オランダからフランスへ車で小旅行に出がけたレックスとサスキアだったが、立ち寄ったドライブインで、サスキアがこつ然と姿を消してしまう。レックスは必死に彼女を捜すが手がかりは得られず、3年の月日が流れる。それでもなお捜索を続けていたレックスのもとへ、犯人らしき人物からの手紙が何通も届き始める、、。

 

 

 

 

 

 

こちらは1988年制作の オランダ  フランス フランス の合作映画です(106分)

 

旅行中に立ち寄った真昼のドライブインで、突然妻が失踪してしまいます。 残された

 

夫は妻を探し回りますが、妻は行方不明に。 3年の月日が流れた時、夫のもとへ謎

 

の男が現われ、、。 というサスペンススリラーです。

 

 

 

 

  かなり前に観た作品ですが、長い事 作品自体が行方不明になっていました。

 

 が、今回 「発掘良品」 としてレンタルされましたので、再見してみました。

 

「ゴーン・ガール」 「アンダー・ザ・シルバーレイク」 と、行方不明になった女性を

 

探す映画は多くありますが、本作はそのジャンルの中でもカルト的な位置にある作品

 

です。

 

 

 

 

物語自体は淡々と進み、妻にとり残された夫 レックスと、その妻を誘拐した男 レイモ

 

ン二人それぞれの犯行時、犯行後が二人の視点で交互に描かれます。そう本作は消え

 

た妻の謎を追う捜索ミステリーという形を、早い段階から覆してきます。

 

 

 

 

映画は夫レックスと妻のサスキアが、休暇で別荘へと向かうドライブ場面から始まり

 

ます。途中ガス欠により暗闇のトンネル内でパニックになるサスキア。 その後、なん

 

とかガソリンを手に入れドライブインへとたどり着く二人ですが、このトンネルの場

 

面が後に映画を象徴しているものだと気付かされる事になります。

 

 

 

 

トイレへ向かったサスキアが忽然と消え、その行方を探しまわるレックス。途方に暮

 

れるレックスの姿。  唐突にカットが変わり、この事件を起こしたレイモンの日常にな

 

ります。二人の娘を持つ善き父親のレイモン。 その日常と地続きに淡々と犯行の準備

 

を進めていくレイモン。 

 

 

 

 

まるで化学の実験をするようにメモをとり、シュミレーションを重ねます。時に失敗

 

する彼の姿は、真剣な分、コミカルにも見えますが、笑っていない目がレイモンの狂

 

気を助長させ背筋が凍ります。

 

 

 

 

事件後 3年の歳月が流れますが、レックスは未だにサスキアを探し続けていました。

 

それはサスキアの安否を越えて、呪縛のように出来事の真実 謎に対する「答え」 を知

 

りたいという欲求がレックスを動かしているようにも見えます。 

 

 

 

 

 

反対にその「答え」を知っているレイモンは、レックスに「答え」を伝えたい欲求に

 

より、コンタクトを取る事に。

 

 

 

 

レックスに数回手紙を出し、待ち合わせに現われたレックスを遠目で観察する悪趣味

 

なレイモン。 そして遂にレックスの目の前に姿を現す事になります。

 

 

 

 

「真実を知りたければついて来い」 というレイモンの言葉にレックスは従い、彼の車

 

に乗り込みます。 そして事件が起こったドライブインへ到着すると、レイモンは睡

 

眠薬入りだと告げたコーヒーをレックスに勧めます。 

 

 

 

 

「彼女に何をした?」 と訊ねるレックスに「君はこれから同じ体験をする」 と答える

 

レイモン。「サスキアに何があったか知りたければこのコーヒーを飲め、断れば一生

 

真実は分からない」 と告げます。 サスキアが死んでいるかも分からないレックスは

 

悩みますが、「答え」 を知る為にコーヒーを飲み干すのでした、、。 コーヒー

 

 

 

 

映画をご覧になれば分かると思いますが、サスキアが誘拐されたのはあくまでもその

 

場に居たという偶然です。 その偶然の理由を探すレックスですが、全てはレイモン

 

の疑問を探求する実験から起こった事でした。 幼少期から疑問に思った事を実践し

 

なければ気が済まない彼は、幸せそうな家庭を築いた後でもその衝動に駆られ、コツ

 

コツと研究を重ねます。

 

 

 

 

このコツコツとシュミレーションしていく姿の異様さが、この作品の見所でもありま

 

す。そして実験を成功させたレイモンは、そこから派生した次の疑問へと実験を進め

 

て行く事になります。 その対象がレックスでした。 消えた妻を探す事に情熱を燃

 

やす彼に強く惹かれたレイモンは、レックスを被験者にした実験を始めます。

 

 

 

 

妻が突然失踪した謎の「答え」を解明しようとするレックス。二人の 「知りたい」 と

 

いう表裏一体の欲求がこの作品のテーマにも思えてきます。一切血も流れない作品な

 

がら、その淡々とした日常描写から垣間見える狂気と冷徹さが、逆に恐ろしさを増し

 

ていて、かなり混み入った最近のスリラー映画に比べればラスト等があっさりと感じ

 

るかも知れませんが、それが妙に衝撃的だったりも感じます。

 

 

 

 

暗いトンネル、金の卵、閉所恐怖症、別荘、ちりばめた様々なものに意味と関係があ

 

り、それこそ映画全体が、レックスの得意な数式のような体を成しているようです。

 

彼の車に用意されていた二人分のサンドイッチに恐怖を感じたのは私だけでしょう

 

か?

 

 

 

 

疑問、探求、実験。 日常と隔たりのない狂気は、はたして狂気と言えるのか? 嫌

 

な後味を残したまま映画は幕を閉じるのでした、、。

 

興味が湧きましたらご覧になってみて下さい、ませ。  目

 

では、また次回ですよ~!  パー