自由奔放に生きてきた作家のエヴァは、突然の妊娠に戸惑いを拭えなかった。やがて誕生した息子ケヴィンは、なぜか自分にだけ懐こうとせず、子育ては苦難の連続となる。成長するにつれ、反抗的な態度はエスカレートし、エヴァは我が子に対し恐怖さえ抱くようになる。夫に相談しても真剣に取り合ってもらえず、次第に不安が募っていくエヴァだったが…。


 

 

 

 

 

こちらは2011年制作の イギリス 映画になります イギリス

 

母親と息子の関係を描いた サスペンス 作品になります 原作小説の映画化ですが、映

 

画としも、大変面白い仕上がりとなっております

 

 

 

 

印象的なオープニング トマティーナ (トマトの収穫祭)で、真っ赤に染まった エヴ

 

ァ の姿から始まります (あたかも子宮から出た瞬間をイメージさせます) 次のカッ

 

トでは一人、部屋に居る エヴァ 貧しい一軒家のようです、ドアを開け外に出ると、家

 

と車に誰かにやられたと思われる赤いペンキが降りかけられているのです その合間

 

に挟まれる幸せだった結婚生活の映像

 

 

 

 

近所の子供に見られながら、車のフロントガラスのペンキを拭い出かける エヴァ ミラジーノ 

 

幾つかのシーンを経て、やっと時間的な整理がついて来るような、編集的演出が施さ

 

れています  独身だった頃、結婚生活の頃、そして事件後の現在物語としては 本

 

自由に世界を飛び回り、執筆をしていたキャリアガールの エヴァ そんな時、恋人との

 

間に望んでいない妊娠をしてしまいます が、彼女はキャリアを捨て、恋人と結婚し子

 

供を産む事を選びます しかし産まれた息子 ケヴィン は エヴァ に全く懐かず、彼女

 

が苛立つ事ばかりします エヴァ の前では笑顔も見せず、言葉も発しない為  時には子

 

供が自閉症なのでは?と、医者に診せたりする程、母親として悩むのですが、父親は

 

考え過ぎだと、正面から育児に向き合おうとしないのです 

 

 

 

 

それは父親の前では ケヴィン は普通の子供にしか見ないからです そんな ケヴィン 

 

も、もうじき16歳という年齢に成長し、妹も出来て思春期 真っ只中、トイレで自慰

 

行為中、母親の エヴァ に扉を開けられても、エヴァ を睨み付け行為を続ける ケヴィ

 

ン ある日妹が可愛がっていたモルモットが消えてしまいます 翌日それはシンクの

 

ディスポーザーに入っているのでした ハムスター 妹自身も片方の目に薬剤が入るという出

 

来事があり、義眼になってしまうという不幸が起こります 目 エヴァ はその出来事

 

を全て ケヴィンの仕組んだ事だと思い恐れるのですが、主人は お前が精神科へ行けと

 

言い放つのでしたUFO そんないつものある日、ついに ケヴィン が学校で大きな事件を

 

起こしてしまうのでした  

 

 

 

 

このストーリーが軸となり、事件後の エヴァ の一人での生活が挟み込まれて、同時に

 

進行して行きます これだけ読むと ケヴィン という青年が何かしらの精神疾患を生ま

 

れながらにして持っていたように感じてしまうのですが、重要なポイントは、これが 

 

エヴァ という 「母親の主観でからしか語られていない」 という事です 彼女は自ら

 

出産は望んでいませんでした産まれた ケヴィン も自分が描いたようにはならず、ケヴ

 

ィン のとる様々な行動も、彼女の目には自分に当てつけしているかのように、過剰に

 

映っていたのかも知れないのです 母親として、こうでなければ!という エヴァ が勝

 

手に生み出した恐怖だったのではないでしょうか?

 

 

 

 

ただ一度だけ、二人が心を通わす場面があります 子供時代 ケヴィン が風邪をひき、

 

弱っている時に読んであげる 「ロビンフット」 ケヴィン は青年になってもその本だ

 

けは部屋に置いてあるのです それによってアーチェリーをするようになるのですが

 

それと同時に ケヴィン は エディプスコンプレックス だったのかも知れません 幼少

 

期からケヴィン は母親が自分の事を、心から愛していないのに気付いていたのではな

 

いでしょうか母親の嫌がる事をする時だけ、エヴァ が本気で自分に向き合ってくれる

 

事を本能的に理解していたからこその行動で、それを エヴァ は過剰に自分の中で処理

 

してしまい、夫婦での真剣な会話すらしません というか エヴァ は出来ないのかもし

 

れないのですが、、、

 

 

 

 

そして ケヴィン は究極の行動に走ってしまいます それは逆説的な母親に対しての 

 

ケヴィンの過激な求愛行動なのですが、誰にも理解は出来ないでしょう 事件後 エヴ

 

ァ は引っ越しもせず、同じ町に住み続けています その為、嫌がらせや、町の人々に

 

疎外されたような生活をしているのですが、そこに住み続ける事で ケヴィン と向き合

 

う エヴァ の心境を表しているようで、家に付いたペンキを綺麗にしていく過程が正に

 

それを画として上手く表現していると思います 家のペンキが落ち、綺麗になった家

 

を後に、車で出掛けて行きます 向かった先は ケヴィン が収監されている少年刑務所

 

です 

 

 

 

 

この日はケヴィン の16歳の誕生日で、16歳になると大人の居る刑務所に移される

 

事になっているようです ある意味 青年期から大人になる けじめの日 だったのです 

 

何故か傷だらけの ケヴィン 収容者達にやられたのでしょう グーハッ最後 エヴァ が

 

聞きます 「教えてくれない?、、何故」ケヴィン が静かに答えます「わかってるつも

 

りだった、、でも今は違う」 そっとうなずく エヴァ 最後は初めて母親としてケヴ

 

ィン を抱きしめるのです ここで初めて 親子という繋がりが生まれたかのようです

 

一人刑務所を出て行く エヴァ 決して明るいエンディングとは言えませんが、母親と

 

いう決意と覚悟を感じさせる 余韻の残る終わり方でした

 

 

 

 

この作品に暴力シーンや、グロテスクな殺人シーン等は一切登場しません しかし、

 

ずっと静かな緊張感が張りつめています そして細かな物や構図によって恐怖が増幅

 

する作用がかなり計算されて作られています 妹の義眼とライチ キッチンの鍵と自

 

転車のロック そして 最も印象深いのが、 エヴァ と ケヴィン 気づけばまるで 合

 

わせ鏡のようでもあります そして 赤 という色がとても効果的に使われています そ

 

して琴の音色まで 箏  音譜 この作品をあるレベルまでにした貢献者は、主演の ティ

 

ルダ・スウィントン で彼女の神経質な雰囲気が圧倒的であります そして ケヴィン 

 

役の エズラ・ミラー の謎めいた怖さと魅力 「ファンタスティックビースト」 でも重

 

要な役柄を演じておりました

 

 

 

 

ちなみに今作の監督さんは女性監督の リン ラムジー という方だからこその繊細さで

 

しょうか お子さんをお持ちのお母さまには、あまりお勧めしかねますが、とても良

 

く出来た サスペンス映画であり、親とは?と、疑問を投げかけられる人間ドラマにも

 

なっておりますので、興味が湧きましたらご覧になってみて下さいませであります

 

では、また次回ですよ~! バイバイ