17歳の高校生ルース・エドガーの知られざる内面に迫り、人間の謎めいた本質とアメリカの現実に鋭く切り込んだサスペンスフルなヒューマンドラマ
- LUCE - 監督 ジュリアス・オナー 原作 J・C・リー
出演 ケルヴィン・ハリソン・Jr、オクタヴィア・スペンサー、
ナオミ・ワッツ、ティム・ロス
こちらは2019年制作の アメリカ映画 です。(108分)
バージニア州アーリントンで白人の養父母と暮らす黒人の少年ルース。 アフリカの戦火の国で生まれた過酷なハンデを克服した彼は、文武両道に秀で、様々なルーツを持つ生徒たちの誰からも慕われていました。模範的な若者として称賛されるルースでしたが、ある課題のレポートをきっかけに、同じアフリカ系の女性教師ウィルソンと対立するようになります。 ルースが危険な思想に染まっているのではというウィルソンの疑惑は、ルースの養父母にも疑念を生じさせていく、、、 というお話です。
予告にある豪華な出演陣とサスペンス的な怖さを期待してレンタルしてみた本作ですがいざ観てみると、予想していた内容を遥かに超えたヘビーなものでした。 黒人の養子ながら白人夫婦の献身的な愛もとで理想以上の息子に育ったルース。しかし彼が授業で提出したリポートが黒人女性教師にある疑念を生む事になります。 それは両親へと伝わり、疑念が次の疑念へと波及していきます。 その事によって、両親すらも理想的と思われていたルースの行動全てに疑いを持つようになり、これまでクリアーに見えていたはずの様々な事全てに疑念を抱くようになっていく様が描かれています。
それまで理解していると思っていたた息子の姿は本当だったのか? 人間の二面性や別の顔、こういう人物だと良くも悪くも勝手に決めつけている偏見やレッテル、勝ち組や負け組、ルースという一人の青年に向けられた疑念が、遂には人種や国という隔たりについてまでをも考えさせられる作品になっています。 その反面、両親や周囲の期待に応えなければならないというプレッシャーに押しつぶされそうになるルースの葛藤も同時に描かれ、知らないうちに他人をカテゴライズしようとする人間の無知ゆえの罪深さと押しつけが描かれています。
本作の面白い所は、こういったテーマをサスペンス的、時にはホラー映画のような怖さと恐ろしさで表現している所で、終始不気味な緊張感が画面を支配しています。 見る人物の視点によって恐怖にも悲劇にも見える演出は、正に本作のテーマそのもので、豪華俳優陣の演技がこのドラマをより深いレベルの作品にしています。ナオミ・ワッツとティム・ロスの夫婦って、つい「ファニーゲームUSA」を連想してしまった私でしたが、こちらは心理的な恐ろしさが後を引く見応えのある人間ドラマホラーでした
では、また次回ですよ~!