サンダンス映画祭審査員大賞(グランプリ)を受賞したトッド・ソロンズ監督・製

作・脚本​によるデビュー作。

 

 

 

 

 

 

   -  WELCOME TO THE DOLLHOUSE  -   監督・製作・脚本 トッド・ソロンズ

 

出演 ヘザー・マタラッツォ、エリック・メビウス、ブレンダン・セクストン・Jr他

 

こちらは1995年制作の アメリカ映画 アメリカ です。(88分)

 

 

 

 

  ジュニアハイスクール7年生のドーンは厚いメガネをかけた女の子。 

学校のクラスメートから「ブス」と罵られ、同性の女子からはレズビアンとからかわれ、給食の時間も仲間はずれです。 先生すらも彼女に冷たい態度をとられていました両親もドーンが学校でイジメられている事には無関心、兄のマークはまあまあ優秀なパソコンオタク、見た目も可愛い妹のミッシーを母親が溺愛していました。 そんな妹に嫉妬から意地悪しますが、母親に告げ口されて余計印象が悪くなるばかりでした。そんなドーンですが、家の庭に廃材で作った「特別人間クラブ」と命名した小さな小屋を持っていました。 会員は同じようにイジメられている男の子のラルフだけでしたが、そこが彼女の唯一の自由な場所でした。

 

 

 

 

ある日、兄のマークが内申書対策でやっているバンドにスティーヴというイケメンがボーカルで加入します。 ドーンはスティーヴにお熱になり、彼と何処か別の場所で暮らすのを夢見るようになります。学校では相変わらず仲間はずれのドーンに、いじめっこのブランドンが執拗に絡んできます。 ブランドンはドーンに、レイプしてやる、と言って度々脅しをかけていました。ある放課後、ブランドンはドーンを待ち伏せ、無理矢理空き地へ連れて行きます。 乱暴される事を覚悟したドーンでしたが、ブランドンは彼女に優しくキスするだけでした。障害を持った弟が居る事を告白するブランドン。 二人だけの内緒だと言う彼と少しだけ距離を縮められた気がしたドーンでした

 

 

 

 

その夜、母親から結婚記念日のパーティーをするから庭のボロ小屋を片付けてほしいと告げられます。 断固拒否するドーンは一人だけケーキを食べさせてもらえませんでした「特別人間クラブ」にブランドンがやってきて再びキスしますが、ドーンは「恋人にはなれない」「愛してる人がいるの」と告げます。 ショックを受けたブランドンは罵声を浴びせて去っていきます。 小屋は撤収され両親のパーティーが盛大に開かれますが、ドーンは家の窓から眺めるだけでした。 スティーヴが居る事を見つけた彼女は、スティーヴを探すとイケてる女子とガレージに居ました。 新しいクラブハウスを作ろうとしている事、その名誉会員1号になりたくない?とスティーヴに聞くと、そんな事をするのは低能だと言われてしまいます。 「特別人間クラブ」は「低能人間クラブ」だと返されたドーンは落ち込みます。

 

 

 

 

パーティーを映したビデオを家族団らんで観ます。その中には楽しそうにはしゃぐ妹のミッシーの姿と、ずぶ濡れで笑われるドーンの姿がありました。 夜中にそのビデオを持ちだして、ハンマー叩き潰すドーン。 隣で寝ているミッシーにもハンマーを振りかざそうとしてやめるドーンでした。学校で会っても無視するブランドンを気に掛けるドーン。 授業中、警察が現われて彼を連れていきました。 心配したまま家へ帰ると、出かけようとする母親から妹に伝言を頼まれます。 急用でミッシーのバレエ教室の迎えに行けないため、母親の知人に送ってもらうようにという内容でした。 そのまま自宅でテレビを観ていると唯一の友人ラルフから電話がありました。 ミッシーが出て取りつごうとしますが、話したくないと拒否します。

 

 

 

 

