山本周五郎の原作小説 「雨あがる」 を黒澤明作品等の小国英雄が脚色した時代劇

 

 

 

 

 

 

      -  道場破り  -  監督  内川清一郎 原作 山本周五郎   脚本 小国英雄

 

 出演 長門勇、丹波哲郎、岩下志麻、倍賞千恵子、宮口精二、殿山泰司 他

 

こちらは1964年制作の 日本映画 日本 です。(91分)

 

 

 

 

  剣をとっては達人と呼ばれる三沢伊兵衛は、恋人である家老の娘妙をつれて脱藩します。 古谷藩のバカ殿の側室になるよう強要された事が発端でした。 妙との旅は、すぐ追手につけられる破目になる二人。 懐の淋しい逃避行では、すぐにも宿賃をかせがなければならなくなった伊兵衛は、神道無双流秘法極意階伝の腕前を利用して、武士の掟を犯して町道場で賭試合を挑みます。 太刀落しという奇妙な手で勝った伊兵衛のもとに、迫手は刺客として浪人大庭軍十郎をむけていました。 

 

 

 

 

一方隣藩ににげるため十両を必要とした伊兵衛は武道大会に出場する事となり、偶然にも軍十郎と勝負し相討ちとなります。ある日、伊兵衛は侍同士の争いに遭遇し、得意の剣術で仲裁をします。これを見ていた小室帯刀は、かつて娘千草を川越人足から助けてくれた礼をも兼て伊兵衛に仕官を進めます。 念願の仕官成就にとりたてられたと喜ぶ、伊兵衛、妙の前に、意外にも賭試合をして剣を汚した事が小室の耳に入った事で、小室藩から仕官の誘いを断わられてしまいます。 

 

 

 

 

傷心の伊兵衛でしが帯刀と千草の温い心に送られて関所を越えます。しかし、その前に又も迫手と軍十郎が立ちはだかります。 大立回りが演じられた最中、刺客団を裏切った軍十郎の助けで伊兵衛、妙の二人は、無事隣藩に逃げのびます。かつて、伊兵衛と同じ境遇にあった軍十郎に送られて、今度こそ立派に仕官出来るはずと、胸を高鳴らせて山を越えていくのでした、、。 というお話です。

 

 

 

 

以前ご紹介した山本周五郎原作の映画 「雨あがる」 同じ原作を映画化した作品があるというので、今回お取り寄せレンタルしました。  内容としてはこちらの方が原作のプロットを残しながらも、かなり剣劇的なエンターテインメントの要素が盛り込まれたオリジナリティ溢れる内容にアレンジされていました。

 

 

 

 

主人公が夫婦ではなく恋人同士に変更され、側室にしたい殿様の追手から追われているという身の上。 そしてそもそものタイトルになっている雨の場面は登場せず、川の増水によって川を渡れなくなるという設定から、関所を抜ける為にお金を稼がなければならない為というものに改変された事で、逆に賭試合するという必然性が増していて、本作の方がチャンバラの殺陣が楽しめる活劇的な要素が増し増し作品になっています。

 

 

 

 

映像的にもこれが意外にもちゃんとした作品で、セットから衣装から黒澤映画に見劣りしない程度にちゃんとしていて驚きました。 まだ時代劇というものが現役だった為なのか、土台となる基礎がしっかりとした映像となって観れる作品に仕上がっています

 

 

 

 

ただ、剣術の場面がちょっとエンターテインメントし過ぎている所があって、空中を飛んだり、回転したりと、テレビの忍者のようなアクションが所々見受けられ、ちょっと微妙ではありましたが、それも楽しければ良しとしましょうです。

 

 

 

 

主人公の剣術の達人伊兵衛を演じるのが長門勇。 「横溝正史シリーズ」の人懐っこい日和警部のファンの私としてはどんな演技を見せてくれるのか?と興味深々でありましたが、まぁ概ね日和警部そのままのキャラクター。 しかし、ここぞという時には見事な殺陣を披露されてはいるものの、達人らしい凛とした雰囲気が漂わないのは少々残念でありました。 そこが長門勇さんの良い所、コミカルな演技は流石であります。

 

 

 

 

その恋人が若さ爆発!美しさ爆発!の岩下志麻という驚愕のアンバランスさなのもちょっと無理な違和感を感じてしまいました。 美女と野獣でございまする。謎の刺客役で、映画 「切腹」 でも凄みのある存在感を見せていた丹波哲郎が、本作でも見事な殺陣と演技を披露されていてその存在自体が映画のアクセントになっています

 

 

 

 

他にも帯刀の娘役でキラッキラの倍賞千恵子がこれまた美しいお姿を見せてくれていたり、宮口精二、殿山泰司、浜村純、左卜全 等、名優陣が顔を揃えています。単体の時代劇映画としても十分面白い作品ですが、後年の「雨あがる」と見比べて、ここが変わってるとか、ここは一緒だ、とか見比べてみるのも楽しめる映画だと思いますので、機会があれば一度ご覧になってみて下さいませ、です。

 

今作は予告が見当たりませんでした、あしからず、、。

 

では、また次回ですよ~! パー