昭和二十年の夏、ある貧しい山村に米軍機が墜落。 村人たちの山狩りにより、搭乗者である黒人兵が捕まった。 地主の鷹野一正は、黒人兵の足首を鉄の鎖で固定し、村で“飼育”することにした、、。

 

 

 

 

 

 

                       - 飼育 -    監督 大島渚  原作 大江健三郎

 

 出演 三國連太郎、ヒュー・ハード、浜村純、戸浦六宏、加藤嘉、小山明子 他

 

こちらは1961年制作の 日本映画 日本 です。(105分)

 

 

大江健三郎が1958年に発表した短編小説 「飼育」 を原作に、大島渚が大宝株式会社の下で撮ったものが本作になります。原作では、撃墜され捕らわれた黒人兵と、その世話をする事になった少年との交流が物語の軸となっているようですが、本作では捕らわれた黒人兵士が村にやって来た事によって起こる村の人々の混乱が中心に描かれています。

 

 

 

 

  昭和二十年の初夏。 或る山奥の山村へ米軍の飛行機が落ちます。百姓達の山狩りによってパラシュートで脱出して一人生き残った黒人兵が捕まります。 村の百姓達は「役場に差し出しせば金になる、表彰される、名誉だ」 と相談し、黒人兵は両足首に猪罠の鉄鎖をはめられたまま、本家である鷹野一正の提案で、分家の塚田に世話をするように頼み、黒人兵はそのまま納屋へ閉じこめられる事になります。役場の指令があるまで百姓達は、輪番制で黒人兵を飼うことになりました。 その影響からか、村では村では色々な問題が発生します。世話役の一人・小久保余一の息子の次郎が出兵前夜に一正の姪である幹子を乱暴したまま行方不明になったり、東京から疎開していた石井弘子が一正に襲われたりと、徐々に不穏な空気が村に充満していきます。

 

 

 

 

そんな中でも子供達は クロンボ が珍らしくてしょうがありません。 いつも納屋にやって来ては黒人兵をみつめていました。 日が経つに連れ、次第に子供達と黒人兵は親しさを持つようになっていき、田んぼで遊んだりする仲になっていました。 ある日、次郎の弟の八郎は、兄が居なくなったのは幹子のせいだと言い始め幹子を責めたてます。 見かねた一正は八郎を一晩庭にの柱に縛り付けます。 翌朝縄を解かれた八郎は怒りをクロンボに向け殺そうとします。 その最中そばにいた弘子の娘が崖から落ちて死んでしまいます。

 

 

 

 

悲しみに暮れた弘子の怒りはクロンボに向かい、納屋の扉を破戒しようとします。 その行動がきっかけとなり、百姓達のうっぷんと怒りが爆発する事になります。 村にクロンボが来た事が全ての元凶だ、厄病神だと言い始めます。 子供達はクロンボを山へ逃がそうとしまうが、既に大人達の勢いは収まる事はなく、納屋の窓から一正が狙った猟銃が覗いていたのでした、、。本作では原作にあるような黒人兵と少年の交流という物語を、あえて避けた描き方をしています。 この作品での黒人兵の扱いは極めて薄く、作中では納屋の中で飼われているだけの存在で、辛うじて子供達と田んぼで遊んでいる場面程度しか描写されません。あくまで敵国の兵士であり嫌々飼い飼われている村にとってのお荷物という扱いの存在のままです

 

 

 

 

映画で描かれている事は、そんな村という狭いコミュニティーに、招かれざる客としてやって来た異分子によって、統制されていたはずの村が、不安という恐怖によって一気に崩壊へと向かうコミュニティーの弱さが描かれています。同時に日本の村それぞれに存在する因習や、土着的な思想の恐ろしさと理不尽さ、損得勘定、名誉、階級制度、といった人間のいやらしさが描かれています。特にラストでは、本家を囲んで全てを無かった事に取り決め、手打ちをする場面にはゾッとする恐ろしさを感じます。 そして、それはそれとして、秋の祭りの話が始まるのですその土地と身分でしか生きる術がない百姓達のさだめと悲しみ、痛みがひしひしと伝わってくる印象的で残酷な場面でした。

 

 

 

 

そして本作で最も驚いたのが映像の圧倒的な説得力と、そこに映される演者達の存在感です。 大島渚監督って、こんなに綺麗な映像を撮る人だったのか、という位美しくリアルな映像で、演者も子役まで見事にその時代を見事に再現しています。なかでも三國連太郎の髪型はなかなかのインパクトがあり、方言や喋り口調も独特です難を言えば鑑賞するのに言葉が上手く聞き取れない所が多々ある事でしょうか、、?そんな三國連太郎に引けをとらないのが片足を戦争で失った設定の戸浦六宏でして、作品中、ずっと義足を付けたまま歩き回って演技されていて、これまた驚きます。原作の意図とは多少違った内容ではありますが、村というミニマムな単位で日本の社会を描いたような毒のある映画に仕上がっておりますので、機会があれば一度ご覧になってみて下さいませ、です。

 

では、また次回ですよ~! パー