ワルシャワ郊外の緑に囲まれた木造の古い屋敷。 ここで愛犬のフィラデルフィアと暮らす 91歳の女性、アニェラ。 共産主義時代に政府から強制された間借人もようやくいなくなり、思い出の詰まったこの家で静かな余生を送っていた。そんな彼女の楽しみは、双眼鏡で両隣の家を覗くこと。一方は、愛人を囲う成金の家、もう一方には、子どもたちのために音楽クラブを開く若いカップルが住んでいた。 ある日、成金の使いという男がアニェラの家を売ってほしいと破格の値段を提示してくる。 頑固に断るアニェラだったが、、。

 

 

 

 

 

 

こちらは2007年制作の ポーランド    映画 です。 (104分)

 

モノクロームで撮られた本作は、以前ご紹介した 「僕がいない場所」 の 女性監督 

 

ドロタ・ケンジェジャフスカ の作品になります。

 

 

 

 

今回の主人公は 91歳になる アニェラおばあちゃんと、ボーダーコリーの フィラち

 

ゃん。戦争前に建てられた古い邸宅。  夫は既に他界し、一人息子は家庭を持ち、別に

 

暮らしています。 その邸宅に売却の話が持ち上がりますが、アニェラには素敵な思

 

い出の詰まったその家には特別な思い入れがあり、断固として売却に応じようとはし

 

ない彼女でした。  

 

 

 

 

木々に囲まれ、時代に取り残されたようにあちこち ガタ がきている邸宅は、正に ア

 

ニェラそのもの。 彼女の話し合い手は犬のフィラで、まぁ この子が愛らしいなんのっ

 

て。 しっぽフリフリ

 

 

 

 

セリフとしてはアニェラの 独り言 でしかない言葉に、クリクリの目と仕草で答え、ち

 

ゃんと会話として成立している感じが何とも言えません。 そんなアニェラの楽しみ

 

は、部屋から双眼鏡で覗く近隣の様子を覗く事。 

 

 

 

 

時折、ガラス越しに覗く庭のブランコに過去の息子を見たり、赤ちゃん 部屋の食器棚のガ

 

ラスに、若かった頃の自分が映り込み、幻影と踊ったりと、家の隅々にアニェラの人

 

生が染みつている事がうかがえます。 想い出はかくも美しいものなのでした。  キラキラ

 

 

 

 

その美しかった思い出と、現実のギャップ。 可愛らしかった息子の変わり様と、孫娘

 

の無関心。 もやもや  母の想いは空回りするばかり。 想いを知っているのは愛犬のフィラ

 

のみでした。 そんな彼女が希望を見出したのが、向かえにある貧しい子供達の音楽

 

クラブ遠くの親戚より近くの他人 はてなマーク 想いを未来に託す事を選択するアニェラでした。

 

 

 

 

モノクロームによって強調される木漏れ日の光と影。 内と外を隔てるガラスに反射す

 

るアニェラの顔と影。 古びた屋敷同様、アニェラの顔に刻まれた しわの深み。 

 

ブランコを漕ぐ彼女の笑顔が忘れられません。

 

 

 

 

実年齢91歳のアニェラおばあちゃんの凛とした佇まいと、愛らしさ。 音楽クラブに

 

通うドストエフスキー少年の面構え。 ウインク  肥満気味の孫娘と、音楽クラブの子供

 

達。  音譜 ラストシーンを秀逸なものにしている フィラちゃんの演技、澄んだ瞳と表

 

情がたまりません。

 

 

 

 

「ベイブ」 等、ボーダーコリーが登場する映画は多々ありますが、本作を上回る作品

 

は今後も 無い と断言してしまう位の素晴らしさで、個人的に パルムドック賞 を授与

 

したい程です。 ベル

 

 

 

 

淡々とアニェラおばあちゃんとフィラの、ミニマムな二人の暮らしが映される為、そ

 

れを退屈に感じる方もおられるかも知れませんが、私は深夜にどっぷりと浸かってし

 

まいました。

 

 

 

 

犬好き、動物好きの方は勿論ですが、美しい映像の中で、家族と想い出について考え

 

させられる映画でもありますので、機会があればご覧になってみて下さいませ。 目

 

では、また次回ですよ~!  パー