1327年、ヨーロッパで宗教裁判の嵐が吹きあれている頃、北イタリアのベネディクト修道院に、バスカヴィルのウィリアムと見習修道士のアドソが重要な会議に出席するために向かっていた。 キリストの財産をめぐる教皇派とフランチェスコ修道会とその争いをまとめるための会議であった。 荘厳な修道院に着くとすぐ、ウィリアムは、若い修道士が不審な死を遂げたことを知る。 修道院長によれば、死んだ僧は、文書館でさし絵師として働いていたということだった。 殺人のにおいがするこの事件の解明を、ウィリアムは頼まれることになった、。

 

 

 

 

 

 

こちらは1986年制作の フランス フランス イタリア イタリア 西ドイツ ドイツ による合作映画

                                                                                    です。 (130分)

 

 

ウンベルト・エーコ のベストセラー小説 「薔薇の名前」 を映画化した本作。  

 

映画は当時見習修道士だったアドソが、老年に入り、若き日の恐ろしい体験を回想す

 

るモノローグという形で進行していきます。

 

 

 

 

14世紀中頃の北イタリア。 荒野に立つ修道院で、厳格な信者達の中で起こる 連続殺

 

人。そこへ訪れた 修道士 ウィリアムと 見習修道士のアドソ に真相の解明が依頼さ

 

れる事から始まる ミステリー探偵物語 が本作でございます。  サーチ

 

 

 

 

ナゾの人  まだレンタルビデオ店だった頃に鑑賞したのですが、面白かった記憶が残ってい

 

ましたが、細部が曖昧で、また観たくなり、ブルーレイでお取り寄せをしてみました

 

ジャン=ジャック・アノー監督 (久しぶりに聞くお名前) による本作は、とにかくデ

 

ィテールに凝った作品で、どんよりと冷え切った空気が映画を包み込んでおります。

 

閉鎖された修道院で起きる殺人は、まるで 「セブン」 を見ているかのようにダークで

 

陰湿。

 

 

 

 

その殺人を悪魔の仕業だと訴える異様な世界です。   普通の作品とは違い、宗

 

派や宗教が基盤にあり、ちょっと疎い私には多少戸惑う部分もあるものの、ザックリ 

 

と理解出来る範囲で楽しめます。 (小説ファンには物足りないかも?)

 

 

 

 

逆に、無知な私にはそれが面白く、宗派によって服装や髪形 ( 実際に俳優さん達が髪

 

の毛を剃ったりしていて、普段どうしてたのか不安 ) が違ったり、独特の建造物や小

 

物、ロウソクの光  等の数々が異様な雰囲気を醸し出し、その空気感そのものが

 

映画の主役のようです。

 

 

 

 

事件が進むにつれ、黙示録をなぞった 見立て殺人 の様相を呈し( 横溝正史感 )、恐

 

れおののく修道士達。 捜査を進めるにつれ、どうやら宗教上の 「禁書」 が事件に大

 

きく関係している事を掴む ウィリアムとアドソ。   この二人を演じるのが ショ

 

ーン・コネリーと若きクリスチャン・スレーター。 二人はまるで ホームズとワトソン

 

のようなコンビネーションを見せます。 

 

 

 

 

当時では珍しかったであろうメガネを取り出し、難しい文字を読む場面や、知の迷宮

 

で、階段が迷路状になったエッシャーの絵のような図書館 (ハリーポッターを思い出

 

します)で、古い本を発見してはしゃぐシーンに、つい パパ・インディージョーンズ

 

に見えてしまった私でした。ウィリアムを 「マスター」 と呼ぶ アドソとのコンビは

 

衣装も似ている事から、「スターウォーズ」 のジェダイにも見えるのでありました。

 

 

 

 

殺人の謎を追及するうちに、重要な禁書にたどり着きます。 それは書かれなかったと

 

言われていた 喜劇 の古写本でした。 この存在を無きモノとしたがっていた人物が、

 

何故笑いを嫌っていたのか はてなマーク その理由は、笑いが恐れを殺せば、もはや信仰は成立

 

しなくなり、民衆が悪魔を恐れなくなると、神は必要なくなってしまう というもので

 

した。

 

 

 

 

「 笑いを肯定した本が見つかってしまえば、何でも笑い飛ばせると公式に認める事に

 

なる。 神を笑う事が許されれば世界はカオスに戻ってしまう。 民衆の恐怖や恐れが信

 

仰心を強いものにする。」 という呆れた理屈です。 

 

 

 

 

それを利用して自分達の地位や、教会を絶対的なものにしていたという、全く矛盾す

 

る信仰心の悪用と、聖書に矛盾するものは隠し、異端扱いするという、人々を救うは

 

ずの宗教が、一部の人間だけにしか恩恵をもたらさなくなっていました。 

 

 

 

 

それに反した行いは悪とし、悪い行いをしたのは悪魔のせいにする。一方的な異端審

 

判で火あぶりに課せられる人達。メラメラ 「多くを知りたがる者から死ぬ」 怖すぎます。 

 

「恐怖」 が秩序やモラルの始まりなのかと思うと恐ろしくなります。

 

 

 

 

この修道院の長老が白内障のように目が白く濁ってるのは、まさにそれを象徴してい

 

るようで、自らの世界以外を見ようとしていない揶揄にも見えます。長老の存在感も

 

見事ですが、他の方々もどうやって集めたんだろう?という位、個性的なお顔立ちを

 

しています。 

 

 

 

 

主人公二人以外にも、「アマデウス」 のサリエリ役で皆さんご存知の F・マーリー・

 

エイブラハム がこれまた見事な嫌われ役で登場。 マイケル・ロンズデイルの顔力。 

 

普通でもパンチ力のある顔に付け鼻までした ロン・パールマンもお見事です。一番の

 

インパクトは男色嗜好のおデブさん。白いお顔は リアルスケキヨ のようであります。

 

 

 

 

サスペンス推理の様相を呈した、ミステリーであり冒険ものであり、法廷劇や哲学で

 

あり、歴史と貧富と人生であり、愛と成長も描かれています。

 

 

 

 

宗教と信仰を利用する人間の暗部は、悪魔も逃げ出す程の人間の恐ろしさ、おぞまし

 

さを見せられます。 しかし、腐敗した信仰を正しい道へ甦えらせる事が出来るのも 

 

人間 だと微かな希望 を持ち映画は幕を閉じます。 

 

 

 

 

ミステリー好きの方には少々物足りなさを感じるかも知れませんが、神と俗世の矛

 

盾、人間は真の信仰と信念をもてるのか? それこそが本作における最大のミステリー

 

なのかもしれません。

 

 

 


「枯れても なお残るは 薔薇の名前」 ショーン・コネリーの魅力満載で、鑑賞後に余韻

 

が残る作品ですので機会があればご覧になってみて下さいませ、です。  目

 

では、また次回ですよ~!  パー