「ミステリーの女王」ことアガサ・クリスティの名作小説「ホロー荘の殺人」を映画化。フランスの平穏な村で起きた殺人事件を軸に、そこに集った男女9人の愛情や嫉妬、怒りや憎しみなどを映し出す。

 

 

 

 

 

 

  -  LE GRAND ALIBI  -  監督 パスカル・ボニゼール   原作 アガサ・クリスティ

 

 出演 ミウ=ミウ 、ランベール・ウィルソン、アンヌ・コンシニ 他

 

こちらは2008年制作の フランス映画 フランス です。(93分)

 

 

 

 

  フランスの小さな村、ヴェトゥイユ。 上院議員のアンリ・パジェスと妻エリアーヌは、週末ごとに友人たちを招き、狩りやパーティでもてなしていました。 ある週末、集まったのは精神分析医のピエールとその妻クレールを始めとした数人。 しかし、彼らの間には妙な緊張感が漂っていました。 妻への誠実さに欠けるピエールは、結婚以来、何度も浮気を繰り返しており、この日集まった全員がピエールに対して愛情、憎悪、嫉妬など、何らかの感情を抱く関係にあったのでした。 

 

 

 

 

そしてクレールは、分別のない夫の行動を知りながら、2人の子供との生活を守るため、見て見ぬ振りをしていました。 その日も、ピエールは愛人エステルがいることを知りながら、元恋人であるイタリア人女優のレアの誘いに乗り、一夜を共にします。 しかし翌朝になると、復縁を迫るレアに対して、ぬけぬけと“妻子がいるから”と拒絶するのでした。 その態度に激怒し、罵詈雑言を浴びせるレア。 彼女と別れたピエールは、1人黙々とプールで泳いでいました。 彼がプールを出ると、そこには午後のけだるい静寂が広がっていました。 

 

 

 

 

その時、突然一発の銃声と女の悲鳴が響き渡ります。 エリアーヌがプールに駆けつけた時、倒れたピエールの傍らに、彼の手を握るエステルと銃を握っている妻のクレールがいました。 殺人の容疑者として警察に拘留されるクレール。 しかし、解剖の結果、ピエールを撃ったのは彼女が手にしていた銃でないことが判明し釈放される事となります。 捜査は振り出しに戻りました。 そして当時、パジェス家にいた8人全員に、ピエールを殺害する動機があった事が分かります。 彼らが互いを疑い始めたとき、第2の殺人が起こるのでした、、。​​​

 

 

 

 

本 ミステリーの女王と言われるイギリスの作家、アガサ・クリスティの映画化作品が多数ある事が気になり、この際、現在観れる映画作品をまとめて観てみようと思いDVD化されているものを一日置きに鑑賞していきます。

その1本目がこちら、「ホロー荘の殺人」をフランスで映画化した作品で、小説は未読。原作ではポアロが登場する作品のようですが、本作ではそれにあたる人物は登場せず警察もたいした活躍もしないという、アガサ・クリスティ物としては変り種の映画です。 

 

 

 

 

今作も上院議員のパジェス邸に集まったうちの一人が殺され、犯人と動機、殺人のトリックを解明していく事になるのですが、そもそも殺されたピエールという人物自体にかなりの問題があり、少なくともそこに集まった3人の女性と様々な関係を持っていたという人物。 まぁ遅かれ早かれ何らかのゴタゴタが起きるのは必至なのでありました。拳銃をコレクションしている上院議員、その中の拳銃で殺されたピエール。 その現場で銃を持っていた妻のクレール、しかし彼女が持っていた拳銃とピエールを殺した弾は別のもの、という謎ではありますが、そこを掘り下げて捜査やトリックから解明しようとしないのが本作の特徴です。 かと言って女性達のドロドロとした愛憎劇にもスポットは当たらず、エリアーヌのいとこの息子フィリップが物語を牽引していく事になります。

 

 

 

 

警察が一人一人に取り調べでもしてくれれば人間の相関図も理解しやすく、アリバイ等の推理も楽しめるのですが、そこもノータッチ。 その為、上院議員の家に最初から居た二人の女性をてっきり夫婦の娘だと最後まで思っていた私でした。

自分も記憶が曖昧だというアルコール依存のフィリップが、自分は不安発作では?と疑心暗鬼になった事で思わぬ方向にスト-リーは進み、ある意味偶然によって犯人が正体を明かすという展開に至ります。 

 

 

 

 

その際に発見される殺人に使われた拳銃の隠し場所は意外なものでしたが、そもそもその拳銃の行方を探していた訳でもなく、映画の中ではあまりそこを重要視していなかった事で驚きがほぼゼロ。 2人目の被害者に至ってもかなりぞんざいに扱われ、それについての捜査やトリックもほぼ真犯人の究明には関わらないというミステリー映画にしてはかなり残念な作品になっています。

 

 

 

 

一応アガサ・クリスティの小説を原作としていますが、印象としてはフランスの人間ドラマ作品という側面が強く、フランス映画にアガサ・クリスティのエッセンスを取り入れた作品といった方がピンとくる映画となっています。 そのくせ出演されている俳優さんは意外と実力派が多く、どこかの作品で見かけたようなお顔がチラホラといらっしゃいます。

 

 

 

 

結局、ミステリーにしたかったのか、愛憎劇にしたかったのか、分からないままエンディングを迎えてしまったような中途半端な印象の映画に仕上がっていて、アガサ・クリスティ的なミステリーとトリックを楽しむには物足りなさの残るものですが(推理が得意な方なら既にポスターの時点でその事に気付くでしょうが) 彼女の映画化作品に興味のあるは変り種としてご覧になるのも楽しみ方の一つだと思いますので、時間に余裕があればこの機会にでもチャレンジしてみてはいかがでしょうか?です。

 

では、また次回ですよ~! パー