チェコ・シュルレアリスムグループの創始者である詩人ビーチェスラフ・ネズバルの小説「少女バレリエと不思議な一週間」を、チェコ・ヌーベルバーグの映画作家ヤロミール・イレッシュが映画化し、ゴシックロリータ映画の最高峰として現在に至るまでカルト的人気を集め続ける1969年製作の異色ホラーファンタジー

 

 

 

 

 

 

             - VALERIE A TYDEN DIVU - 監督 ヤロミール・イレシュ

 

  出演 ヤロスラバ・シャレロバ、ヘレナ・アニェゾバ、ペートル・コプリバ 他

 

こちらは1969年制作の チェコスロバキア映画  です。(74分)

 

 

チェコのシュルレアリスムの映像作家 ヤロミール・イレシュ が、初潮を迎えた13歳の少女ヴァレリエが垣間見る、現実とも空想ともつかない不思議な世界をゴシック的な幻想の中に描いた作品です。 本作には一応の設定や物語の大まかな流れはあるもののストーリー的な繋がりや説明といったものが一切無く、作者自身もそれを解釈しようとはしていないように思える作品です。 

 

 

 

 

  映画は少女ヴァレリエの幻想的なショットにクレジットが挟まれる映像から始まります。  大きなお屋敷でうたた寝しているヴァレリエの耳から真珠の耳飾りを盗む青年。しかし耳飾りは誰かの手によってヴァレリエの耳へと戻されます。 彼女が庭を歩いていると足元の白い花に血がしたたります。 花を見つめるヴァレリエは初潮を迎えました。彼女は厳格なお婆さんと二人で暮らしていました。 両親は既に亡くなっています。

 

 

 

 

村に旅芸人と花嫁、そして宣教師が列をなしてやって来ます。 その中に白い顔をした化け物も紛れているのを発見するヴァレリエ。 お婆さんは不安がります。

チェンバロを弾く彼女のもとへ、耳飾りを盗​​​​​​んだ青年から手紙が届き教会へと出かけるヴァレリエ。そこでオルリークという青年に出会います。一人町を歩いていると今度は黒いマントに身を包んだ吸血鬼に出会い、救貧院のある建物へと一緒に入って行きます。地下の部屋にある覗き穴から中を覗くと、お婆さんが牧師の前で鞭打つ姿が見えましたオルリークに担がれてそこを後にするヴァレリエは 「これは夢」 と囁きます、、。

 


 

 

ここまでで映画の3分の一程ですが、どなたもこの文章では物語を理解出来ないでしょうね。 当然私の文章力の酷さもありますが、文章では補う事が出来ない抽象的な映像による表現が多くある事が本作の大きな魅力でもあり、難解な所でもあります。 多分、その難解さとは、原作を知った上での映像化作品だからではないかと思います。 「不思議の国のアリス」 を難解な文学と言っているようなものじゃないでしょうかね?

 

 

 

 

ヴァレリエという少女が初潮を迎えた事によって、少女から大人の女性へと変化する不安定な心理や恐怖。 同時に自身の「性」と、異性に対する「性」というものへの興味と憧れが、夢の中と現実世界にまで浸食して境界線が曖昧になったある時期が、幻想的で残酷な映像として描かれた、ホラーファンタジーような作品です。

 

 

 

 

ヴァレリエを象徴するような白い部屋とベッド、無垢をイメージさせる レースのワンピースや白い鳩。 度々口にする林檎の実やワイン。 蜂が住む男女の像や黒い馬車、自ら鞭打ちをする男達に、花を差し出す少女、吸血鬼、魔女狩り。 自然の水や火、仮面、悪魔、契約書、結婚ペスト、堕落、罪、信仰、若さ、老い、といった様々なモチーフが、ヴァレリエを少女から女性へと誘い、惑わせ、変身させるきっかけになっています。

 

 

 

 

ある意味、「無垢な少女を襲う危うい誘惑についての映画」 ともとれるような作品で、大人の男から見た処女性への強い憧れを同時に感じる「気味悪さ」がこの映画のカルト性の根幹であり、いけない魅力でもあるのではないでしょうか?

ゴシック的な装飾や服装、耽美な雰囲気、幻想的で靄がかかったような抽象的なショットが不気味な魅力を漂わせている甘美なロリータ映画となっていますので、機会があれば一度ご覧になってみて下さいませ、です。

 

では、また次回ですよ~! パー