米海軍基地 港に軍艦が入ると、水兵相手のキャバレーが立ちならぶ町の中心地ドブ板通りは俄然活気づいてくる ところが、そんな鼻息をよそに青息吐息の一群があった 当局の取締りで根こそぎやられてしまったモグリ売春ハウスの連中、日森一家だ いきづまった日森一家は、豚肉の払底から大量の豚の飼育を考えついた、、、
こちらは1961年制作の 日活映画 です(108分)
「復讐するは我にあり」 「楢山節考」 「黒い雨」 の巨匠 今村昌平 の監督作品です
いわゆる喜劇タッチで描かれていますが、本作は初めて聞く「重喜劇」と呼ばれるジ
ャンルになるそうで、喜劇的でありながら、その裏に人間の性や、悲しみが同時に存
在しています。
主演に 長門裕之 と 本作がデビュー作となった 吉村実子 を迎え( 以前こちらでご紹
介した「鬼婆」に出演されておりまして、かの芳村真理さんの妹さんでございます )
他にも 丹波哲郎、加藤武、小沢昭一、南田洋子、東野英治郎、 菅井きん、西村晃、
殿山泰司 といった豪華さです
舞台は横須賀のドブ板通り 終戦後に復興を遂げた日本であるものの、未だに終
戦の影を引きずる横須賀 米兵がたむろするドブ板通りで売春宿を開いていたヤクザ
が、当局の検挙によって稼ぎを失う そこで考え出したのが、米兵の残飯を安く
仕入れて豚の飼育で一儲けしようと企みます このヤクザの下っ端の 欣太 と
彼に想いを寄せる春子 との恋愛を中心に、貧困やしがらみからの生活から抜け出そう
と、もがく二人の姿に戦後の日本とアメリカを重ね合わせて描かれています。
映画を見始めて30分位は、口調、テンポ、訛り が聞き取りずらく、しばし戸惑って
しまいました。 舞台となる横須賀を、当時風にデコレーションした美術は生々しく
混沌として生き生きとした雰囲気が、まるで 「ブレードランナー」 を彷彿とさせるリ
アリティです様々なエピソードが繰り広げられた後、最後の仕事を片して、 欣太は春
子と町を出て行く決心をしますが、事は上手く運ばずに遂に 欣太は怒りを爆発させま
す
偶然トラックの荷台に積んであったマシンガンをぶっ放し トラックに乗せ
ていたブタの大群を町に放します 町にあふれる 豚、ぶた、ブタ
そのブタにもみくちゃにされ、踏みつけられる ヤクザ達 日本映画史に残る名場面で
あります アメリカの残飯を喰わされている日本人という皮肉が、今村昌平感を感じ
ます
銃撃を受けながら、春子との待ち合わせ場所の駅へと向かう欣太 このシーンでは
「灰とダイヤモンド」のラストを思い浮かべてしました「アンダルシアに憧れて」
の歌詞もそんなでしたな そしてたどり着いた場所は、、、
横須賀に見切りをつけ、川崎に一人向かうことを決意した春子 到着した列車から何
十人もの化粧をした女たちが出てきます アメリカの水兵たちを見つけると、甲高い
声を上げてハンカチを振りながら彼らの後を追う女性達 それと逆行するように、春
子はその人混みを抜け列車へと向かいます その表情は強く、凛としていて 力強く
歩みを進めて行くのでした。
この映画は 春子 を象徴とした女性の自立の作品だったのでありました アホな男ど
もは放っといて、これからは女性の時代とでも言われてる気がします
映画の登場人物達の描き方はステレオタイプですが、何かそこに沸々と湧いている熱
のようなものを感じる作品となっております この時代の特殊な町、横須賀の空気感
を是非感じて頂きたいと思います ブタの行進だけでもご覧になる価値のある映画で
ござりまするぞ
では、また次回ですよ~!