学生運動が活発だった1960年代後半。 高校生のみすずはひとり孤独の中にいた。学校でも友達をつくらず、家にも彼女の居場所はなかった。 みすずは小さい頃、兄だけを連れて家を出た母親に捨てられ、叔母家族に引き取られ育てられたのだった。そんなある日みすずは、突然訪ねてきた兄が残していったマッチを頼りに、新宿のジャス喫茶Bへと向かった。彼女はそこで、兄や彼の仲間たちと出会う。 その中にはちょっと謎めいた雰囲気の東大生、岸もいた。彼らの仲間に加えてもらい、初めて自分の居場所を実感するみすず。 彼らと過ごす時間が増えていくにつれ、次第に岸に対して特別な感情を抱き始めるみすずだったが、、。

 

 

 

 

 

 

こちらは2006年制作の 日本映画 日本 です。(114分)

 

東京都府中市で1968年12月10日に発生した、現金輸送車に積まれた東京芝浦

 

電気(現・東芝)従業員のボーナス約3億円(2億9430万7500円)が偽の白

 

バイ警察官に奪われた窃盗事件で、1975年(昭和50年)12月10日に公訴時

 

効が成立し未解決事件。 この事件を基に、中原みすずが執筆した同名小説を原作と

 

した作品です。

 

 

 

 

  もし、三億円事件の実行犯である白バイ警官が女子高生だったら、、 というお話

 

ですが、小説は筆者の自伝小説の体にもなっている不思議な作品。 個人的に未だに

 

魅力的な題材で、ついついレンタルしてしまったのでした。 

 

 

 

 

兄を連れて去った母に捨てられたみすずは、叔母の家に居候させてもらっています。

 

家の中に居場所は無く、遅い時間になるまで家の外で時間を潰すみすず。 そんな彼女

 

の所へ兄 リョウが現われ、マッチを渡されます。 みすずはマッチに書かれた新宿のジ

 

ャズ喫茶B へと兄を訊ねます。 店の外に居た所をユカという女性に誘われ店内へ、そ

 

こには兄を含め6人の若者がグループを作っていました。 

 

 

 

 

みすずはリョウと兄妹だという事を告げる事なく、度々店を訪れるようになります。 

 

ある日、補導されそうになったみすずはグループで浮いた存在の 岸に助けられ、他

 

とは違う彼を気にかけるようになります。 

 

 

 

 

世間では学生運動が盛んになり、グループの面々も時代に飲み込まれていきます。そ

 

んな中、残された岸は、みすずにある計画を打ち明けるのでした、、。

 

 

 

 

といったお話で、三億円事件が生まれた背景である 「時代」 が物語に大きく関わって

 

います。 若い世代が、まだ権力に反抗していた時代。それを象徴するように発生し

 

た事件が三億円事件だった、というものです。  パトカー  札束

 

 

 

 

タイトルからして事件を詳細に追ったものでない事は理解していたものの、かなり事

 

件の実行がサラリと描かれていたのが少々残念ではありました。 

 

 

 

 

ただ主人公はあくまでみすずであり、彼女の孤立感と、それを共有してくれる 岸 とい

 

う存在の不思議な関係はそれなりに魅力的でした。  ただ物語の発想はとても面白かっ

 

たのですが、個人的に物足りなさが多く残りました。 

 

 

 

 

第二の主人公でもある 時代感 がかなり希薄に感じてしまったのが大きく、映像はそれ

 

なりに時代の臭いを漂わせているものの、演者にリアリティが全く感じられませんで

 

した。 衣装を着せられた俳優が演技する、それ風の演劇を見せられているような感

 

覚。 いかにも現代人的な空気感が拭えませんでした。 

 

 

 

 

特に小嶺麗奈が演じるユカという女性は、リーダー的存在でもありますが、全く凄み

 

と魅力が感じられませんでした(現実の方が怖そうなのに) 柄本佑 の中途半端な関西

 

弁もノイズでしかありませんでした。 

 

 

 

 

トータル、皆その時代に生きている存在感が嘘っぽく、セリフまでもが喋り言葉では

 

なく文章的なもので、映画に集中させてもらえませんでした。昭和時代の俳優さん達

 

の凄みとパワーを、改めて感じてしまった私でありました。

 

 

 

 

みすずと兄の関係も、原作を考慮したのものでしょうが、劇中でその効果が発揮され

 

ず、なんとも中途半端なものになっています。 このように全ての要素がギクシャ

 

クしてしまい、, 作品全体が非常に中途半端になってしまったように感じました。 

 

 

 

 

主人公を演じる 宮﨑あおいは、みすずという女性ならではの憂いを感じさせる演技で

 

好感がもてましたし、良い意味で浮世離れして浮いた存在感がキャラクターと合って

 

いたように思えます。 

 

 

 

 

グループの一人で 青木崇高も出演されておりますが、偶然でしょうが私が観た作品の

 

中の彼って、どれも同じようなキャラを演じている印象が、、、ま、良いんですけれ

 

どね、はい。

 

 

 

 

若い世代が激動の時代。 孤独な女子高生の淡い秘密の初恋と傷 が描かれています。

 

時効と永遠の一瞬。「心の傷に時効はないのだから」 という、みすずの言葉が表すよ

 

うに あの事件の裏にあった二人の刹那と永遠の物語です。 反面、三億円事件という

 

劇場型犯罪が、未だに映画を凌駕してしまう魅力を放っているのもまた事実なのでし

 

た、って個人的な意見ですが、、。

 

 

 

 

何か文句ばかり言ってしまった感がありますが、宮﨑あおいや、小出恵介が好きな方

 

には見応えのある良作品だと思いますので、事件同様 興味がありましたらご覧になっ

 

てみて下さいませ、です。  目

 

では、また次回ですよ~!  パー