殺人鬼レクター博士を投獄した際に精神バランスを崩して、家族とともにマイアミで静かに暮らしていた異常犯罪捜査のプロ、グレアム。そんな彼のもとに一家惨殺事件の報が届く。 裕福な家庭を残忍な手口で崩壊させる異常で難解な犯人像に苦戦を強いられた彼は、その心理を探るため、刑務所に収監されているレクターにアドバイスを求めるのだが、、。
こちらは1986年制作の アメリカ映画 です。(120分)
映画 「羊たちの沈黙」 の原作者、トマス・ハリスの小説 「レッド・ドラゴン」の最
初の映画化作品で、公開当時は 「刑事グラハム/凍りついた欲望」 の邦題で上映され
た本作。後に「羊たちの沈黙」がヒットしてシリーズ化され、本作もそのシリーズ3
作目としてリメイクされました。その為、やや影の薄くなった感のある本作ですが、
ハンニバル・レクターが初登場した1作目でもあり、「ヒート」等のマイケル・マン
の監督作品でもあります。
かなり昔にビデオで観た記憶があるのですが、いつものようにほとんど憶えていなか
ったのと、マイケル・マンの作品だったのを思い出してレンタルしてみました。
ハンニバル・レクターを逮捕したFBI捜査官のグラハムは、精神的ダメージを
負って一線から退き、家族とマイアミで暮らしていました。 そこへ昔の同僚が訪ねて
来ます。猟奇的な人間による、満月の夜に発生した一家惨殺事件の捜査を依頼されま
す。 この異常な惨殺の陰にひそむ犯人の心理を知るため、グラハムは刑務所にレクタ
ー博士を訪ねます。事件のトラウマとなったレクターとの面会に動揺しながらも、捜
査協力を依頼します。
思うように捜査が進展しない中、二流雑誌タトラーの記者ラウンズがグラハムとレク
ターのことを記事にし、それがきっかけで、犯人とレクターは特殊な方法で連絡をと
るようになります。 犯人は見せしめにラウンズを火あぶりにして殺害。 グラハムは2
つの被害家族をつなぐ共通点がどちらも8ミリフィルムにある事に気付くのでしたが
というストーリーです。
本作では残念ながらレクター博士の登場場面と活躍はあまりありません。 話の中心は
レクター博士から負の影響を受けてしまったグラハムが、自身に潜むダークサイドに
苦しみながら、今作でも殺人による変身を望む犯人ダラハイドとの攻防が描かれます
この捕まえる側のグラハムもかなり病んでいるようで、「きさまは何処にいるんだ、
絶対に捕まえてやるぜ!」的な内なる言葉を、人混みの中でも声に出していってしま
うようなヤバさであります。
対する犯人のダラハイドもなかなかのインパクトのあるルックス。 ストッキングを顔
半分に被った見た目は嫌でも恐怖を感じます。 反面、彼の日常も描かれていて、職場
で盲目の女性に出会い、やっと幸せを掴めそうになる悲恋のドラマに、つい共感を呼
び、悲しみを誘われてしまいます。 大きな身体に傷を負った顔、幼い頃に虐待を受け
ていたというダラハイドの人生は、嫌でもフランケンシュタインの怪物を連想させる
悲壮感が漂っていて、善と悪のもつ悲しみが痛く、切なく描かれています。
ドラマの内容自体は良く出来たサスペンススリラーという感じの作品ではありますが
とにかくマイケル・マン監督の独特の美意識による映像が見所のひとつでもあります。
グラハムが犯人めがけて窓ガラスを割りながら突っこんでくるカットや、エンディン
グの家族揃っての海岸のショット等、若干 「マイアミ・バイス」 の残り香漂う80s
的な、今となっては若干ダサめ?なショットに時代を感じますが、そんなマイケル・
マン独特の美意識に支えられた作品でもあります。
病んだ男達の壮絶なドラマに仕上がっておりますので、機会があれば一度ご覧になっ
てみて下さいませ、です。
では、また次回ですよ~!