ジョン・ファウルズの同名小説「コレクター」を映画化作品。孤独な男の女性に対する倒錯した愛情を描いたスリラー映画。

 

 

 

 

 

 

     -  THE COLLECTOR  - 監督 ウィリアム・ワイラー

 

 出演 テレンス・スタンプ、サマンサ・エッガー、モーリス・ダリモア 他

 

こちらは1965年制作の イギリス イギリス アメリカ アメリカ の合作映画です。(119分)

 

 

 

 

  ある日、フレディは蝶を採集している際、人里離れた場所で地下室のある屋敷を見つける。 内気な彼は職場の銀行で皆から馬鹿にされていたが、サッカーくじで大金を手に入れ、この屋敷を購入する。 以前から惹かれていた美術大学に通う女性ミランダをクロロホルムで昏倒させ拉致し、屋敷内の窓のない地下室にて監禁する。 

 

 

 

 

部屋には若い子が好みそうな衣服や美術作品集などが揃っていた。 通勤のバスで一緒になったのをきっかけに一方的に好意を抱くようになったフレディはミランダの身辺を調べあげ、大学の教授の娘ということも知っていた。 階級の違いから、本来ならば近づくことは出来ないと考え、こうした行為に及んだのだった。 ミランダが話し込んでいた年上の男性との関係もずっと気にかけていた。

 

 

 

 

誘拐した目的は身代金でも性行為でもなく、ミランダがいつか自分のことを愛してくれるようになるのを望んでいた。 そして、それを叶えるべく監禁した地下室で紳士的に接するが、ミランダの必死の要求に、仕方なく監禁の期限を設け、一緒に居ることを同意させる。 その間、ミランダには欲しがるものを何でも買い与えた。 ミランダは監禁生活に甘んじているものの絶えず逃げる機会を伺っていた。 

 

 

 

 

ある時、盲腸を装い逃亡を図るがフレディに見破られ失敗する。手を縛られ庭に出た際や、とある晩に予期せぬ来客があった際など、助けを呼ぶチャンスがあったがことごとく失敗に終わった。 解放を約束した期限の晩、フレディはミランダに婚約指輪を渡し結婚を申し込む。 ミランダは受諾して誘惑し、その隙に逃亡しようと計画するのだが、、。

 

 

 

 

たまたま見かけた女性を一方的に愛し、誘拐監禁して同じ時間を過ごす事で自分を愛してもらえるようになると考えた男の異常な愛情物語です。 これも初見は〇曜洋画劇場だった気がします。 あの「ローマの休日」や「ベン・ハー」こちらでは「噂の二人」「おしゃれ泥棒」といった名作を撮ったウィリアム・ワイラー監督の作品というのも驚きなサイコ

スリラー映画です。

 

 

 

 

蝶を捕まえては標本にするのが趣味というフレディ。 職場では陰気な性格からか馬鹿にされていましたが、思わぬ大金を得た事で彼の欲望が爆発。 常々計画していたリアルな女性を捕獲して監禁するという暴挙に出る事になります。 ただそこからが彼の闇深さがよく表れていて、監禁部屋には女性が使うであろうブラシやストッキングといった日常の生活用品や着替えの洋服、女性向けのインテリア等がびっしりと揃えられているのです。 

 

 

 

 

それらの品物を揃えた事も不気味ですが、誘拐したミランダをゲストとして扱い、常にスーツを着て紳士的に振る舞おうとする姿も逆に恐怖を感じます。 しかしミランダも負けじと女性慣れしていないフレディに調子を合わせ、上手く取り込む事に成功しかけますがフレディは彼女が嘘をついている事を見破ります。 

 

 

 

 

この見破る瞬間の真顔が恐ろしいったら、、。 さっきまで笑っていたからの真顔。 怖すぎです。 これを演じるテレンス・スタンプのイケメンながらの絶妙なサイコ感が不気味で、ふと我に返った時にみせる立ち方や姿勢、表情や喋り方の切り替えがキャラを際立たせています。

 

 

 

 

時間をかけ互いに理解し合えたと思えた瞬間も訪れますが、結局はフレディ自身が持つ

コンプレックスと妄想による理想によって溝は埋まる事なく終わります。

 

 

 

 

悲劇的で感傷的なラストを迎えたと思ったのもつかの間、これぞサイコな思考と言うにふさわしい、今まで以上に恐ろしい胸糞エンディングが待ち構えておりました! このエンディングの余韻は、同じイギリス人俳優のアンソニー・ホプキンスのあのサイコ映画にリンクしているようにも感じてしまうのでした。

 

 

 

 

結局は自分の頭の中だけに存在する理想をコンプリートしたかっただけで、愛というものを理解していなかったフレディ。 自分の価値観に反するピカソやサリンジャーに嫌悪感を抱くその根底には、誰も寄せ付けない自分自身に向けられた強い差別意識と幼児性が覗き見えました。

 

 

 

 

ほぼ二人の主人公だけで語られる物語ですが、常に不気味な緊張感が支配していて、飽きる事なく観れるスリラー映画です。 その為か、このような内容にも関わらずアカデミー賞やカンヌ映画祭等で多数のノミネートと受賞をうけた作品でもありますので、機会があれば一度ご覧になってみて下さいませ、です。

 

では、また次回ですよ~! パー

 

 

 

 

 
 

 

 

映画の内容とは裏腹な美しいエンディングが作品を強烈に印象づけます。 音譜