両親が離婚し、母と姉と3人で暮らすことになった少年ジュリアン。 しかし父アントワーヌにも共同親権が認められ、隔週で週末を父と過ごさなければならなくなる。 するとアントワーヌは、ジュリアンから母の連絡先を聞き出そうとする。 母がアントワーヌに会いたくないと知るジュリアンは、アントワーヌに母の居場所を突き止められないよう必死で抵抗するのだったが、、。

 

 

 

 

 

 

こちらは2017年制作の フランス映画 フランス です。 (93分)

 

ドメスティックバイオレンスを題材とした、サスペンス映画になります。

 

本作の監督 グザヴィエ・ルグランの初長編監督作品でありますが、彼が以前監督した

 

短編作品 「すべてを失う前に」 が、第86回アカデミー短編賞にノミネートされてお

 

り、本作はその短編作品を基にした長編作品で、第74回ヴェネツィア国際映画祭では

 

監督賞となる銀獅子賞を受賞した作品です。 ベル

 

 

 

 

演劇  映画は11歳になるジュリアンを軸に、両親の離婚によって起こる弊害と、恐怖

 

が描かれます。

 

夫アントワーヌの家庭内暴力が原因で離婚した妻ミリアム。 映画は家庭裁判所の判事

 

に呼び出され、お互いの弁護士も同席しながら娘のジョセフィーヌと息子のジュリア

 

ンの親権について話し合う協議の場面から始まります。 

 

 

 

 

なかなかの長尺で、互いの離婚に至った経緯と心情を、互い​​​​の弁護士から説明される

 

場面ですが、前知識として本作がサスペンス映画だと知っていた為、夫に不利なこの

 

やりとりも疑心暗鬼で聞いていた私。夫が嘘、妻が嘘をついていて、、、これは「羅

 

生門」のような展開になる作品なのか?と鑑賞しておりました。

 

 

 

 

数日後、裁判所の判決が通知されます。 親権は妻に渡りますが、父親の権利として

 

隔週の週末にジュリアンは父親に会う事になります。 そして父親と会う日がやって

 

来ますが、ここで父親を嫌っている家族の状況が明らかになります。 父親の事を 「あ

 

いつ」と呼ぶ姉弟。 

 

 

 

 

面会を仮病でやり過ごそうとしますが、夫は許さず結局ジュリアンは迎えに来た父親

 

の車に乗り込みますが、明らかに嫌がっているジュリアンの態度と表情。そんなジュ

 

リアンの気持ちに構う事なく、自分の実家へと向かいます。 祖父母はジュリアンを歓

 

迎しますが、父アントワーヌはジュリアンに無関心なのでした。翌日ジュリアンを送

 

って来た父アントワーヌは、しきりに妻のミリアムとコンタクトを取ろうとします。 

 

その間に挟まれ困惑するジュリアン。 

 

 

 

 

夫アントワーヌから離れる為、新居へ越した一家でしたが、それを知ったアントワー

 

ヌはジュリアンを脅し、新居を突き止めようとします。 健気に抵抗するジュリアン

 

でしたが、アントワーヌに負け、人質のように新居へ連れて来られる羽目に。 自宅

 

に居たミリアムは戸惑いますが、妻を見たアントワーヌは突然泣き出し、よりを戻し

 

たい事を訴えます。

 

 

 

 

その場はなんとか受け流し難を逃れますが、アントワーヌのそんな態度に両親も怒り

 

を抑えきれず実家から追い出されるアントワーヌ。 孤立した彼の怒りと孤独が爆発

 

する瞬間が訪れるのでした、、。 爆弾

 

 

 

 

昨今のどんでん返しの多いサスペンス映画。 こちらもそのような作品かと思っていた

 

のですが、どストレートなDV夫のお話になっていました。 しかし!本作はサスペ

 

ンスは勿論の事、そこらのホラー映画よりもかなり恐ろしく、緊張感がずっと続く作

 

品となっています。 ドクロ  それでいて家族、子供、責任、孤独、といった普遍的な

 

要素も混在しています。

 

 

  

 

 

お話としてのスタートは、離婚によるジュリアンの親権でしたが、物語が進むにつれ

 

父親はジュリアンにはほぼ無関心である事が如実に表現され、アントワーヌの関心の

 

全ては元妻のミリアムである事が分かります。 新しい男が出来たのでは?といった

 

事で彼の頭の中はいっぱいで、その繋がりを維持する為のツールとしてジュリアンを

 

利用しているのが明らかです。 

 

 

 

 

父親から愛されていない それを理解しているジュリアンの表情や仕草を見ているこち

 

らはとてもいたたまれない気持ちになります。アントワーヌは自分の世界しか見えて

 

いない自己中な男で、こうなった原因が自分にある事に気付いていません。その上や

 

り直せると信じ、ミリアムの前でいかに自分が孤独かを伝え、泣く姿はもう狂気です

 

 

 

 

映画は劇中音のみで表現され、場面を盛り上げる音楽は存在しません。 これが非常

 

に効果を発揮しているシーンが、ジュリアンに越した家に案内させる車中のシーン。

 

ジュリアンの指示に従ってハンドルを切るアントワーヌの常軌を逸した表情は執着し

 

た父親ではない、男というものの恐ろしさを見事に表現した場面です。

 

 

 

 

他にも姉のパーティ場面。 セリフが音楽で聞こえない中、長回しのカメラで人物の動

 

きとドアの開閉だけでドキドキするサスペンス感を演出していて見事です。

 

そして何よりもこのタイトルとなっているジュリアンを演じる トマ・ジオリア君の演

 

技が、この映画を特別なものにしています。 それと同時に父親を演じる ドゥニ・メノ

 

ーシェの熊のような存在感と、あの視線だけでも観る価値があるかと思います。

 

 

 

 

ちょっと母親のミリアムに、もう少し頑張ってジュリアンを守って欲しいという気持

 

ちにもなる所が多々ありますが、DV、ストーカー、の被害者側としてはこのような

 

対応になってしまうのでしょうかね。 はてなマーク

 

 

 

 

そんな訳で、離婚によって異常な執着を持つようになった夫と、それによって精神的

 

ダメージを受けた家族のドラマです。 被害者だと思っている夫の狂気と、父親とい

 

う信頼すべき存在から愛情ではない、恐怖を受ける事になる真の被害者の子供ジュリ

 

アンの家族を守ろうとする幼気な体験が描かれている、「痛くなる」ような映画です

 

 

 

 

93分という観やすい上映作品ですので、機会があればご覧になってみて下さいませ

 

です。 エンドクレジット時の音にも余韻が残ります、、。 目

 

では、また次回ですよ~!  パー