東京・博多間を走る新幹線に仕掛けられた爆弾をめぐって、犯人と捜査当局の対決を描いたサスペンス映画

 

 

 

 

 

 

   -  新幹線大爆破  -  監督 佐藤 純彌  脚本 小野竜之助、佐藤 純彌

 

 出演 高倉健、宇津井健、千葉真一、山本圭、郷鍈治、竜雷太、丹波哲郎 他

 

こちらは1975年制作の 日本映画 日本 です。(152分)

 

 

 

 

  約1500人の乗客を乗せたひかり109号、博多行は9時48分に定刻どうり東京駅19番ホームを発車した。 列車が相模原付近にさしかかった頃、国鉄本社公安本部に109号に爆弾を仕掛けたという電話が入った。 特殊装置を施したこの爆弾はスピードが80キロ以下に減速されると自動的に爆発するというのだ。 さらに、この犯人は、このことを立証するために札幌近郊の貨物列車を爆破した。 

 

 

 

 

これらの完璧な爆破計画は、不況で倒産した精密機械工場の元経営者・沖田哲男、工員の大城浩、そして元過激派の闘士・古賀勝によるものであった。 そして沖田は500万ドルを国鉄本社に要求した。運転指令長の倉持は、運転士の青木に事件発生を連絡するとともに警察庁の須永刑事部長、公安本部長の宮下を招集、対策本部を設定した。 やがて国鉄側が沖田の要求に応じたために、大城が500万ドルを受け取りに向ったが、パトカーの執拗な追跡に事故死してしまう。 

 

 

 

 

仲間を失った沖田は単身、捜査本部と虚々実々の掛け引きを展開し、沖田は巧妙な手口を駆使してついに500万ドルを手に入れた。 しかし古賀は、貨物爆破の現場に残したタバコから身許が割れ、沖田を逃すために自爆した。 沖田は、捜査本部に爆弾除却方法を記した図面が喫茶店サンプラザのレジにあることを知らせ、変装、偽名を使って海外旅行団の一員として羽田に向った。 ところが、その喫茶店が火事になり、図面が焼失してしまう。 捜査本部はTVで必死に沖田に呼びかけるのだったが、、。

 

 

 

 

1970年代に公開されヒットした 「大空港」 「ポセイドン・アドベンチャー」 「大地震」 という作品によってパニック映画ブームが起きた流れに乗って、東映で製作されたジャパニーズ・パニック映画の代表作です。 アメリカのパニック映画の例に習うように、主演の高倉健を始め、名前こそ分かりませんが70年代に映画やテレビでお見かけした事がある渋めの俳優さん方が大挙出演している豪華さも見所の一つです。

 

 

 

 

時速80キロ以下になると爆発する爆弾を仕掛けられるというアイデアは、あの映画「スピード」の元ネタになったとも噂されている本作、諸々の事情によって(当時も毎週のように爆破予告があったようです)国鉄から協力を得られなかった作品ですが、新幹線車内や指令所等のセットの再現に力が入っている事が伝わって来ます。

 

 

 

 

映画は目的地へ向かって突き進む列車と、到着までの残り時間が減っていく緊迫感の中で、爆弾を仕掛けた犯人グループが現金を手にする為の計画を進めていくドラマと、それをくい止める為に犯人と交渉、列車に指示する鉄道会社と警察の捜査、そして爆弾が仕掛けられた新幹線の運転士と乗員、乗客の3つのドラマが交錯しながらストーリーが展開していきます。

 

 

 

 

ただ純粋に新幹線のパニック映画を期待して観ると、やや迫力と緊張感に欠ける仕上がりになっているのは事実です。 その大きな理由として、メインであるはずの新幹線内での描写が長尺の割に少なく感じるのです。 その代わりにメインとなっているのは高倉健演じる犯人の沖田と、その共犯の二人が犯行に至るまでのバックグラウンドのドラマに多くの時間が割かれています。 

 

 

 

 

中小企業の社長だった沖田の会社が倒産した事により高度経済成長の象徴とも言える新幹線の爆破計画に至るという筋書で、犯人にもそれなりの理由があるという観客に対してのアピールとも取れる人間ドラマに重点が置かれたような作りで、パニック映画と人間ドラマのバランスが絶妙なアンバランス感で釣り合っている作品です。

 

 

 

 

スリリングな新幹線での展開の合間々にガッツリとしたドラマを挟んでくるものですからその都度サスペンスにブレーキがかかる事になり、まるで止まっては進み、止まっては進みの鈍行の各駅停車に乗車しているような気分にさせられ、高速であるはずの新幹線のスピード感が逆に伝わり辛くなってしまっていたのが残念でありました。実際に爆弾を発見する手順や爆弾の解除方法等、一応の見応えはあるのですが、こちらも緊張感の演出に難があって今一つ盛り上がらないのもご愛嬌です。

 

 

 

 

反面、多くの俳優さん達が織りなす駆け引きの人間ドラマは見応えがあり、健さん以外で影の主役ともいえる宇津井健さんの実直な指令長の姿は印象深いものがありました そして警視庁といえば丹波哲郎。 この方が刑事部長で登場すると安定するから不思議です。 他にも志穂美悦子や多岐川裕美、岩城滉一、北大路欣也がワンシーンだけ登場していますが、本当に一瞬しか映らない為、自身の動体視力に賭けてみて下さいね。

 

 

 

 

映画のラストは悪くいえば日本映画らしい決着の仕方で、高度経済成長というものを皮肉ったようにもとれるものですが、高倉健らしからぬフランス映画を思わせるエンディングになっていて、それが私には印象的で素敵に感じました。 やはりペキンパーの「ゲッタウェイ」では納得出来なかったんでしょうね、、。

 

 

 

 

重要な場面で突然火事が起きたり、柔道部が偶然現われたり、すぐ拳銃を撃ったり、乗客の車両が一車両に感じたりと、ツッコミ所も満載ですが、個人的にツボだったのが健さんがバイクのメットを被ったまま公衆電話を掛ける場面、、。 相手の声が聞こえてるのかな~って心配しましたよ。(笑)そういうゆるい所もおおらかに観るのもこの映画を楽しむ秘訣なのでした。

 

 

 

 

大作映画ながら日本での興行は振るわなかったようですが、人間ドラマ部分を大きくカットした短縮バージョンが海外ではヒットしたという本作。 個人々、何を期待するかによって感想も変わる作品かも知れませんが、日本映画の中でも興味深い作品である事は間違いない映画だと思いますので、機会があればご覧になってみて下さいませ、です。 

 

では、また次回ですよ~! パー