1968年に東京都府中市で起きた三億円事件の時効が成立する直前に企画・製作された、いわゆる“キワモノ”作品。清水一行の著作『時効成立』を原作としているが、映画独自の解釈で犯人像を設定、実際に起きた事件に基づきながらも大胆な推理で物語は展開していく。

 

 

 

 

 

 

             - 実録三億円事件 時効成立  - 監督 石井輝男   原作 清水一行

 

 出演 小川真由美、岡田裕介、金子信雄、絵沢萠子、田中邦衛 他

 

こちらは1975年制作の 日本映画 日本 です。(86分)

 

 

 

 

  博奕好きで、女にだらしない西原房夫は会社の金四百万円を横領し、競馬につぎ込んでしまった。 横領が会社にバレて警察に突き出されるところを、情婦の向田孝子がが肩代わりしてくれたので、刑務所行きはまぬがれる。 その後、二人は同棲生活を送るが、借金に追われる苦しい状態が続いた。 昭和43年7月、多摩農協に再三の脅迫状が舞い込んでいた。送り主は西原、この脅迫状は警察をあざむくためのカモフラージュで、彼は42年12月から三億円強奪の準備を始めていた。 

 

 

 

 

そんなある日、西原の態度に不審を覚えた孝子は、彼から日本信託銀行国分寺支店から東芝工場に輸送される三億円の強奪計画を聞かされた。 月賦屋に追われる生活に嫌気がさしていた孝子は、西原と行動を共にする決心をする。 西原は準備資金のために、金持ちの未亡人・久住みどりを誘惑し、百万円を騙し取った。 8月12日、西原はトランジスターメガホンを盗んで以来、白バイ警官衣装等の獲得準備をすすめ、改造用のバイク、逃走用カローラ等を、次々に盗み、12月9日、全ての準備を完了する。 12月10日。午前6時に、西原と孝子は日野の自宅を出発。 9時21分、遂に計画が実行される。 

 

 

                                                    実際の写真

 

 

府中刑務所裏にさしかかった現金輸送車のセドリックを停止させた西原は、車内に爆弾が仕掛けられていると偽って乗車員を降ろし、自身がセドリックに乗り込み逃走そして、国分寺・七重の塔跡で待つ、第2のカローラにジュラルミンのトランクを移し孝子の運転で山梨県大月市にある西原家の墓地へと向った。 途中、ラジオで五百円札には通しナンバーがひかえてある、との報道で、五百円札は全て処分、残金を墓の下に隠した。その後、西原と孝子は金には手をつけず、以前と全く変りない生活を送っていった。 一方、警察の捜査網は拡大していくばかりだったが、葛木刑事は、その経験とカンで不良退職者のリストを地道に洗っていた、、。 というお話です。

 

 

 

 

以前ご紹介した「初恋」同様、実際の三億円事件を題材にした作品です。 未だに謎の多い昭和の未解決事件の代表と言えるこの事件は私にとって今なお魅力的なのでした 三億円事件から7年後、時効を迎えようとしていた事で再び世論がこの事件に注目、再燃した流れに便乗する形で製作された本作。今回は実際の現場写真が混ざっています

 

 

 

 

時効間近とはいえ時効成立前提で製作に入るというかなりギャンブル性の強い作品で、こういうスレスレの映画をキワモノ作品と呼ぶようです。 本作は実際の捜査線上に上がった実在の容疑者数名をモデルにして創造した人物を主人公に据えて、女にだらしない競馬狂のやさ男と、それを後ろで支える事になる年上の情婦という独自の犯人像が描かれています。 

 

 

実際の写真

 

 

時効間近という事もあって、事件におけるディテールはかなり実際の事件を抑えたもので、車や様々な道具等を盗んだ日時が字幕によって克明に表示され、実録モノ好きにはワクワクします。 その上、オープニングでは本事件の捜査で中心的な人物、平塚八兵衛と武藤三男の両本人のインタビュー映像から始まるという、虚と実が混在したドキュメンタリーを思わせるものでかなりのインパクトがあります。 音楽もなかなかです。

 

 

 

 

しかし、事件自体は大まかなもので、かなり端折った扱いになっていたのが残念です。犯行までの準備や過程、実行の様子等は見せ場のようにも思えますが、かなりあっさりと処理されています。 その分、実行犯の西原房夫と情婦の孝子の貧しい生活や、事件後の身を潜めるような暮らし、容疑者となって尋問される姿等、特殊な状況での二人の関係が濃密に描かれています。 ご飯に味噌汁をかけて食べる場面は正に昭和そのものです。 

 

 

 

 

この二人の生活と交錯して刑事の捜査が描かれるのですが、その刑事を演じるのが金子信雄。 これまたTHE昭和の刑事そのままでパンと牛乳を持っての張り込みや、歩き回っての聞き込み等が時代を感じます。 いつもとは逆の役柄ながら、このねちっこい刑事役がなかなかはまっていました。 顔の演技のクセは強かったですが、、。本作ではどうしても主人公があんな綿密な計画を立てられるよな人物には見えないという所もありますが、それを支える孝子を演じる小川真由美の存在感と、それを追う金子信雄の粘着感が、ただのキワモノ映画ではない作品に仕上げています。

 

 

実際の写真

 

 

本作を観て、また単独犯か複数犯か?少年Sや少年Z、ゲイボーイやハワイ等々と、妄想や謎がどんどんと膨らんで眠れなくなる私なのでした。 未解決事件や昭和臭がお好きな方なら楽しめる要素が沢山ある映画だと思いますので、機会があれば一度ご覧になってみて下さいませ、です。

 

では、また次回ですよ~! パー