第2次大戦後のフランスで生まれた文学界の潮流「ヌーヴォー・ロマン」の代表的作家として知られるアラン・ロブ=グリエが監督・脚本を手がけ、そのセンセーショナルな内容からヨーロッパ各地で上映禁止となった問題作

 

 

 

 

 

 

         - GLISSEMENTS PROGRESSIFS DU PLAISIR -  

                                                             監督 脚本 アラン・ロブ=グリエ

 

          出演 アニセー・アルヴィナ、ジャン=ルイ・トランティニャン 他

 

こちらは1974年制作の フランス映画 フランス です。(106分)

 

 

 

 

  アリスは、同居しているノラがハサミで心臓を刺されて殺されたことから、警察から尋問を受けます。無実を主張し、外部から侵入した男の犯行と主張しますが聞き入れられず、感化院に入れられます。

 

 

 

 

感化院では、シスター・牧師・弁護士・治安判事それぞれと会話し、アリスの過去やノラとの関係、事件の時の様子などを語りますが、強気で背徳的かつ無垢な受け答えに誰もまともに対応できず腹を立てるという状況でした。


 

 

 

新たに訪れた弁護士は、ノラとそっくりでした。会話を重ねるうちに親しくなっていき、また地下牢には罰を受けた収容者が、裸で虐待されていることを知ります。その倒錯の虐待に性欲を刺激された弁護士は、地下牢に滞在するようになっていきます。

 

 

 

 

また、アリスを教化しようとした牧師は、アリスの背徳的な言葉に逃げ惑う始末でした。そして、関係者が集まり事件を再現することになります。自分の部屋に戻ったアリスと弁護士は、他の参加者を待つ間に二人で再現を始めます。

 

 

 

 

その日ノラにしたようにベッドに弁護士を縛り付けるアリス。弁護士はすっかりM性が開花し、光悦の表情を迎えています。しかしアリスは誤って瓶の破片で弁護士の手首を切って失血死させてしまい、そこに警察が真犯人が見つかったので、再現検証は中止になったと知らせに来ましたが、現場を見て、ああ、また最初からやり直しだと嘆くのでした。

 

 

 

 

「快楽の漸進的横滑り」というフランス語の直訳なのか、はたまた斬新な日本語オリジナルタイトルなのかは謎ですが(どうやら和訳っぽいですね)、その摩訶不思議なタイトルに惹かれて鑑賞してみた本作。その内容はタイトル通り、一筋縄ではいかない不条理で斬新なアートフィルムでした。

 

 

 

 

とはいえ分かりやすいストーリーは一応存在していて、一人の女性が殺された事でルームメイトのアリスが殺人の容疑者として逮捕されます。しかし彼女は殺人を否定、いったい誰が女性を殺したのか?というミステリーを軸に映画は進んでいくのですが、物語としてのお話は一向に進展せず、正に横滑りしていきます。

 

 

 

 

アリスが収監されている白い部屋に検事や修道女、弁護士という人達が訪れては彼女の話を聞くのですが、その会話は成立せず時に詩的なものに終始します。 会話同様に

画面には女性の裸体や割れたガラス瓶、タマゴ、ハサミ、真っ赤な血や青い靴といった物語を象徴する様々なメタファーとイメージが唐突に表れては消えていくのです。

 

 

 

 

その中でも特徴的なのは主人公のアリスを筆頭に、登場する女性たちが大胆なヌードを披露していて映像としてのインパクトがあります。 時にレズビアンやSMを思わせる行為やボディペインティングといったポルノまがいの描写は下品になりがちですがこの作品の中では何故かいやらしさとは違った別の感情が湧いてくるから不思議です

 

 

 

 

物語性がほぼ無い為、観ている方の興味が途切れると退屈に感じてしまうタイプの映画かも知れませんが、私は最後まで面白く観れました。 作品のつじつまや意味を考察しようとすればする程危うい袋小路にはまってしまいそうで、途中から理解しようとするのをやめたから楽しめたのかも知れませんが、そんな映画も時には良いのでは?です。

 

 

 

 

女性の裸体、光るハサミ、流れる血、青い海と断崖、骨組みだけのベッドにマネキンどこかATGを思わせるアートな映像と詩的な言葉。 反復されるイメージの途中で「誰が喜ぶの? さあ、たぶん観客では?」 というメタ的なセリフに笑ってしまう私。 ラストの「やれやれ 最初からまたやり直しだ」 の言葉はこの映画自体を象徴しているよう

 

 

 

工場の機械音のような音楽に乗せられた無機質な映像はまるでインスタレーションを見ているような感覚にもなって、感情や意味を理解しようとしている観客を突き放して喜んでいる監督の笑い顔が浮かんできます。ラストの「やれやれ 最初からまたやり直しだ」 の言葉はこの映画文法を象徴しているようにも感じました。

 

 

 

 

まるで魔女のような主人公のアリス像は、監督自身の持つ女性への憧れや恐怖、フェティシズムを象徴したような存在で、そこから生まれる妄想とイメージを爆発させてその断片を再びつなぎ合わせて映画という形にしたんじゃないかと思ってしまう映像作品です。

 

 

 

 

このアリスを演じているのが、〇曜ロードショー等で度々放送された映画、「フレンズ〜ポールとミシェル」 のアニセー・アルビナさんで、ある世代にはとっても印象深く覚えている方もいらっしゃるのでは? これを見よ!という程見事なヌードを披露しています。

 

 

 

 

他にも「男と女」「暗殺の森」のジャン=ルイ・トランティニャンが奇妙な演技で刑事を演じていたり、「007/ムーンレイカー」等の曲者俳優マイケル・ロンズデールが検事役で足を舐めたりしておられます。 そればかりかあのイザベル・ユペールも修道女役でちょこっと出演されておりました。 やはりヌードありの役でしたが、、。

 

 

 

 

このアバンギャルドでインモラルな映画故に好みは分かれる作品ではありますが、ストーリーは別としてその映像と表現方法のイメージはいつまでも脳裏に焼き付く映画だと思いますので、ちょっと普段では観れない作品を鑑賞したいという方には刺激になる映画だと思いますので、この機会にでもチャレンジしてみてはいかがでしょうか、です。

 

 

では、また次回ですよ~! パー