傷ついた12歳の少女の日常的な冒険を描くドラマ。ひとりのヒロインを8人の俳優が演じる試みが行なわれている。監督・脚本は「ウェルカム・ドールハウス」のトッド・ソロンズ

 

 

 

 

 

 

                   -  PALINDROMES  -  監督 脚本 トッド・ソロンズ 

 

出演 ジェニファー・ジェイソン・リー、エレン・バーキン、エマニ・スレッジ、ヴァレリー・シュステロヴ、ハンナ・フリーマン、レイチェル・コア、ウィル・デントン、シャロン・ウィルキンズ、シャイナ・レヴァイン、 他

 

こちらは2004年制作の アメリカ映画 アメリカ です。(100分)

 

 

 

 

  舞台はニュージャージー郊外。 12歳の少女アビバは、早く母親になって、子供との絶対的な愛を結びたいと熱望していました。 そこでアビバは、両親の友人の息子と肉体関係を持ちました。 娘の妊娠にショックを受けた父と母は、彼女にむりやり中絶手術を受けさせます。それでも母親になる夢を諦められないアビバは家出を決行します。行きずりでジョーと名乗るトラック運転手の男と一夜を共にしますが、翌朝モーテルに置き去りにされ捨てられてしまいます。 やがて力尽きたアビバを拾ってくれたのは、信仰心の強い女主人のママ・サンシャインでした。 

 

 

 

 

彼女は自宅に何人もの障害児たちを養子にした”サンシャイン・ホーム“と名前のついた家に住んでいました。 そこで楽しく暮らすある日、ホーム近くのトレーラーに住む男アールがやって来ます。 彼はアビバを捨てたあのジョーでした。 思いがけない再会にアビバは彼に初恋の感情を抱いていたことに気づきます。 しかしアールは中絶手術を施す医師の撲滅を企てるグループの一員で、標的となったアビバの手術をした医師を殺害します。 彼は自分の本当の名前がボブであることをアビバに告白したあと、警察に撃たれて死んでしまうのでした。 こうして冒険を経たアビバは、実家に戻ってきます。

 

 

 

 

「ウェルカム・ドールハウス」のトッド・ソロンズの作品で、前作の主人公だったドーンの従妹が今作の主人公アビバという設定です。 兄のマークは引き続き出演しています。本作は9つの章に分かれ、各章の始まりにその物語のメインとなる人物の名前がサブタイトルとして表示される形で区切られています。 一番の大きな特徴はその章ごとにアビバを演じる役者がそれぞれ違う事です。 肌の色や年齢、そして性別まで異なります。 そこに特別な説明はなく、一人のアビバの物語として映画は進行していきます。「ドーン」 幼いアビバは自殺した従妹のドーンのようなはならずに、子供を産んで幸せな母親になる事を心に誓います。

 

 

 

 

「ジュダ」 両親の友人の息子ジュダに母親になる夢を語ります。 すかさず彼はアビバの上に乗ってセッ〇スをするのでした。「ヘンリー」 アビバの妊娠が発覚します。母親は自分がヘンリーを宿し中絶した話をアビバに語ります。 しかしアビバの中絶手術は失敗し、子供の産めない身体になります。「ヘンリエッタ」 中絶した赤ちゃんが女の子だったことを聞かされたアビバは、心の中でその赤ちゃんにヘンリエッタと名付けます。そして家出を決行します。「ハックルベリー」 ジョーに捨てられ独りぼっちになったアビバは、キャリーバックを引きながら川のほとりを彷徨い歩きます。 ハックルベリーのような冒険が始まったのです。

 

 

 

 

「ママ・サンシャイン」 力尽き倒れている」ところをピーターに発見され、サンシャイン・ホームに案内されます。「ボブ」 アビバに中絶手術を施した医者の殺害へ着いてゆくアビバ。 医者を殺したアールは別れ際に自分の名前がボブだと告白し、警察に撃たれて亡くなります。「マーク」 自宅へ戻ったアビバの歓迎パーティでドーンの兄マークと再会します。 彼は「人は買われると思うのは間違いで、結局のところ変われないんだ」と語ります。「アビバ」 ジュダと再会したアビバは少し大人になった彼と再びセッ〇スします。アビバは彼に向かって「予感がするの今度こそママになれるわ」 と告げるのでした。

 

 

 

 

ある意味とても実験的な試みで、事前の説明がないとかなり戸惑うアビバの設定ですが肌の色や人種といった外見で持つイメージを破戒して、一人のアビバという人間と中身は同じだという事を訴えた演出にはちょっと共感してしまう所もあります。妊娠して母親になる事で心の隙間を埋めることが出来ると信じるアビバの大人への旅本作の原題は 「回文」という意味になるらしいのですが、「TENET」にも登場していましたね。 前から読んでも後ろから読んでも同じ意味になるという主人公のアビバも同じように「AVIVA」です。 

 

 

 

 

物語のテーマを表したような名前で、結末に向かって進むのではなく出発点に戻る言葉になります。 劇中でマークが言うセリフ 「痩せたり顔を引き締めたり、日焼けや豊胸手術や性転換はできても結局は同じ、基本的なところは何も変わらない」 という言葉の中に、監督の人生への皮肉が込められているようにも感じます。そしてこの作品でも自殺や中絶、レズビアンや小児愛者、人を救う為の中絶や信仰のための殺人等、きわどい描写が当然のように登場します。 

 

 

 

 

特に際立つのがサンシャイン・ホームに暮らす子供達です。 全盲で、アルビノらしき見た目の子や両腕がない子、てんかん持ちの子や難聴の子、小人症の子やダウン症の子が普通に暮らしています。 日常では見ないふりをするような所にあえてスポットを当てる作風は健在です。「人間の本質は外見や容姿なんかじゃ規定されない」 という誤解を招きかねないかたくなさにトッドソロンズの力強いメッセージを感じます。愛を求める少女についての物語、かなり斜めからの映画ではありますが、そこがクセになる監督の作品です。 機会があればご覧になってみて下さいませ、です。

 

では、また次回ですよ~! パー