ルイ・マルが渡米直前に作った、ルイス・キャロルの 「アリス」 の迷宮感覚を基にした実験的作品。非現実的な近未来を舞台に、ある女性が迷い込んだ幻想世界をシュールな感覚で描く、、。

 

 

 

 

 

 

                            - Black Moon -  監督 脚本 ルイ・マル

 

 出演 キャスリン・ハリソン、ジョー・ダレッサンドロ、

                                                            アレクサンドラ・スチュワルト 他

 

こちは1975年制作の フランス  フランス  西ドイツ  ドイツ  の合作映画です(92分)

 

 

現在東京の一部劇場でリバイバル上映されている本作は「死刑台のエレベーター」

 

「地下鉄のザジ」 で知られるフランスの巨匠 ルイ・マル 監督が描いた、大人のアリ

 

ス版ともいうような、摩訶不思議な作品でございます。 

 

 

 

 

  映画はルイ・マルのこんな言葉で始まります。 

 

「これは理屈の通じない別世界の話です 夢のような旅をどうぞ、、」 わぉ、監督か

 

らじきじきに理屈はないと宣言された映画ですから、時間に身を委ね、素直にありの

 

ままを鑑賞した私でありました。夜明けの道をひた走る車  運転しているのは男装した

 

リリーという女性です。 道の先では戦争が起こっているようで、女性兵士が亡くな

 

っています。 それを横目にしながら道を進むと、男ばかりの軍隊が道を塞ぎ敵対して

 

いる女性兵士達を銃殺します。

 

 

 

 

一人の兵士がリリーに近づき、彼女の帽子を取ります。 中から美しいブロンドの髪が

 

こぼれ、女性である事がばれてしまいます。 リリーはとっさに車を横道へそらし逃げ

 

ます。 山道を走っていくと羊の群れと吊るされた男が見えました。 車は遂に行き止ま

 

りになり、車を降りた彼女はそこで女性の軍隊が男をいたぶっている光景を見ます。

 

兵士に見つかったリリーは森の中を走って逃げます。 その先には太ったユニコーンが

 

居て、馬に乗った女性がリリーの横を走り過ぎていきました。 女性を追いかけると裸

 

の子供達がブタを追って遊んでいました。 その先にある屋敷を発見したリリーは、屋

 

敷に入って行きます。 

 

 

 

 

暖炉に火がついていましたが1階に人はおらず、ブタが椅子に座っていました。 2階

 

からピアノの音がして上がるとネコがピアノの上を歩いているだけでした。別の部屋

 

を覗くと、ベッドの上にお婆さんが居てネズミと会話をしていました。リリーを見つ

 

けたお婆さんは相手のいない無線機に向かって何やら話を始めます。その屋敷にはお

 

婆さんの他に、先程馬に乗っていた女性と男性の姉弟が住んでいました。 リリーが話

 

しかけても二人は喋らず、言葉は返ってきません。リリーの存在すら、たいして気に

 

も留めない様子です。 娘はお婆さんにお乳を与えます。庭では裸の子供達が羊を追

 

い、時折戦争の銃声が聞こえるばかりです。

 

 

 

 

屋敷の庭で現れては消えるユニコーンに会い不思議な会話をするリリー、その夜子供

 

達が集まった部屋でピアノを弾くリリーに様々な幻覚が襲います。すべては夢なの

 

か?そして誰もいなくなった夜明けの部屋で彼女は運命を告げるかのようなユニコー

 

ンが姿を現し、リリーは 「お待ちを」 と言ってお乳の準備を始めます、、。

 

私の文才のなさもありますが、ほぼ、このままの内容でもあるのがこの映画なのです

 

映画の始まりでルイ・マルが告げた言葉にまんまと騙されてしまった私。 何もかもに

 

何らかの隠喩を感じてしまうものばかりで、それを探ろうとするこちらはもう頭の中

 

がパニックでござりまする。 

 

 

 

 

男女の戦争、醜いユニコーン、謎の言葉で話す老婆と無線機、裸の子供達等。 大人版

 

のアリスというにはあまりにファンタジックさは無く、むしろ妙にリアルな未来感が

 

あり、シュールレアリスムにも行ってない不思議な話に仕上がっています。

 

前半の開放的な動きのある映像は良かったのですが、屋敷に入ってからの足止め感が

 

かなり私には窮屈に感じてしまい、正直シュールを越えた退屈にやられてしまいまし

 

たが、そこにはあの 「死刑台のエレベーター」 「地下鉄のザジ」 のルイ・マルの作

 

品だという前提がある事で成立してしまっている所もある気がします。

 

 

 

 

不思議な世界へ舞い込んでしまった「アリス」や「オズの魔法使い」他にも「ローズ

 

マリーの赤ちゃん」 や 「ブラックスワン」 はたまた 「千と千尋の神隠し」といった

 

作品とも違ったルイ・マルによる夢のような旅、、。  

 

様々に考察するもよし、ただただ映像に身を委ねるもよしの作品でございます。

 

映画を観終わって残るのは、確かにこの作品を観たという事実と、不確かな余韻であ

 

りました。  もし、何かの機会があればご覧になってみてはいかがでしょうか?です。

 

では、また次回ですよ~! パー