終戦日に軍医が防空壕に大量のモルヒネを埋めた。時価6千万円にもなるモルヒネを掘り出すため、5人の男女が集まる。しかしかつて防空壕だった場所には肉屋が建っていた。5人はそこから20メートル先の空き家を借り受け、穴を掘り進めることに、、。

 

 

 

 

 

 

こちらは1958年制作の 日本映画 日本 です。 (101分)

 

以前こちらでもご紹介した 「復讐するは我にあり」 「赤い殺意」 の今村昌平監督の

 

3作目となる本作は、戦後隠された6千万円相当のモルヒネ発掘に集まった5人の男

 

女の欲望にかられた姿を描いたサスペンスコメディ作品です。

 

 

 

 

  終戦記念日の8月15日。 ある駅のホームに胸に星のマークをつけた5人の人物

 

が集ります。 彼等の目的は終戦の日に、軍医橋本中尉がこの町の防空壕に埋めた

 

6千万円相当のモルヒネを掘り出すことでした。 ​​​ 橋本中尉と従兵三人は10年後

 

のこの日、掘り出して山分けすると約束していたのです。 ところが集ったのは五人。

 

 

 

 

既に死亡した橋本中尉の妹と称する妖艶な女 志麻、薬剤師の中田、大阪の中華料理店

 

主大沼、ヤクザの山本、それに中学校の教師と名乗る沢井。それぞれ​​​従兵だったと主

 

張した為、5人は協力する事になります。 目的の防空壕の場所には現在肉屋が建っ

 

ていた為、彼等は20メートル離れた空き家を借り地下を掘り進める計画を立てま

 

す。 

 

 

 

 

不動産屋と偽って借りようとしますが、強欲な家主に法外な敷金をふっかけられ、長

 

男まで雇わさせられる羽目に。 5人は工事費を作るため一旦帰郷しますが、山本が強

 

盗で逮捕。 4人で穴を掘り始める事になりますが、、 といったお話です。

 

 

 

 

個人的にこの映画、大変面白く鑑賞しました。 汽車の走るオープニング (監督は汽

 

車がお好きですね) 回る出演者のクレジットの手作り感がまた良くて、この時点で心

 

掴まれました。 到着した駅で 星 を目印に集まって来る5人の姿は 「オーシャ

 

ン」 程にはカッコよくないクセの強いキャラの立ったオジサン達。 ここに妖艶な女が

 

加わった事で発掘とは別のザワザワまで始まります。舞台になる商店街の美術が見事

 

な素晴らしい出来映えで、この町自体がもう一人の主役のようでもあります。

 

 

 

 

計画の為に空き家を借りようとしますが、家主も強欲で彼等からお金を巻き上げます

 

家主に押しつけられた息子にばれないように掘削を始める4人。 息子以外にも度々訪

 

れる来客を上手くやり過ごしつつ進める作業は、緊張と緩和の笑いが生まれます。ドア

 

 

 

 

そんな4人の計画を知らない家主の息子は、肉屋の娘に恋をして、なんとか成就させよ

 

うと奮闘していました。 地上の活き活きとした商店街の地下で、黙々と穴を掘り進む

 

4人の対比は人間の表と裏を見ているような気になり、その地上と地下を一緒の画面で

 

見せる映像は素敵で、他にもモノクロで映される光と闇のコントラストは効果的です

 

 

 

 

裸電球に浮かび上がる 殿山泰司、西村晃、そして後半での渡辺美佐子の顔はもう

 

ホラー映画以外の何者でもない怖さでありました。 ドクロ

 

物語も後半に差し掛かった所で、逮捕されていたヤクザの山本が脱走して帰って来た

 

辺りからサスペンス色が強くなり、穴掘りも佳境を迎え各々の欲望がむき出しになっ

 

ていきます。 

 

 

 

 

これに被るように町の解体、嵐、と怒涛の展開がたたみかけ、私欲むき出しのサバイ

 

バルバトルに ナイフハッ そこからの暴風雨も見事でしたが、それをまた上回る人間の

 

これでもか!な欲望描写のゲス加減にはやられました。

 

 

 

 

嵐と共に過ぎ去り、日常に戻ったかに思えた町。 その片隅で残されたゴミをかき集め

 

る人間が、、。 正に人間の果てのない欲望が描かれています が、そこからの~ トン

 

ビが見事な落ちをつけています。  「バチが当たったんやわ~!」 でした。

 

おぞましい程ドロドロした映画でしたが、何故かエンディングは軽妙で微かな希望が

 

見える終わり方をしていて爽快感すらありました。

 

 

 

 

殿山泰司のいやらしさ、西村晃の冷酷さ、小沢昭一のくちゃくちゃ、加藤武の凶暴

 

さ、こんな中、紅一点の渡辺美佐子の陰と陽演技、ドスが利いてサバサバした感じが

 

時にルパン三世の峰不二子に見えました。 言い寄る殿山泰司がルパン、、はてなマーク

 

 

 

 

長門裕之と中原早苗のカップル描写が作品の清涼剤になっているのも良かったです。

 

人間の根幹の欲望、いやらしさ、おぞましさが行き着くと笑いになるという可笑し

 

さ。今村昌平監督作品らしい、正に土着感とそこに住む人間の営み。 根底に貧しさと

 

いうものがありますが、それを生きる人間の力強さも感じさせられる作品です。

 

 

 

 

俳優陣も素敵ですが、商店街の街並み、夏祭り、という美術も素晴らしく、陰影の利

 

いたカメラも見事でございます。

 

ドキドキ、ワクワクな、サスペンスとブラックなコメディが絶妙に相まった重喜劇

 

で、逆説的な人間賛歌のような作品になっておりますので、機会があれば是非ご覧に

 

なってみて下さいませ、です。  目

 

では、また次回ですよ~!。  パー

 

 

 

 

 

 

 

好きな日本映画の予告を繋いだ音楽動画です。 よろしければです、です。 音譜