市川崑、黒澤明、木下惠介、小林正樹の4人によって映画企画・製作グループ「四騎の会」が結成され、山本周五郎の「町奉行日記」を元に映画を製作しようと共同してシナリオを執筆。その後、企画は宙に浮いたままになっていたが、市川の監督でオリジナル脚本を大幅に変更して製作された本作。

 

 

 

 

 

 

 -  どら平太 -   監督 市川崑  脚本 市川崑、黒澤明、木下惠介、小林正樹

 

 出演 役所広司、浅野ゆう子、宇崎竜童、片岡鶴太郎、菅原文太、石橋蓮司 他

 

こちらは2000年制作の 日本映画 日本 です。(111分)

 

 

 

 

  或る小藩の国許では、財政難を補うために「壕外」と呼ばれる治外法権の町から莫大な上納金を集めていました。 その上納金は藩の重職たちの懐に入り、壕外を束ねる3人の親分は無法を黙認され、その無法を暴こうとした町奉行は次々に辞職に追い込まれていました。 

 

 

 

 

そんな中、江戸屋敷から新たな町奉行として望月小平太が赴任してくる事になります。 ところが、その男には振る舞いの悪さから_道楽者、どら猫という含みの「どら平太」 というあだ名がついていました。 実際、着任する筈の期日を10日も過ぎても、彼は奉行所に出仕しない始末でした。

 

 

 

 

しかし、それは小平太本人が友人で大目付の仙波に頼んで、わざと流させた悪評だったのです。 実は、彼は殿さまからの直々の命令を受け、密輸、売春、賭博、殺傷などが横行する「壕外」と呼ばれる治外法権と化した地域の浄化にやってきたのでした。 

 

 

 

 

早速、遊び人になりすまし壕外に潜入した小平太は、壕外の利権を分け合っている3人の親分の存在を知ります。 密輸業を仕切る大河岸の灘八、売春業を仕切る巴の太十、賭博を仕切る継町の才兵衛。 そんな彼らに、腕っぷしの強さと豪快な遊び方を見せつけ圧倒します。 

 

 

 

 

小平太の策略は功を奏し、遂に彼は誰もがなし得なかった3人の親分を観念させることに成功します。 しかし、彼が奉行として彼らに下した罪状は、死罪ではなく永代当地追放でした。 実は、小平太の本当の目的は、彼らと結託して私腹を肥やしていた城代家老・今村掃部を初めとする藩の重職たちの不正を正すことにあったのです。 ​​​​​

 

 

 

 

互いに腹を割った灘八たちに藩と結託していた証拠を出すことを命じ、それをもって重職たちを退陣に追い込む小平太。 しかし、藩の重職たちと3人の親分の間を繋ぐ役割で、私腹を肥やしているもうひとりの人物がいたのでした、、、というお話です。

 

 

 

 

長らく映画化されなかった「四騎の会」による共同脚本が30年の時を経て、その一人だった市川崑監督の改訂によってやっと映画化された本作はベルリン国際映画祭で特別功労賞を受賞しています。  原作は山本周五郎の「町奉行日記」で、このチョイスからして黒澤明監督の意向が強く感じられる作品でもあります。

 

 

 

 

しかし、映画が始まった途端、明朝体のフォントが画面を覆ってそこは紛れもない市川崑監督の世界となります。 映像も陰影を強調した奥行きのある画面。 金の襖をバックにした映像は金田一耕助を連想させる市川作品のそのものです。

 

 

 

 

お殿様の命を受け、町の浄化と藩の汚職掃除にやって来る武士の小平太。 剣の腕は見事な上、頭も切れるという人物ながらひょうひようとして人間臭い人物で、観ていて気持ちが良いったらありません。 上の者には強く、下の者には優しいという人格者。この小平太の隠密作戦がサスペンスとユーモアを交えて展開していく様がにワクワクしてしまいます。 

 

 

 

 

これを役所広司が人間味たっぷりに演じていてとっても魅力的で、彼を追って江戸からやって来た芸者のこせいとの関係も愉快です。 これを演じる浅野ゆう子のチャキチャキ感もまた良い味付けになっています。 助演の片岡鶴太郎と宇崎竜童も好演されています。 壕外の3悪党を演じるのが石橋蓮司と石倉三郎、この小悪党ぶりも楽しく、その元締め役の菅原文太が悪ながら見事な存在感を見せつけます。

 

 

 

 

ある意味悪の根幹である藩の重職を大滝秀治、加藤武、神山繁、三谷昇というある種マニアにはたまらない方々が可愛らしく?演じていて、小平太とのやりあいに悪ながら愉快に感じてしまうのでした。

 

 

 

 

そんな策略家の小平太ですが、後半では50人を相手にした殺陣場面があったりと、ちゃんと時代劇的なアクションの見せ場も堪能出来る作品です。 ただこの場面等、人を斬るシーンに血は一切登場しません。 金田一作品では大量サービスの血しぶきでしたが、あえて血を見せない事でこの小平太のお話が後味良く、豪放磊落で愉快爽快な映画になったのではないでしょうか? これも市川監督のナイスセンスですね!

 

 

 

 

結局、一日も奉行所に出勤する事なく去っていく小平太の日誌をつける役人の姿も絶妙なアクセントになっております。 江戸の遠山の金さんにも通じる見事な裁きと策略、そして人間味が、映画を観終わった後に爽快感と痛快さが強く残る作品にしています。

エンドクレジットまでカッコ良い素敵な痛快時代劇となっていますので、機会があればご覧になってみて下さいませ、です。

 

では、また次回ですよ~! パー