくでレイに連れ去られてしまいまうのでした、、。

 

 

 

 

中盤まではかりラブコメ色の強い作品だったのですが、レイ役を演じるレイ・リオッタが登場してからは急に不穏な空気が漂う作品に変貌します。 「グッドフェローズ」の時から感じていましたが、レイ・リオッタってどこかサイコな雰囲気があって、笑顔でいても目が笑っていない恐ろしさがこの作品でも見事に発揮されていて、次に何をするのか分からない恐怖を感じさせています。 あの顔本当に怖い、、。

 

 

 

 

後半では今まで受け身一方だったチャーリーが、オードリーを救うべく奮起する姿が描かれます。 ある意味オードリーによって自由を知ったチャーリーが男を見せる事になる訳ですが、はてさてどういった展開になるのやらと思っていたら、意外にも血を伴うバイオレンスがあったりして驚きましたが、なかなか粋なエンディングとなっていました。

 

 

 

 

映画で印象深いのはオードリーが様々な衣装に着替える事でしょうか? オープニングの黒髪で今時の感じから田舎娘風のワンピース、白のサマードレスとチャーリーのジャケットを羽織った姿、レイに合わせたGジャンからラストのカシニョールの絵に出て来そうなエレガントな装いと、彼女の立場や心の移ろいが服装を見るだけで分かるような衣装の演出が見事です。 それに伴ってチャーリーの服装も変化させ、二人の関係を見た目で表現する演出の憎い事ったら。 流石デミ監督です。

 

 

 

 

とにかく本作はメラニー・グリフィスの小悪魔的な魅力が存分に発揮されたファムファタール映画と言っても過言ではない作品であると同時に、彼女に振り回されるエリート社員チャーリーの受け身と受難の演技が見事に絡み合ったスパイシーなラブコメ映画となっております。

 

 

 

 

お店のレシートが物語を繋ぐアイテムになっているのが面白く、そこからのラストも洒落ていて見事な流れになっていて、レシートを持ってきた女性がそのままラストのエンドロールの曲を歌う姿が画面に映されたまま終わるという遊び心が溢れたエンディングは、斬新ながら最後まで楽しく映画を観る事が出来ました。

 

 

 

 

華やかな80年代の作品群の中ではちょっと影が薄い映画ではありますが、なかなか凝った演出と脚本のバイオレント・ラブコメ映画となっていますので、機会があれば一度ご覧になってみて下さいませ、です。 

 

 

では、また次回ですよ~! パー