映画撮影のため南米ペルーへやって来たスタントマンのカンザス。撮影後ドラッグに溺れるようになった彼は、映画作りを模した村で奇妙な儀式に巻き込まれ、虚構と現実の境界を超えた世界へと突入していく

 

 

 

 

 

 

こちらは1971年制作の アメリカ映画 アメリカ です。(108分)

 

「イージー・ライダー」(1967)を監督した デニス・ホッパー の監督主演による

 

2作目となる本作ですがベネチア国際映画祭で審査員特別賞を受賞したにも関わらず

 

内容の難解さから小規模の公開で早々と打ち切りになってしまったという不遇な作品

 

です。 長い間商品化されていませんでしたが、この度T〇UTAYAの発掘良品から

 

レンタルが開始されましたので、早速借りてみた次第です。

 

 

 

 

  さてさて内容をご紹介させて頂くと。 

 

ペルーのクスコにある小さな村。 ハリウッドからやってきた監督一行は、ビリー・

 

ザ・キッドの生涯をもとにした西部劇を撮影していました。 初めて映画の撮影現場を

 

見る村人たちは、暴力に溢れた撮影風景を恐怖と好奇に満ちた目で眺めていました。 

 

 

 

 

映画のスタントマンのカンザスも撮影に参加していましたが、ハリウッドの俗っぽさ

 

を嫌う彼は、撮影隊の乱痴気騒ぎをうんざりとしていました。 映画の撮影が終わり、

 

スタッフが帰った後も村に残ったカンザスは、現地で知り合ったペルー人女性マリア

 

と暮らし始め、自然のなかで彼女と過ごす幸福に酔いしれていました。 しかし、金塊

 

探しに妄執する友人ネヴィルを介して知り合った裕福なアメリカ人、アンダーソン夫

 

人らと戯れるうち、カンザスは徐々に酒とドラッグの世界へはまり込んでいきます。 

 

 

 

 

一方、アメリカ人たちの撮影に感化された村人たちは、自分たちの手で 本物の映画 を

 

作ろうと村に集結していました。 彼らは竹で模ったカメラやマイクを手に撮影風景を

 

模倣しますが、演技という虚構を理解しない彼等は、暴力場面を実際に殴る等、すべ

 

ての行為は現実に行って撮影をつづけていました。 それを見たカンザスは、彼等に映

 

像のトリックを伝授しますが、リアルに見えないと失笑されてしまいます。

 

 


 

 

やがてドラッグの見せる幻覚に酩酊していたカンザスは、村人の作る 本物の映画で処

 

刑される白人役として担ぎ出され、奇妙で不条理な世界に入り込んでいくのでした

 

感想としては、確かに当時としては難解な作品である事は間違いありませんし、普通

 

に物語を追って楽しむ映画とも違う作品です。 ただ、現在のように多様化した映画や

 

映像作家の作品を観る機会が増えた現在なら、そこそこ評価されて見応えのある作品

 

として一般の方でも鑑賞できる映画ではないでしょうか?

 

 

 

 

ロケーションのペルーという土地の独特な文化的な魅力、往年西部劇のノスタルジー

 

映画の撮影現場という特殊な空間。 映画という虚構と、それをまた模倣する村人、


日常と非日常と、現実とドラッグ、 様々な実と空の世界がメタフィクション的な構

 

造で描かれています。それらを全てひっくるめて、「ラストムービー」 という映画に

 

仕上げたデニス・ホッパーのパワーと才気が溢れた作品です。

 

 

 

 

物語同様、編集も独特で場面が前後したり、ジャンプカットが多用されていたりしま

 

す。数か所にわざわざ「シーン紛失」というカットが入ったり、やたらと美しい叙情

 

的な映像が入ったりと、遊びとアートフィルムが混在しています。 これにはヨーロッ

 

パのゴダール等の作家の影響が多々見られますが、それ以上にドラッギーな危うさを

 

感じます。様々な難しい考察が出来る映像作品ですが、個人的には デニス・ホッパー

 

の映画に対する愛と格闘が詰め込まれた 「デニス・ホッパーによるデニス・ホッパー

 

のためのデニス・ホッパー映画」 だとつくづく感じた作品でございました。

 

なかなかお店でサッと手にするタイプの作品ではありませんが、他では観る事の出来

 

ない映像世界を体験出来ると思いますので機会があれば一度ご覧になってみて下さい

 

では、また次回ですよ~!  パー