紅葉の季節を迎えたバーモント州のある小さな村。森の中でハリーという男の死体が見つかる。村では様々な理由で「自分がハリーを殺してしまったのでは?」と思い込む人物が何人もいたため、彼らはそれぞれの保身のためにハリーの死体を埋めたり掘り返したりすることになる。やがて村の保安官が動き出し、事態は意外な方向へ展開していく。、、。

 

 

 

 

 

 

こちらは1955年制作の アメリカ映画 アメリカ です。 (99分)

 

以前もご紹介した 「バルカン超特急」 「救命艇」 の アルフレッド・ヒッチコック監

 

督作品ですが、ヒッチコックのフィルモグラフィーの中でも異色のブラックコメディ

 

となります。

 

 

 

 

  舞台はアメリカヴァーモント州。  紅葉の美しい小さな田舎町で遊んでいた男の

 

子アーニーが森の中で男性の遺体を発見する所から始まります。 身綺麗なスーツ姿

 

の遺体は頭から血を垂らして横たわっていました。 アーニーが去った後、ウサギ狩り

 

をしていた元船長のアルバート​​​​が現われます。 遺体を発見したアルバートは自身が撃

 

った猟銃に当って亡くなったと思い、見知らぬ男の遺体を隠そうとします。 

 

 

 

 

そこへミス・グレヴリーが通り掛り遺体を運ぼうとしているアルバートを見つけます

 

アルバートは成り行きを語り、二人だけの秘密にしてもらいますが、実はミス・グレ

 

ヴリーもこの遺体の男が亡くなった原因に心当たりがありました。   ハイヒール

 

 

 

 

さてミス・グレヴリーも去り、再び遺体を処理しようと思った矢先、今度は最初に発

 

見したアーニーが母親のジェニファーを連れてやって来るのが見え、アルバートは身

 

を隠します。 ジェニファーは遺体を見るなり 「ハリー」 と男の名前を呼びますが、

 

慌てた様子もなくアーニーを連れてそのまま立ち去ってしまいます。

 

 

 

 

遺体の名はハリーで、ジェニファーの夫でしたが、結婚してすぐに別居。 夫に黙って

 

子供と引っ越して来ていたのでしたが、ハリーはジェニファーを探してこの町へ訪れ

 

ていました。 突然自宅へ現れたハリーに驚いたジェニファーは、とっさにハリーの頭

 

を牛乳瓶で殴り撃退。 ジェニファーもハリーが亡くなった原因は自分にあると思って

 

いました。その後も読書に夢中な医者や、放浪者が立ち替わりハリーを通り過ぎます

 

 

 

 

最後に現われたのが絵描きをしているサム。 風景をスケッチしている時にハリーを見

 

つけハリーを描き始めます。 業を煮やしたアルバートはサムに話しかけ、ハリーの遺

 

体を土に埋める相談を始めます。 最初は拒んでいたサムでしたが、アルバートの説得

 

にあい、遂に手伝う事になるのでしたが、、。 といったお話しです。

 

 

 

 

物語の舞台がのどかな田舎町の為か、ハリーの遺体を発見するも誰一人としてショッ

 

クをうけないという異様さと、人の死に対する無関心さに違った恐怖も感じる本作

 

は、ともすれば「ツイン・ピークス」のような作品にもなりそうなものですが、これ

 

までのヒッチコック自身の作風を逆手にとってシニカルなブラックコメディに仕上げ

 

ている事で、観客を別の手法で驚かせる事に成功した作品でもあります。 滝汗

 

 

 

 

登場人物の身勝手な判断によって、遺体のハリーは3回も土に埋めたり掘り返された

 

りを繰り返され、タイトル通り災難に遭うハリー。 その死をめぐる町の人達の会話

 

や行動に個々の人生のペーソスが垣間見れる脚本の巧みさはお見事です。

 

 

 

 

少人数の町というミニマムな世界で展開される保身と勘違いの連鎖にはやはり笑って

 

しまいます。 死人が物語の主人公でありながら残酷さや悲哀を感じさせないのは、

 

スマートでユーモラスな演出もさる事ながら、本作からヒッチコックと組む事になる

 

音楽家バーナード・ハーマンの楽曲による所も大きく、シーンの空気や人物の心理状

 

態を曲によって表現している場面も多く、紅葉した美しい自然と相まって、作品のブ

 

ラックなトーンを穏やかなものにしています。 音譜

 

 

 

 

限られた登場人物を演じる俳優陣も見事に役にはまっていますが、中でも本作が映画

 

デビューとなったシャリ―・マクレーンのキュートさがこの作品に彩りを添えていま

 

す。アルバートを演じるエドマンド・グウェンも、とても可愛らしかったですがね。 

 

そしてちゃっかり足の裏で自己主張するハリーも味わい深いキャラでございます。

 

 

 

 

本作でもヒッチコックらしい小物やアイテムへのこだわりと使い方に印象深かさを感

 

じました。それによってラストのサスペンス展開になったりする辺りはもう職人技で

 

す。これまでのヒッチコック作品の代名詞であるスケールの大きいサスペンスや緊張

 

によるスリラー演出という自身の作風を逆手にとったような、オフビートでシニカル

 

な作品ながら、ちゃんと驚きとサスペンスが味わえる紛れもないヒッチコック作品

 

となっており、やたら美しい 秋 を感じさせる、紅葉の風景が印象に残る作品でござい

 

ます。 もみじ 

 

機会があればご覧になってみて下さいませ、です。  目

 

では、また次回ですよ~!  パー