検死官が運ばれた死体を調べ、“体の特徴 刺青あり”と報告した。 竹田明夫の死体だった。１５歳の時、遊興費欲しさに強盗殺人事件を引き起こした明夫は保護監察処分取り消しになった２０歳の時 “３０歳になるまでにドデカイ事をやったる！” と誓った。 それまでの生活を一変させるためにパーマをかけ、胸にボタンの刺青を入れキャバレーのボーイになったが、、。
こちらは１９８２年制作の 日本映画 
です。 （１０７分）
１９７９年に起きた 三菱銀行人質事件 の犯人、梅川昭美 をモデルにした作品です。
当時まだ子供心なりにインパクトが強烈だった事件で、新聞等の記事を見た記憶があ
ります。 本作を観たのもかなり前で、良い年齢になった今、観返したくなってレン
タルしてみました。 この映画って、実際の事件から僅か３年後に映画化されていた事
に驚きましたが、かの ATGが製作していたんですね。 これにGOを出せた時代が羨ま
しいです。
本作では犯人や銀行名に架空の名前が付けられていますが、大まかな事柄は一
応、事実に沿って描かれています。 
物語は 薄暗い病院の通路をストレッチャーに乗せられた男の映像で始まります。 男の
胸にはさっきまで被っていたであろう帽子が乗せられており、既に息絶えていると思
われます。 検死台に乗せられた男の名は 竹田明夫と言い、血だらけの胸には刺青が彫
られていました。 映画はこの竹田明夫がここに至るまでの人生の軌跡とそれに関わ
った人間模様が綴られます。
貧しく、複雑な環境で育った明夫は１５歳の時、遊興費欲しさに強盗殺人事件を引き
起こし鑑別所へ、保護監察処分取り消しになった２０歳を機に 「３０歳になるまでに
ドデカイ事をやったる！」 と刺青を入れ、とりあえずキャバレーのボーイになります
ここでナンバーワンホステスの三千代と運命的な出会いをします。 彼女を強引に口説
き、同棲生活を始めるますが、口ばかりで暴力を振るう明夫についていけなくなり家
を出ます。自分の思い描くようにならない人生、「３０歳になるまでにドデカイ事
を、、」 田舎町暮らす母親のためにも男をあげなければならないと思った明夫は、手
っ取り早く大金を手に出来る銀行強盗を企てるのでしたが、、。 というお話で、実際
の事件の様子はほとんど描かれず、事件を起こすまでの明夫の行動が丹念に描かれて
います。
（実際の梅川昭美）
特に大きく描写されるのが、田舎で暮らす母親の明夫に対する溺愛ぶりと、その明夫
が執拗に執着する三千代との愛憎劇が対比して描かれています。 この主人公である明
夫の妙な几帳面さが、事件にも三千代にも影響して、最終的に最悪な結果となってし
まうのでした。 この明夫の根拠の無い強がりと虚栄心が周囲を巻き込み、現実との
ギャップを埋めようともがき、自分自身を追い込んだあまりに起こしてしまったこの
事件は、彼の人生の帳尻合わせに思えて仕方ありません。 その中途半端な明夫をそ
のまま表しているような惨めなお飾りのTATTOO。
この好きな女にも暴力を振るい、極道にもなれない、情けない男を 宇崎竜童が見事に
演じていて、独特な存在感を生みだしています。 彼が演じる事で明夫という嫌な男が
時折、人間的で愛らしく見えてくるのが不思議です。 書店の 原田芳雄 演じる主人に
「やっぱり大藪春彦が最高だ」 と語る場面は妙に記憶に残っていました。 その影響
で明夫の生活が松田優作化していく場面には笑ってしまった私です。 
そんな明夫の彼女を演じる高橋恵子の清楚風でありながらも妖艶な空気感、ただただ
美しかったです。 チキンラーメンはお湯を注いで食べたいですね。 
この事件をリアルタイムで体感した方には当時を思い出してザワザワすると思います
し事件を知らない方でも、そこへ行きつくしかない男の、やるせないドラマとしてご
覧になっても見応えある作品ですし、ねじれた恋愛映画としてもご覧いただけるかと
思います。
「３０までにドカンと何か成し遂げたい」 と焦る男が破綻していく物語。 ダサいパー
マが象徴する、昭和臭プンプンの悲しい男の映画となっております。先の原田芳雄の
他、植木等、泉谷しげる といった方々も出演されております。「世界は俺が回してん
ねん！」 このドラマの明夫と、その後、銀行内で実際に行われた残虐な行為をする 梅
川昭美 との間には、かなりのギャップを感じてしまいますが、そこへ至ってしまった
人間の恐ろしさと弱さを紐解く作品としてご覧いただけると思いますので、機会があ
れば一度ご鑑賞してみて下さいませ、です。 
では、また次回ですよ～！ 
ダウン・タウン・ブギウギ・バンドの好きな曲で作ってみました。 よろしければです。 