若い哲学講師のマルチェロは少年の頃、彼を犯そうとした男を射殺した罪悪感に今もさいなまれていた。 その苦しみから解放されるためファシズムを選択した彼に、パリ亡命中の恩師である教授を調査するよう密命が下る。 ハネムーンを口実にパリに赴いたマルチェロと妻ジュリアは、快く教授に迎え入れられた。 だが、恩師の若妻アンナに目的を悟られてしまい、敵意を抱かれると同時に深い仲にもなってしまう。やがて、別荘に向かう教授夫妻は、マルチェロの目前で暗殺されるのだが、、。

 

 

 

 

 

 

こちらは1970年制作の イタリア イタリア フランス フランス 西ドイツ ドイツ

 

                                                      の合作映画です。(115分)

 

2018年に逝去したイタリア映画の巨匠 ベルナルド・ベルトルッチ 「ラストエンペ

 

ラー」 等 が、若干29歳の若さで撮り、彼の名を世界的に知らしめたのが本作でござ

 

います。

 

 

 

 

 1938年のイタリア 大学で哲学の講師をしているマルチェロは、全盲でファ

 

シズムに傾倒している友人に自分も組織に入れるよう幹部を紹介してくれるように頼

 

みます。​​​​​​マルチェロが組織へ提出した計画は、自身の学生時代の恩師でパリにいる反

 

ファシズム主義者のクアドリ教授に近づき、彼の行動や仲間の居場所を探るというも

 

のでした。

 

 

 

 

もうすぐ自分はジュリアと結婚する予定であり、新婚旅行を装い彼を訪ねれば怪しま

 

れないという計算までしていました。 大臣もこの計画を気に入り、マルチェロはすぐ

 

に組織の一員として迎えられ、ジュリアを伴ったパリ旅行へと向かいます。 この旅に

 

はジュリアには伏せられた組織の協力者マンガニェロも同行していました。 マルチェ

 

ロは旅の途中で組織の幹部から計画の変更を告げられます。 

 

 

 

 

それはクアドリを抹殺しろというもので、マンガニェロから銃を渡され​​​​​ます。 銃 

 

パリに着いた彼はクアドリに連絡を取り、ジュリアを伴なって自宅を訪ねますが、そ

 

こには若くて美しい夫人のアンナがいました。マルチェロは一目でアンナに惹かれま

 

すが、アンナはマルチェロが訪れた本当の目的に気づいていたのでした、、。

 

 

 

 

ファシズムや時代設定が難しいという事もありますが、現在と過去、幼少期と両親、

 

婚約者と任務といったエピソードが交錯する所も、なかなか整理が追いつきづらて、

 

以前観た時にはそれらを理解しようと悪戦苦闘した結果、映画自体を楽しめなかった

 

記憶がある苦い作品です。 私個人の脳みそ不足も大きいのですが、、。 脳みそ

 

 

 

 

もうひとつ本作にのめり込めない要因として、主人公のマルチェロに感情移入出来な

 

い所が大きく、意図的にあえてそういう人物にしているようにも思えました。

 

今回久しぶりに再見してみて、やっと落ち着いて作品を鑑賞する事が出来ました。 

 

 

 

 

要は本作、こじらせ男が自分のアイデンティティーを押し込めようと、世間や時代に

 

併合して普通になろうと様々に画策するも、その全てが空虚で虚栄のものだった事に

 

気付かされえしまうという悲劇の物語でありました。と勝手な私の解釈です、、多分

 

かなり偏った解釈でございますが、、。 はい。

 

 

 

 

幼少期の異常な体験、堕落した中流階級の両親、普通という隠れみのの為に俗物的な

 

ジュリアと結婚をして、ファシズムの中に身を潜めようとしますが、マルチェロには

 

その思想を持ち合わせていません。 その為、任せられた任務すら傍観しているだけ

 

です。幼少期のトラウマによりアイデンティティーが崩壊した彼は、指針を失いそれ

 

をかばう為に時代に紛れようとしますが、最後はその時代にはじき出されてしまいま

 

す。

 


 

 

そこに取り残されたマルチェロが赤いライトに照らされて浮かべる何とも言えない表

 

情が、この物語の全てを語っているようで、時代というものの儚さを感じます。

 

大きなストーリーの流れとしては 「ラストエンペラー」 に近いのではないでしょう

 

か はてなマーク インテリな難しい解釈はさておき (出来ない言い訳です) 映画の醍醐味のひ

 

とつである映像は見所が沢山あるのが本作の大きな魅力です。 

 

 

 

 

以前「タッカー」等でもご紹介した本作のカメラマン、ヴィットリオ・ストラーロ。 

 

ベルトルッチの他作品でも撮影監督をされておられますが、その見事な撮影は本作の

 

代名詞のひとつでもあります。 俯瞰で捉えた建造物と人間、キャラクターに当る光

 

の濃淡と温度、構図の巧みさや、雪の積もる冷たい森での手持ちカメラの動き。等々

 

最もインパクトがあるのが水辺のカフェでアンナとジュリアが踊るダンスシーンで

 

あります。外景のブルーに引き立てられた室内でのドレス姿の二人。 金髪で進歩的な

 

アンナと黒髪で保守的なジュリアの対比も含めて、実に官能的な美しさに溢れており

 

ます。

 

 

 

 

この人間的な温かさからの雪景色の森へと繋がるカットのなんと残酷な事か、、 ナイフ

 

内容はさておき、素敵な映像の連続で、それだけでも観る価値ありです。

 

 

 

 

ストーリー的にちょっと取っつきにくい作品かも知れませんが、アールデコを基調と

 

したインテリアやファッション、美しい光を活かした様々な映像等、物語以外でも見

 

所が沢山ある作品ですので、この機会にでも 大人の香りに溢れた 本作をご覧になって

 

みてはいかがでしょうか?です。  目

 

では、また次回ですよ~!  パー