19世紀末の知的上流階級に属する一家の、病床の娘を中心にした家族間の相克を描​​​​​​いたアカデミー撮影賞を受賞した、イングマール・ベルイマン作品

 

 

 

 

 

 

 

 

  - VISKNINGAR OCH ROP -  監督 脚本 イングマール・ベルイマン

 

出演 イングリッド・チューリン、ハリエット・アンデルセン、リヴ・ウルマン 他

 

こちらは1973年制作の スウェーデン映画  です。(91分)

 

 

「仮面/ペルソナ」 「第七の封印」 の イングマール・ベルイマン監督作品です。 こ

れまで監督の作品は前に書いた2作位しか観ていない私ですが、今回はこのタイトル

からして重々しい 「叫びとささやき」 を鑑賞してみました。

 

 

 

 

  舞台は19世紀末のスウェーデン貴族の大邸宅 3姉妹の次女アグネスは痛みと

共に目覚めます。 彼女は子宮がんを患い、毎日痛みに耐えながら毎日を送っていました。 ベッドの上で20年前に亡くなった母親の想いでを回想するアグネス。 そんな彼女の事を、姉のカーリンと妹のマリア​​​、そして召使のアンナが交代で看病していました。医師が訪れてアグネスを診ますが、彼女の命はもう長くない事を姉のカーリンに告げます。 邸宅を去ろうとする医師を妹のマリアが引き留めます。 彼女には夫と娘がいましたが、以前その医師と愛人関係にありました。 その当時を懐かしむマリア。 しかし、医師は時と共に失われた彼女の美しさを嘆くのでした。 

 

 

 

 

翌日帰宅したマリーアの夫は、彼女の顔を見ると書斎へ向かい腹にナイフを刺しますある日、アグネスは苦しみの中「誰か助けて」と叫び召使のマリアの介護の中息をひきとります。 姉妹はたじろぎ傍観しているだけでした。姉のカーリン以前夫と食事をした席の事を思い出していました。 黙々と食事をする夫、彼女はグラスを倒して割ってしまいます。 チラリと目をやった夫は食事を済ませて席を立ちます。 残されたカーリンは「何もかも嘘ばかり」と呟きます。 寝室に入る前、彼女は陰部に割れたグラスの破片を差し込み、夫の前でその血の付いた手で顔を拭います。

 

 

 

 

静まり返った屋敷で、妹のマリアは姉のカーリンと姉妹として絆を深めようと試みますが彼女から強く拒否されてしまいます。 その後、落ち着きを取り戻したカーリンはマリアに態度を詫びて、久しぶりの姉妹の会話をするのでした。その夜、子供の泣き声のような声を聞くアンナ。 声の主は亡くなったアグネスでした。涙をこぼす遺体のアグネスは、アンナに「死んだのにみんなが心配で眠れない」と言い、アンナに姉妹を部屋に呼んでもらうのですが、、。 というお話です。

 

 

 

 

物語は全て邸宅の中が舞台となって進んでいきます。 深紅のベルヴェットが貼られたような室内の装飾と、姉妹が身にまとう白や黒の衣装のコントラストが刺激的で美しい映像の作品です。 見方によっては姉妹を大きく包む胎盤のようでもあります。美しい俯瞰の映像に反して、女性達を写すカメラはかなりのクローズアップで捉えられています。顔の微かな表情の変化や、少しの目線の動きによって、その被写体の人物の偽りのない内面を映し撮っています。時に赤い照明であぶり出されるその表情にはホラー映画のような恐怖を感じる程です。

 

 

 

 

物語が進む中へ印象的な回想が挟まれる構成になっていて、その場面転換も 「赤」 が画面を覆う事で次の場面、物語へと繋いでいます。 この強烈で印象的な 「赤」 という色がこの映画に強く 「血」 というものをイメージさせます。血縁の姉妹それぞれの苦悩、それゆえの核筆と嫉妬。 夫婦に至っては表面的で嘘で繋がっているだけの関係で、姉妹は誰一人として愛というものを得られず、渇望して生きているだけの虚しい存在です。 最終的に姉妹はバラバラになり、屋敷も去る事になりますが、そこに残った全く血縁関係のない召使のアンナだけがアグネスを愛し、無償の愛を持った存在として描かれています。 アグネスに寄り添い、寝かしつける姿はまるで聖母マリアのようで、愛というものの前には 親や姉妹という関係は無意味だと言われているようです。

 

 

 

 

愛という得体の知れない不確かなものの恐ろしさと寛大さが描かれたような本作。通常のエンターテインメント作品では使わないような脳の部分を、コツコツと突っつかれているような気になるベルイマン作品。 時にはこのような作品を観て意識をリセットさせるのも刺激になって良いのではないでしょうか?「愛とはなんと無慈悲なものなのでしょうか?」 などとと考えてしまうような本作、機会がありましたら一度ご覧になって下さいませ、です。

 

では、また次回ですよ~! パー