1991年に旗揚げした障害者プロレス団体 「ドッグレッグス」。 その活動を、スター選手・サンボ慎太郎を中心に5年にわたって取材したドキュメンタリー映画です。

 

 

 

 

 

 

   ー DOGLEGS -  監督 撮影  ヒース・カズンズ

 

 出演 サンボ慎太郎、アンチテーゼ北島、中嶋有木、ミセスラマン、愛人 他

 

こちらは2015年制作の アメリカ アメリカ 日本 日本 の合作映画です。(89分)

 

障害者プロレス団体 「ドッグレッグス」。 その活動を5年に渡って取材したドキュメンタリー作品の本作は、団体の旗揚げから20年の間、スター選手として一線で活躍してきたサンボ慎太郎が、引退を賭けた試合に臨む軌跡を中心に追いながら、障害者プロレスに関わる様々な立場の人間模様が描かれています。

 

 

 

 

  清掃員の仕事をしながら、設立当初から「ドッグレッグス」のスター選手として輝いてきたサンボ慎太郎は、普通の生活を夢見て引退を考えます。 しかし、それに立ちふさがるのが団体の設立者で慎太郎の永遠のライバル、そして 「20 年間障害者を打ちのめし続けてきた健常者」 と言われる北島行徳こと、アンチテーゼ北島でした。
「北島戦を最後に引退したい」 という慎太郎に対して、北島は「勝者だけが引退できる」という条件を突きつけるのでした。 

もう一人の「ドッグレッグス」レギュラーで、女装癖のある伝説のレスラー・愛人(ラマン)彼にはほぼ全身的な麻痺があり、妻でありレスラーとしても活躍する、健常者のミセス愛人(ミセスラマン)と息子のプチ愛人(プチラマン)の反対にも関わらず、症状を酒でごまかしていたため、重度のアルコール中毒にもなっていました。 「ドッグレッグス」のために生き、「俺はリングの上で死ぬんだ」と呟くラマン。そんな彼を見つめるミセスラマンは、「リングの上で死ぬんでしょ?」 と彼を叱咤激励します。 家族だからこその強い信頼関係と意志の強さがあってこその強烈な言葉です

 

 

 

 

そんなラマンを介護する中嶋も、ガンとうつ病を抱えながらリングに上がるレスラーの一人でした。 そんな見た目ですぐ分かる障害者や見た目は普通に見える障害者、そして健常者等、個性的な面々が続々と登場し、試合と日常生活、時には愛の告白といった人生模様を垣間見る事になります。

この「ドッグレッグス」というプロレス団体の特殊な所は、障害者同士の戦いだけでなく健常者対障害者のカードもある所です。 体格の面で明らかにハンデがある障害者と健常者の戦いは、当然一方的なものになりがちで、健常者が障害者を一方的に攻め立てる凄惨な展開になったりします。 普通に考えれば勝てるわけないのですが、それでもサンボ慎太郎はリング上で健常者達と20年間対峙し続けてきたというから驚きです。

 

 

 

 

そして本作では作為的に何かを盛り上げようといったものを感じない作りに徹しています。 「障害者の一生懸命な姿」を観て感動して欲しい、といった作り手側の意識は意外とフラッとで、そういったよこしまな気持ちを越えた、「そこに存在する人達」のみのそのままが映像として記録されています。

ただ、個人的に残念に思ったのは、全ての試合がダイジェスト映像にカットされている所でした。 特に最後の引退を賭けた試合は、そこに全てが集約された重要なものである筈なのに、大まかな扱いになっています。 格闘技の短い試合は全ての時間に意味があるもので、人生を賭けたその試合を短く編集して観せた意味が理解出来ませんでした。どんな流れでそこへたどり着いたのか、ちゃんと見届けたかったのですがね、、。本作の中の障害者、健常者、そしてその家族と関係者。 それぞれの人達がそれぞれの立場で一生懸命に生きている事は間違いありません。

 

 

 

 

これを観た人が、この障害者プロレスを見世物、エンターテインメント、可哀そう、と様々に観る事も自由ですし、それで良いと思います。 ただ、障害者と健常者というくくりを越えた圧倒的な 「凄み」 が本作の中に観る事が出来る作品なのは間違いありません。

「本気でかかってこいよ」 「本気で応えるから」 こんな言葉が日常で発せられる世界に生きている人達の生き様がここに映されているのでした。文字にするには、あまりにも軽薄になってしまう作品ですので、機会があれば一度ご覧になって、ご自身で感じ、考えてみてはいかがでしょうか?

 

では、また次回ですよ~! パー