かつての独裁政権下の抑圧的な神学校での少年二人の友情と初恋、神父による性的虐待。 そして現代の成人して再会した彼らの姿とが交錯して描かれる。かつて自らも保守的な神学校で少年時代を送ったアルモドバルの半自伝的な作品。

 

 

 

 

 

 

   -  LA MALA EDUCACION  -  監督・脚本・製作 ペドロ・アルモドバル

 

出演 ガエル・ガルシア・ベルナル、フェレ・マルティネス、ハビエル・カマラ 他

 

こちらは2004年制作の スペイン映画  です。(105分)

 

 

 

 

  舞台は1980年 スペインのマドリード。 新進映画監督のエンリケは、若くしてすでに成功を収めていましたが現在はスランプに悩んでいました。

そんな彼のもとにある日、少年時代の親友イグナシオが自ら書いた「訪れ」というタイトルの脚本を手に突然訪ねて来ます。 彼の変貌ぶりに驚くエンリケは、イグナシオと神学校寄宿舎では強い愛で結ばれていました。 彼が書いたというその物語は、その頃の自分達をベースにたものでした。 

 

 

 

 

後日、脚本が気に入ったエンリケはイグナシオに製作が決まった事を告げ、お祝いをする為にエンリケの家へと向かいます。 しかし、エンリケは彼の好きだった曲を聞かせても無反応だったことから、本当に彼がイグナシオなのかという疑いを持ち始めます。イグナシオの変貌ぶりに戸惑い、彼に疑念を増していくエンリケ。 その一方で彼は、差し出された脚本の内容に惹き込まれていく自分がいました。 本の中には少年時代の彼らの一途で純粋な愛と、それを引き裂く悲劇が綴られていました。 2人はその脚本を基に、自伝的な映画の撮影を始めます。 しかし日ごとに大きくなるイグナシオへの疑念を拭い去ろうと、彼の実家を訪ねたエンリケでしたが、そこに住む母親からイグナシオは3年前に亡くなっている事を告げられるのでした、、。

 

 

 

 

神学校時代の少年期と大人になった現在を交差させて紡がれる、二人の愛と悲しみの

物語をサスペンスタッチに描いた本作。この作風とテーマ とくれば、そう 「オールアバウトマイマザー」の ペドロ・アルモドバル監督で、この作品でニューヨーク映画批評家協会賞外国語映画賞を受賞しています。彼の作品は、そう多くは観ていなませんが、今回はサスペンス映画に挑戦しております。内容をよくチェックして借りなかったのですが、始まってすぐのオープニングで、これはサスペンス映画ですよ!と、宣言するかのようなかっこいいタイトルが流れ、その時点で完全にノックアウトされてしまいました。

 

 

 


私が好きなヒッチコック映画のオープニングタイトルを手掛ける「バーナードハーマン&ソールバス」のようなオープニング。 これは完全にサスペンス映画の神様、ヒッチコックに対するオマージュに他ならない、素敵なオープニングタイトルで始まります。お話は、現在作品を探している主人公の新進監督の所へ、少年時代の親友が、脚本を持って訪ねて来る事から始まるのですが、そこから現在と、過去、そして脚本の中の映画のシーンが折り重なり、後半に行くにしたがって、徐々にサスペンス感が増していくというスタイル。

 

 

 


この作品のポイントとも言えるのが、アルモドバル監督自身のアイデンティティであります。 あのヒッチコックといえども、こうは表現出来ないであろうという、男と男の、マイノリティである故の愛の深さであったり、嫉妬であったり、孤独であったりと、それ故に起きてしまった悲劇とでも言いましょうか、、
他の監督作でもやはり、アルモドバル自身の体験がかなり反映されているものが多く、それが唯一無二の彼の作品と言える、素晴らしさとオリジナリティの説得力の根幹であります。 そこから生み出される世界は、彼にしか撮れない物語です。

 

 

 


今作でも、カメラは鮮やかな色を映し出しております、そして登場人物を彩る衣装は、これまた私の好きなジャン・ポール・ゴルチエが画面を華やかに飾っています。

イグナシオを演じるガエル・ガルシア・ベルナル(毎回舌を噛みそうになりますが)の妖艶な女装も見所の一つですが、彼等の少年時代を演じる二人の子役の繊細な演技も見事です。

 

 

 

 

保守的な神学校で起きる少年への神父による性的虐待、それによって書き換えられてしまう彼等の将来と多大な影響。  根底にはなかなか重圧なテーマが含まれている本作

トータル、少々アクが強めの作品ではありますが、重圧な人間ドラマをサスペンスに落とし込んだストーリーは、色々な視点と観点で鑑賞できる映画だと思いますので、機会があれば一度ご覧になってみて下さいませ、です。
 

では、また次回ですよ~! パー

 

 

 

 

 

 

 

本作のオープニングクレジット映像です。 かっこいい以外の言葉が見つかりません。