呪われた赤いドレスを巡る恐怖を独創的な世界観で描いたイギリス製ホラー

 

 

 

 

 

 

        -  IN FABRIC  - 監督 脚本 ピーター・ストリックランド

 

  出演 マリアンヌ・ジャン=バプティスト、シセ・バベット・クヌッセン、

                                                                                   ジュリアン・バラット

 

こちらは2019年制作の イギリス映画 イギリス です。(118分)

 

 

 

 

  シーラは銀行で働くシングルマザー。 ストレスの溜る職場から自宅へ帰れば大学生の息子は空気の読めないガールフレンドとイチャイチャ。 別れた夫には早くも新たな恋人が出来たという噂が耳に入ります。 そんな退屈な生活を変えようと、新たな恋を探して新聞の出会い系広告に目を通す日々のシーラ。  そんなある日、出会い系広告で知りあった男性とのデートに備えてセール中のブティックに向かいます。

 

 

 

 

店内を物色していたシーラは、腰のあたりに黒い花柄のワンポイントが入った真っ赤なドレスに目を留めます。 その魅力的なドレスは不思議と彼女の身体になじみ、シーラには自分の人生を変えてくれる幸運の贈り物のように思えました。 怪しげな女性店員にも勧められシーラはそのドレスを購入しデートに出かけるシーラでしたが、その日から不可解な出来事が次々と起こり始め、ついには、、、

 

 

 

 

結婚を控えたレッグは友人達が開いた婚前パーティーに招かれます。 お酒もすすみ、パーティーも最高潮に達した時、友人が古着屋から購入してきた赤いドレスを着るように強要され嫌々ドレスを着るレッグ。 それを見た友人達は大盛り上がりしました。

 

 

 

 

泥酔したレッグはドレスを持ち恋人のバブスの待つ自宅へと帰ります。 家電修理の仕事を真面目にこなすレッグ、彼女との結婚生活への準備が着々と進みますが、あの赤いドレスが家に来てから少しずつ二人の生活に奇妙な変化が起こり始めるのでした、というお話です。

 

 

 

 

DVDのジャケットにあった A24 の文字に惹かれてレンタルしてしまった本作でしたが、ホラー映画というよりは、とってもとっても奇妙な世界観と美意識で彩られたエロティックでアート志向な変態好き映画でございましたよ。

 

 

 

 

前半は中年女性が新たなパートナーを見つける為にドレスを購入して不幸に見舞われる話。 後半は気弱で真面目な男が友人に無理矢理着せられたドレスによって婚約者の彼女共々不幸になる話。 どちらも同じドレスによって災難に見舞われる事になりますがそれぞれは独立したお話になっています。

 

 

 

 

この不気味な深紅のドレスが物語のアイコンとなっていますが、これ自体が人を殺す殺人ドレスという訳ではなく、それを身に着けた人達がこの不思議な魔力を持つドレスによって不可思議な死を迎える事になるというストーリーです。 この二つの物語を通じて登場するのが、赤いドレスとその謎を知るブティックです。

 

 

 

 

本作の最も異様な所はこのドレスを販売している不気味なブティックの存在で、デザイナーらしき店長の男と、ゴシックロリのような衣装を着た女性店員が、何やらオカルトチックで淫らな儀式を夜な夜な行っているのです。

 

 

 

 

本作ではこのドレスを始め、ブティックの存在、店員達等のバックグラウンド等、一切説明がされず、彼女達の儀式や行動、テレビから不気味に流れるブティックのCMや唐突に挟み込まれるファッション雑誌のような映像が一応のヒントらしい匂わせはありますが、あくまでも観客に向けてのサービスのような代物で、映像から滲み出る不気味さや異様さ、背徳感、それらから溢れる映像の恐ろしさと美しさを頭の中でグルグルとかき混ぜながら再構築しながら楽しむのが一番面白く観る方法なのかも知れません。

 

 

 

 

一応、日常のストレスを解消する為に非現実を購入する消費社会の歪みを、ドレスというアイコンを使ってカリカチュアした日常で描いた、というもっともらしく、意味不明なこじつけの解釈もできますが、意味や理由を考えずにオカルトチックなファンタジーとして観る事をお薦めします。

 

 

 

 

少し残念な所はメインのブティックをもっと美しくデコレートしたら良かったのに、(異様でもなく、普通のデパートに見えて残念でした) そして何か一つ飛びぬけた部分があればよりクセの強いカルト映画になった気がしました。 クセ好きな私の願望ですが、、。という事で、ホラー加減は少なめですが、個性的な悪夢感と万人受けしないテイストが独特な魅力の映画ですので、機会があれば一度ご覧になってみて下さいませ、です。

 

では、また次回ですよ~! パー