もぐりの医師の中絶手術をうけたばかりのヘレンは、疲れ切った体をいたわりながら、やっとの思いで若い画家マーコのアトリエにたどり着いた。 しかしマーコとヘレンの間にはすでに愛は失われていた。マーコにマリファナを売りつけにきたボビーは、寒さと孤独に身を震わせるヘレンをみとめ、自分のスカーフを手渡した。そのあと、ひどい出血をみたヘレンは市立病院に入院した。退院の日、ヘレンは出迎えたボビーのやさしさに魅かれるように彼のあとに従うのだったが、、。

 

 

 

 

 

 

こちらは1971年制作の アメリカ映画 アメリカ です。 (110分)

 

70年代のニューヨーク マンハッタンのシャーマン・スクエア、通称 ニードル・パ

 

ークとよばれているヘロイン中毒者が多く暮らす地域で出会ったボビーとヘレンの物

 

語です。

 

 

 

 

  日本でつけられた 「哀しみの街かど」 というタイトルから連想されるセンチメ

 

ンタルな恋愛劇はここには存在しません。 

 

田舎町からニューヨークへ出て来たヘレンは、売れない画家の恋人マーコとの間に出

 

来た子供を中絶します。  この時のヘレンの心情を表したようなオープニングが印象的

 

で地下鉄の車内で人混みに押されながら一人立つヘレンのショットが彼女の孤独感を

 

引き立たせています。 

 

 

 

 

恋人マーコは仕事の為に翌日から旅行へ出るという時、薬の売人であるボビーが訪れ

 

ます。 弱ったヘレンにマフラーをかけてあげるという何気ない優しさを見せるボビ

 

ー。 翌日、体調がすぐれない為入院したヘレンに 「マフラーを返してもらいに」 と

 

いう口実で見舞いにやって来るボビー。その日から毎日二人で過ごすようになりま

 

す。優しさで繋がった二人は恋人となり、ボビーの友人達とも交流するようになるヘ

 

レン。 

 

 

 

 

ある日ボビーの使う薬を興味本位で打ってしまいます。 それにショックを受けるボ

 

ビーでしたが、徐々に二人共々ドラッグの世界へと落ちていくのでした、、。

 

とにかくドラッグの作り方から打ち方のディテールとリアリティの描写は凄いものが

 

あり、打った後の人間の状態等もかなりの生々しさを感じます。  チーン そして70

 

年代という時代が確実にフィルムに焼き付けられ、殺伐とした空気感もそのまま伝わ

 

って来ます。

 

 

 

 

出口のない二人の生活ですが、その元凶となっているものは孤独です。 何故そんな

 

事を?という場面が多々ありますが、それは孤独感を癒してくれる相手に互いが依存

 

し、そこに魅力的なドラッグという共通したツールがある事で、より二人の束縛と負

 

の連鎖 が増幅し、強固なものになってしまった結果で、仲間という存在もそれを共

 

有している為に、その呪縛から抜け出せなくなってしまうのでした。     

 

 

 

 

冷たく無機質な都会という賑やかさの中での孤独は、この上なく耐えがたいもので

 

す。大きくドラマティックな展開がある訳ではないこのお話ですが、それを魅力的に

 

しているのが主人公を演じている二人です。

 

 

 

 

本作で主人公のボビーを演じている アル・パチーノ の記念すべき主演デビュー作であ

 

り、恋人ヘレンを演じた キティ・ウィンは、この演技によって第24回カンヌ国際映

 

画祭の女優賞を受賞しています。 そして本作を監督した ジェリー・シャッツバーグ

 

はこの作品の次に再びアル・パチーノを起用して、私の大好きな 「スケアクロウ」を

 

製作しています。 ベル  そして同様に都会の孤独な二人を描いた 「真夜中のカーボー

 

イ」 のカメラマンが本作を撮影していて、この時代好きにはたまらないメンバーであ

 

ります。

 

 

 

 

共演者も渋く、ヘレンの恋人役マーコを演じるのが 「アダムズ・ファミリー」 でお馴

 

染みの ラウル・ジュリア。 個人的に面白かったのが、「ゴッドファーザー」でずっと

 

アル・パチーノの用心棒として出演していた リチャード・ブライトがボビーの兄役で

 

ガッツリと出演していた事に、ついニヤけてしまいました。 スタッフや出演者って

 

繋がっていくものなのですね。

 

 

 

 

という訳で、薬の恐怖と同時に、社会の底辺で寄り添う出口のない愛と孤独を描いた

 

作品で、当時の空気感がひしひしと伝わってくる映画で、主演二人の演技を観るだけ

 

でも十分価値があると思いますので、機会があればご覧になってみて下さいです。

 

では、また次回ですよ~!  パー