ウディ・アレン監督によるSFコメディ映画。 1973年に冷凍冬眠され、全体主義が蔓延る200年後の世界で目覚めた男の冒険を描く

 

 

 

 

 

   

                    -  SLEEPER  -  監督 脚本 ウディ・アレン

 

出演 ウディ・アレン、ダイアン・キートン、ジョン・ベック、マリア・スモール他

 

こちらは1973年制作の アメリカ映画 アメリカ です。(88分)

 

 

 

 

  ある校外に建つ未来社会の研究所。 森の中に埋められたカプセルの中で眠ったまま発見された奇妙な人間がいました。 200年前に冷凍化された男で名前をマイルズ・モンローといい、凍結されたときには35歳。 ニューヨークで健康食品店を経営する傍らクラリネット吹きもやっていたという変わり種。 胃潰瘍で入院したとき併発症を起こし意識が回復しないため、カプセル凍結にされたのでした。 

 

 

 

 

それから200年後、医師たちの介抱で彼は意識をとり戻しますが、自分の状況を聞かされたマイルズはパニック状態。 その上、彼を発見したのは独裁政権に抵抗する革命組織の学者たちでしたが、活動を怪しまれ警察が乗り込んで来ます。 訳が分からないマイルズはどさくさに紛れて森へと逃げ込み、駐車中のバンにもぐり込みます。 その中には家事用ロボットが並んでいたので、マイルズロボットのふりをして紛れ込みます。

 

 

 

 

幸い警官に気づかれなかったものの、ルナという女の家へロボットとして連れて行かれてしまいます。 彼女の注文はさっぱり分らず、その上、ルナは彼の顔が気に入らないと、家事サービス局に頭のすげ替えを頼むという仕末。 

 

 

 

 

スクラップにされそうになった所をなんとか逃げ出して、ルナに自分の正体を打ち明けますが、ショックが大きかったのか彼女はギャーギャー騒ぎたてるばかり。 仕方なくマイルズはルナを乗せたまま彼女の車を走らせ、追ってくる警察からどうにか逃げのびる事に成功します。

 

 

 

 

ルナを連れしばらく森に潜んでいたマイルズでしたが、遂に発見されてしまい、彼一人だけ警察に捕まってしまいます。 その後、マイルズは政府の研究所で洗脳され、未来社会の人間に生まれ変わります。 以前の記憶は塗り替えられ、現代の生活へそれなりに順応していました。  

 

 

 

 

一方、森に残されたルナはアーノという革命家に捕まってその思想にすっかり同化させられてしまいます。 彼らは、この国を支配している独裁政権を打倒しようとしていましたそれに利用する為にマイルズを誘惑し、彼はまたもや元の記憶がある自分に戻されてしまいます。 

 

 

 

 

独裁者の反体制分子一掃のための“エレイス計画”実行の日、ルナとマイルズはアーノの指示のもと医者に化けて政府の建物にもぐり込み、この計画をつぶすことに見事成功するのでしたが、、、というお話です。

 

 

 

 

私が中学生くらいだったか?〇曜洋画劇場で初めてウディ作品を観た記念すべき作品で、彼といえばこれ!という位に印象深い作品で、観た当時はとっても面白かった記憶があって、それ以来のもう何十年ぶりかの再会となった次第です。  以前こちらで紹介した 「誰でも知りたがっているくせに、、、」 の次に作られたのがウディ・アレンには珍しいSF設定のとことんお馬鹿なコメディ作品の本作。

 

 

 

 

チャップリンを思わせるスラプスティックなドタバタから、セッ〇スマシーンが登場する下ネタ、オーブというドラッグを連想させるヤバめのもの等、とにかくなんでも有りなコメディ映画でありますが、その中にもチョコチョコと彼らしい社会に対する皮肉が散りばめらた内容で、なんだかんだで紛れもないウディ・アレン映画に仕上がっております。

 

 

 

 

目覚めたマイルズを被っていたのがおもいっきりアルミホイルだったりという粗さから始まり、これぞ70年代的なSF映画の白を基調としたセットや乗り物、家事ロボットといったデザインのチープさが星新一の小説を思わせて、とっても夢があって素敵なヴィジュアルがてんこ盛りに登場して目を楽しませてくれます。

 

 

 

 

独裁政権というある意味デストピアな未来もちょっと楽しそうに見えてしまうから不思議クリーンなインテリアにパントマイム感丸出しの家事ロボットや、水上を走るゴムスーツ、無駄に流線形の車。 逃走用に使ったポータブルプロペラ機の具合が悪いと、「安い日本製だな?」と呟いたりする場面に当時の日本への認識を感じたりする所もあって、良い意味での時代の臭いがプンプンと漂っています。

 

 

 

 

若くてみずみずしいダイアン・キートンと、当時から淋し気な長髪のウディのコントラストが愉快で、劇中ではダイアン・キートンに「欲望という名の電車」のマーロン・ブランドのモノマネをさせていたりする場面もあってパロディも楽しんでおります。そのくせ過去の人間と未来の人間のカルチャーギャップによる笑いが少なかったのが意外で、かなりベタでお馬鹿な笑いの方に舵取りしている作品でもあります。

 

 

 

 

本作でもオープニングから徹底したジャズ音楽へのこだわり、早口で回りくどいお喋り理屈っぽく頼りなげなインテリ風男と、もうある種のウディ・アレン世界が確立されている作品で、正に公私混同型作家ウディ・アレンが彼女と楽しく作ったSFコメディ映画となっておりますので、とことんお馬鹿な作品をご覧になりたい方、お馬鹿過ぎて笑えない危険も含みつつ、チープで愉快なヴィジュアルは観る価値十分だと思いますので、この機会にでもチャレンジしてみてはいかがでしょうか、です。

 

では、また次回ですよ~! パー