「友達でしょ?」と諫めるミッシーに、「オカマとは話したくない」と言って電話を切らせるドーン。 その声を電話越しに聞いているラルフでした、、。バレエ教室へ出かけようとするミッシーに伝言を伝えようとしたドーンでしたが、躊躇して伝えるのをやめます。 その夜、行方不明になったミッシーを捜査する為、沢山の警察が手掛かりを探して家へとやって来ました。 父親は体調を崩して寝込み、母親はパニック状態です。 呆然とするドーン。 翌日も捜査は続いていました。家を抜け出してブランドンの家へと訪れたドーンでしたが、ブランドンは荷造りをして家を出ようとしている最中でした。 「一緒にNYへ行かないか?」と誘われますが、そんな勇気がないドーンはブランドンを見送るだけで精一杯でした。夜、タイムズ・スクエアでミッシーのバレエの衣装が発見されたという連絡を受けます。深夜、寝静まった家を抜け出したドーンは、ミッシーを探す為にNYへと向かうのでしたが、、。 というお話です。

 

 

 

 

以前ご紹介した 「ハピネス」 のトッド・ソロンズのデビュー作がこちらです。 おそらくメジャーなスタジオでは描かれそうにない、「裏ローティーン映画」とも言える内容の本作はぶれる事のないトッド・ソロンズの皮肉とリアリティに満ちた、ドーンとそれらを取り囲む生々しい世界が描かれています。 やる事がことごとく悪い方へと進んでしまうドーンの日常はとってもヘビー。 衣食住には苦労しない中流家庭の彼女ですが、中流は中流なりに生きるのが大変なのです。

 

 

 

 

これだけイジメに遭いながら、ただ可哀そうな女の子の悲しい映画になっていないのはドーンの悲壮感の中にも、一本筋が通っている所でしょうか? 強い者にもちゃんと言い返せたり、イジメられてる男子を助けようとする強さがあります。 そう、ただただ一方的に同情する緩いやさしさを拒否した作品でもあります。「特別人間クラブ」という名前を付けた小屋が象徴するドーンの小さな世界が親の都合で壊される状況に、嫌でも大人にさせられる子供の気持ちが見えて切なくなりますが、そうでもしないと大人になれないドーンにとっては成長する機会でもあったのですね。他にも度々変身する機会がありながら、それをモノに出来ない彼女の幼稚性と我の強さそれが出来ていれば、こんな状況にはそもそもなっていない訳で、最後の最後、自分の意志でヒロインになろうとするも、空振りに終わってしまう所もドーンらしいのです。

 

 

 

 

普通の映画なら、ここで主人公になれたり、人生の転機となるはずが、本作では特別な変化が起こらないというリアルなもの。 そうそう映画のように上手い事いかないのだよと突き放されたような気にもなりますが、それが人生。 まだまだこれからだし、充分彼女は魅力的なのだから、という本当の意味でのそれぞれの個性を尊重し、擁護しているような作品でもあります。

 

 

 

 

本作で一番可哀そうなのは彼女を気遣ってあげているにも関わらず、オカマ呼ばわりされてしまうラルフ君なのですがね。 イジメられている人間が、実は他人を傷つけていたりする事もあるものです。 誤解されそうですが、実はイジメられる方にもそれなりの訳がある、という所もあったりするのですが。イジメている人数の方が多いのが現実ですもの そして、イジメをしている方の人間が一番悪いという事は当然なのですがね。私を含め、見た目や性格にコンプレックスを持っている人が観ると、ドーンの姿に、いたたまれない気持ち半分、応援する気持ち半分という皮肉な状態になりますが、何故か最後に少しの希望と勇気をもらえる不思議な作品です。 本作でインディペンデント・スピリット賞新人俳優賞を受賞したヘザー・マタラッツォちゃんの凄い演技が見物の作品ですので、機会があれば一度ご覧になってみて下さい。

 

では、また次回ですよ~! パー

 

 

 

 

 

 

 

 

ドーンが何かを決意した時に度々流れるドーンのテーマのようなこの曲のセンス!音譜