１８世紀初頭のイングランド。 フランスとの戦争が長引く中、アン女王の幼馴染で、イングランド軍を率いるモールバラ公爵の妻サラは、病弱な女王に代わって宮廷の実権を握り、戦費の調達に奔走していた。 そんな時、サラの従妹で上流階級から没落した若い娘アビゲイルが現われ、召使いとして働き始める。 サラが政治に時間を取られるようになる一方、アビゲイルは巧みに女王の歓心を買い、着実にその信頼を勝ち取っていく。 宮廷で不動の地位を築いていたはずのサラも、次第にアビゲイルの秘めたる野心に警戒心を抱くようになるが、、。
こちらは２０１８年制作の アイルランド 
アメリカ 
イギリス 
の合作映画
です。（１２０分） 
第９１回アカデミー賞で主要９部門にノミネートされ、アン女王を演じた オリヴィ
ア・コールマン が主演女優賞を受賞 
エマ・ストーン と レイチェル・ワイズ
が、助演でダブルノミネート （ 惜しくも受賞は逃しましたが ） された作品です。
以前こちらでもご紹介した 「籠の中の乙女」 「ロブスター」 の ヨルゴス・ラン
ティモス の監督作で、これまでの作品に比べて クセ はやや弱め。 それが逆に功を奏
した？ようです。
１８世紀初頭のイングランドで実在したアン王女の物語を大胆に脚色した本作は、女
王の愛 を奪い合う 女性２人のしたたかな攻防を描いた宮廷コスチュームプレイです。
超広角レンズを使って撮影された映像は、王室という特殊な世界を効果的に表現する
のに役立っているのと同時に、これまで見た事もないような 絵画のように美しい映像
で、１８世紀に連れて行ってくれます。 自然光のみで撮影された画面は フェルメール
のようです。
この美しい舞台を背景に、アン王女 と親友で側近のサラ が統治している宮廷へ、貴族
から身落ちした娘のアビゲイルが、縁故を頼って訪れた事から物語が始まります。
アン王女の信頼を勝ち取ろうと、サラと女中として雇われたアビゲイルの女同志の熾
烈で、陰湿な戦いが巻き起こります。 痛風に悩まされ、政治の事はサラに頼り切り
のアン王女。
アン王女に絶対の信頼を置かれ、実務のほとんどを担っているサラ。 アン王女を取り
込み、元の貴族の地位へと返り咲こうと画策するアビゲイル。 それぞれの立場の苦
悩と欲望が交差していくさまはスリリングでドロドロ。 実権を握っているのは女性
で、男共は白塗りバッチリメイクで異常な程 もったカツラで馬鹿な遊びに興じており
ます。 
女性がご覧になると気持ちいいかも知れませんね。 衣装もこれまた見事ですが、女
性のドレスは男性に比べてシックな装い。 それでいてエレガント。 
日本人のコンプレックスでしょうか？ 室内の装飾から、建築物、広大な庭のロケーシ
ョンと、つくづく憎らしい程の美しさに見とれてしまいます。 その様式美の中で渦
巻く物語のギャップによって、より人間の執着のおぞましさが引き立っております。
３人の女性陣の 競演 はそれぞれ見事で、その中でもやはり アン王女を演じた オリ
ヴィア・コールマン の神経衰弱ギリギリの演技は見事で、印象に残るものでした。
独特なセンスの音楽。 不思議なダンス。 マッサージ。 アイパッチ。 １７羽のウサ
ギ。 ついついキューブリックの 「バリー・リンドン」 と比較してしまいますが、そ
れとはまた違った撮影方法と美しさが本作にはあります。
そして時代は移ろい、女性が強くなりました。 いえ、元々女性の方が強かったのを カ
ミングアウト したのがこの 「女王陛下のお気に入り」という映画でございます。
超広角レンズで捉えた湾曲した世界の中で繰り広げられる、異様な「愛を乞う」物語
まだご覧になっていらっしゃらない方、特に女性の方に、ご覧いただきたい作品でご
ざいますので、機会があればご覧になってみて下さいませ、です。 
では、また次回ですよ～！ 
アカデミー賞の受賞場面です。隣のエマ・ストーンのリアクションが素敵です。