無限に繰り返される空間に閉じ込められた人々を待ち受ける予測不能な運命を描き、世界各地の映画祭で注目を集めたメキシコ製スリラー

 

 

 

 

 

 

         - EL INCIDENTE  ー  監督 脚本 イサーク・エスバン

 

  出演 ラウル・メンデス、マグダ・ブルゲンヘイム、ウンベルト・ブスト 他

 

こちらは2014年制作の メキシコ映画  です。 (101分)

 

謎の無限タイムループにはまってしまったら人はどうなってしまうのか? そんな地獄のように繰り返される毎日に陥った人達を描いたスリラー作品です。

 

 

 

 

  刑事に追われる犯罪者の兄弟が、とあるビルの非常階段に逃げ込みます。 刑事もその階段に足を踏み入れますが、突然謎の爆発音が聞こえます。 するとビルのフロアへ入るドアが開かなくなります。 その上、1階の階段を下りると何故か最上階の9階が現われ、何度下りても9階にたどり着いてしまいます。 そんな不可解な状況の中、兄が刑事に足を撃たれ、瀕死の状態に陥ります、、。 

 

 

 

 

話は代わり、荒涼とした大地を車で旅する一家。 母親とその恋人、兄妹の4人は、一本道を走っていました。 途中で寄ったドライブインのジュースが元で、娘の持病である喘息の発作を起こしてします。 用意していた吸引機はアクシデントで使えなくなってしまいます。 容態が悪化する娘の為、家族は予備の吸入器を取りに来た道を引き返しますがここでもやはり謎の爆発音と同時に不可解な現象が発生します。 いくら走っても道がつづき、同じ看板を何度も見た事で、家族は​​​​何度も同じ場所を走っていることに気づきます。 逆走しても、横道にそれても一本道から抜け出せないという状況に陥ってしまいました。 やがて、娘の容態はどんどん悪化して、、。というお話です。

 

 

 

 

ハリウッド映画に比べれば、かなり低予算で作られたと思わしきワンアイデアのB級作品?ですが、なかなか巧妙に考えられた作品でありました。映画のオープニング エスカレーターの、繰り返される階段のアップではじまるのですがこのエスカレーターという無限の階段もこれから起こる状況を巧みに象徴しています。そのエスカレーターに横たわった状態で、画面上からウエディングドレス姿の老婆が降りてきます。そのショットでオープニングが終わり物語が始まるのですが、この老婆も後につづく物語にリンクしている事が最後で分かる事になります。2つの別々の物語のタイムループですが、結局、両方とも35年も延々と続いてしまうのです。 この35年後の世界の描写がこんなになるのか!という時間経過のその後の映像が特に怖いのです。

 

 


 

 

一つの世界では小さな自販機、もう一つの世界にはガソリンスタンド、24時間経つと、物がまた元通り戻っています。 食料には困らないのですが、ずっと同じ食事という悪夢、どうしてその世界に入ってしまったのか?何故24時間で物が戻るのか?その理屈は特に作中で説明されませんが、後半でこのループの謎が解き明かされます。 ループが始まると、当然同じ時間が繰り返される毎日になる為、劇的なドラマはありません。ですから、ここまで結構まったりと描かれ、ドラマの後半が急展開にも思えるのですが、このまったりも、フリだった事に気付かされるようになっています

 

 

 


なかなかの展開に、頭がついて行かない所もあるのですが、あれと、これが、これになって、、、とつい作品同様に観返したくなるのでした。そしてオープニングで観た老婆が、満を持してここで効いてきます。 観終えた後嫌も嫌~な後味が残りますが、なかなか面白く考えられている作品だと思います。ハリウッドでリメイクすると、もう少し整理されて、観やすくなるかもですが、この、ちょい微妙なバランスがちょうど良いのかも知れません。私自身、毎日同じようなスケジュールで日々を過ごしている訳ですから、映画の中と、さほど変わらないと思ってしまいましたが、あそこまで強制的に変化の無い世界の恐ろしさを見せつけられると、「適当な自由」 のありがたみを痛感してしまいました。日常を退屈に感じている方は、是非この作品をごらんになって、真の退屈の恐ろしさを体験してみてはいかがでしょうか?

では、また次回ですよ~! パー