レイモン・クノーが1959年に発表したベスト・セラー小説の映画化作品。ルイ・マル監督のコメディでフランス映画のヌーヴェルヴァーグ運動の先駆けとなった。 

 

 

 

 

 

 

         - ZAZIE DANS LE METRO - 監督 ルイ・マル

 

 出演 カトリーヌ・ドモンジョ、フィリップ・ノワレ、 カルラ・マルリエ 他

 

こちらは1960年制作の フランス映画 フランス です。 (93分)

 

 

「死刑台のエレベーター」 や、以前ご紹介した「ブラック・ムーン」のルイ・マル

 

監督の代表作の一本です。

 

 

 

 

  十歳の少女ザジはお母さんと一緒に生れて初めてパリにやって来ました。 お母さんはザジを弟のガブリエルにあずけると、恋人とさっさと消えてしまいました。 ガブリエル叔父さんはナイト・クラブの芸人でした。 パリにあこがれるザジの目的は地下鉄に乗ること何と、その地下鉄がストライキでザジは大ショック。叔父さんの家に着いたザジを美しい叔母さんのアルベルチーヌが出迎えてくれました

 

 

 

 

翌朝、ザジは一人で部屋を抜け出し、一階で酒場を経営する家主の目を盗んで地下鉄の乗り場に向かいましたが、門は閉っていました。 泣き出したザジのそばに一人の得体の知れない男が近寄ってきました。 ザジはその男とノミの市に行ったり、レストランに入ったり、パリの町を楽しみます。 用がなくなるとさっさと家へ逃げこみました 後を追ってきた男は叔母さんに一目惚れしますが、叔父さんにつまみ出されてしまいます。 叔父さんはザジを連れてエッフェル塔に観光へ出かけます。 二人は観光客に混じってエッフェル塔に登ってパリの町を見下ろします。 帰り道、叔父さんは謎の未亡人に追いかけられ、ザジは警官達とその後を追いかけました。 

 

 

 

 

夜、叔父さんの舞台が終わり、友人のタクシー運転手の結婚が決まったお祝いが酒場で開かれました。 未亡人やクラブの踊り子やご近所さんと大勢の大人達が集まってお祝いが始まり、酒場は大騒ぎになります。 ザジは疲れて眠りこんでしまいました。乱闘が始まりひっちゃかめっちゃかな店内。 叔父さんはザジを抱えて地下鉄に避難します。 その途端、ストの解決した地下鉄が動き出しました。ザジは眠ったままでした 翌朝 ザジは約束の時間に叔母さんと母の待つ駅に行きました。 お母さんはザジに地下鉄に乗った?と聞きますが、ザジはただ 「乗らない、私 年とったわ」 と答えました。 それがパリヘきた彼女の感想でした、、。

 

 


 

 

数年に一度観返すタイプの本作、あまりにも有名で今さら何を紹介するまでも無い作品ではありますが、お話は至ってシンプル。 10歳の少女ザジがパリで体験する二日間を、彼女の視点で覗いているような、摩訶不思議で異様な大人達の世界をスラプスティックな手法で映像化した実験的な作品です。コマ送りや早回し、スローモーションやカット編集等、映画のあらゆる手法を使ってパリの町を舞台に駆け回るザジが、映画という枠をぶち壊して遊んでいるような映画です。

 

 

 

 

チャップリンやトムとジェリーのようなドタバタ演出がありながら、ザジの口から出るセリフはとってもシビアで皮肉交じり。 映像はポップで楽し気で子供向け映画に見えるのにザジが大人に向かって発する内容には、ロリコンやホモなんていう言葉が飛び出します。そこからも分かるように、演出自体は子供っぽいこの作品なのに、鑑賞対象は大人向けに作られているという、ルイ・マルの皮肉も感じさせる映画です。 あの問題作である「ブラック・ムーン」と表裏一体の作品なのでは?と勘ぐってしまいます。

 

 

 

 

これといったストーリーもなく、かなりはっちゃけた作品のため、テンポが合わない人にはちょっとしんどく感じる部分があるかも知れません。 しかし、その中でも後半、夜になったパリをそれぞれのキャラクター達が酒場に集まって来るシークエンスの演出は、「死刑台のエレベーター」を思わせる巧みさが覗く場面があったりします 同時にザジのアクションだけの場面も多く、そこに流れる音楽も素敵です。

 

 

 

 

ストーリー自体にはまらなくても、この時代のパリという町や通り、そこに映されている人達の様子や恰好を見ているだけでも楽しくなる作品です。前髪パッツンヘアーにすきっ歯、オレンジのニット姿のザジの生意気な可愛らしさは、ある種映画史の女の子のアイコン的な存在感でございます。 少女の目から見た大人の世界を、大人に向けて投げ返したようなおかしな大人向け映画。そうそう、本作でザジの叔父さんを演じているフィリップ・ノワレは、あの「ニュー・シネマ・パラダイス」でアルフレードを演じているお方。若い彼を観るのも面白いかも、です。

 

 

 

 

映画の技法を駆使して映画自体を遊び場にしているルイ・マル監督と、映画の中でパリの町を縦横無尽に走り回るザジ、その両者の楽しみが込められたこの映画を観て、こちらも幸せな気分になる、ザジの「お洒落なパリと大人探訪」映画となっていますので、機会があれば一度ご覧になってみて下さいませ、です。

 

では、また次回ですよ~! パー

 

 

 

 

 

 

 

ザジ好きの大貫妙子さんの曲。彼女自身の曲はNGでしたのでこちらのカバーを 音譜