1996年のある夜、人里離れた建物に集まった22人のダンサーたち。 有名振付家の呼びかけで選ばれた彼らは、アメリカ公演のための最終リハーサルをおこなっていた。激しいリハーサルを終えて、ダンサーたちの打ち上げパーティがスタートするがアルコールとLSDにより、ダンサーたちは次第にトランス状態へと堕ちていく、、

 

 

 

 

 

 

こちらは2018年制作の フランスフランス ベルギー による合作映画です(97分)

 

以前こちらで紹介した 「エンター・ザ・ボイド」 や、悪名高き作品 「アレックス」 

 

の監督ギャスパー・ノエ が撮ったミュージカル・ホラー作品です。

 

 

 

 

  女性が軽装で雪の中に倒れ込む場面から始まる本作は、ここに至るまでの物語

 

がどのように起きたのかを、観客は同時体験させられる事になります。

 

「ご覧になった映画は96年冬の実話に基づきます」 というクレジットが表示され、

 

通常はエンディングに流されるスタッフロールから始まります。 映画の文法を崩す

 

ノエのクセの強さも魅力のひとつです。

 

 

 

 

「存在は幻」 のタイトルが表示され、ダンサー一人一人の面接ビデオがテレビモニタ

 

ーに映されます。 このモニターの横に積み重ねられたビデオがあり、そこには「サス

 

ペリア」「ソドムの市」「ポゼッション」「切腹」といった作品が並んでいて、ノエ

 

自身が好きな作品と同時に、これから起こる惨劇を比喩しているようでもあります。 

 

ダンサー達のインタビューが終わり。 雪に閉ざされた建物に舞台は移ります。

 

 

 

 

「誇りを持って世に出すフランス映画」 と、皮肉が込められたタイトル表示が終わる

 

と同時に圧巻のワンショットのダンスシーンが始まります。 通常のミュージカルと

 

は違う、真新しいストリート系のダンスについ見入ってしまった私。 もうここで心を

 

掴まれます。ダンスが終わりパーティーが始まります。 サングリア( 赤ワインに、ス

 

ライスした果物等が入った酒 ) を飲み、個々のダンス、人間関係、セックス、そして

 

ドラッグの使用経験セクシャリティ、悩み、ゴシップ、といった話題を共有しあうダ

 

ンサー達。

 

 

 

 

「誕生は唯一無二の機会」 のタイトル パーティーは進み、ソロのダンスで盛り上が

 

るダンサー達。 上から撮られたアドリブのダンスもこれまた素敵です。パーティーは

 

最高潮に達し、ダンサーたちは徐々に興奮しトランス状態に陥ります。しかし、ダン

 

サーの一人 セルヴァは自身の身体に異常を感じ、自分達が飲んでいたサングリアに

 

LSDが混入していたのでは?と疑い、犯人探しを始めます。 

 

 

 

 

「生きる事は集団的不可能性」 ドラッグの影響からダンサー達は次第に正気を失い始

 

め、それぞれの欲求や願望の赴くままに感情を爆発させ、暴力、自傷、堕胎、近親相

 

姦といった行為が繰り広げられる事になります。

 

 

 

 

「死は特異な体験」 のタイトルで悪夢の一夜が過ぎたダンサー達の画が映されるので

 

ありました、、。 といった地獄の一夜を一緒に体験するような作品です。  ドクロ

 

 

 

 

オープニングの集団で魅せられるダンスシーンの素晴らしさと、ドラッグによってそ

 

れが崩壊するさまの落差。 人間は何らかのきっかけで、簡単に自分自身を破滅させて

 

しまう存在であること、何かを作り上げるよりも壊す方が簡単なんだということを、

 

見せつけられます。子供の死や堕胎、ゲイやレズビアン、自傷や殺人。 多くの人が嫌

 

悪するような題材がこれでもかと映されるのに、どこか美意識を感じてしまうノエの

 

作品。

 

 

 

 

特に、騒ぎが過ぎ去った後、部屋でダンサーの女性がドラッグの入った目薬を差す映

 

像にはドラッグが涙のように頬を流れる美しさに、狂気と愁いが漂います。 汗

 

長回しのワンカットショットが多数あり、絶妙な緊張感が張りつめています。 同時

 

に血を連想させる赤を基調とした原色の色が作品を独特な世界へと引き込みます。

 

 

 

 

そして今作も観客の神経を逆撫でする要素が沢山詰め込まれた、ノエのカタストロフ

 

ィ映画ですが、比較的それまでの作品よりも見やすい?ですし、単純にダンス映画と

 

しても見所のある作品です。 同時にノエらしいクセがちゃんとあり、ギャスパー・

 

ノエ映画はこうでなくちゃ!と思わせてくれる作品に仕上がっておりますので、濃い

 

目の味が好きな方は、この機会にでも一度ご覧になってみて下さいませ、です。  目

 

では、また次回ですよ~!  パー