京烏丸四条の大経師内匠は、宮中の経巻表装を職とし、町人ながら名字帯刀も許され、御所の役人と同じ格式を持っていた。傍ら毎年の暦の刊行権を持ちその収入も大きかった。当代の以春はその地位格式財力を鼻にかけて傲岸不遜の振舞が多かった。その二度目の若い妻おさんは、外見幸福そうだったが何とか物足らぬ気持で日を送っていた。おさんの兄道喜は借金の利子の支払いに困って、遂にその始末をおさんに泣きついた。金銭に関してはきびしい以春には冷く断わられ、止むなくおさんは手代茂兵衛に相談するのだった、。

 

 

 

 

 

 

こちらは1954年制作の 日本映画 日本 です。 (102分)

 

日本映画を代表する 溝口健二監督作で、撮影は 宮川一夫 という最強コンビ作品であ

 

り、世界的にも評価の高い作品でございます。 地球

 

 

 

 

近松門左衛門作 の 人形浄瑠璃 の演目の一つを映画化した時代劇ものですが、現代

 

風に言うと、「 純愛の不倫による逃避行 」 となるのでありましょうか?

 

 

 

 

ナゾの人  京烏丸四条の大経師 ( 経巻・仏画などを表装するお仕事 ) 内匠は、宮中の経巻

 

表装を職とし、町人ながら名字帯刀も許され、御所の役人と同じ格式を持っておりま

 

した。 ​​​当代の以春はその地位格式財力を鼻にかけた嫌な奴。 女中のお玉の寝床に

 

夜な夜な侵入するようなセクハラ社長。 そんな以春の二度目の若い妻 おさんは、外見

 

幸福そうでしたが、どこか物足りない気持で日を送っていました。 

 

 

 

 

その ​​​​​おさんの元に兄が借金の利子の支払いに困り、泣きついて来ます。 主人の以春は

 

金に細かく、その頼みを冷く断わります、困ったおさんは 手代(仕事の職人)茂兵衛

 

に相談します。優しい茂兵衛は、内証で主人の印判を用い、取引先から暫く借りてお

 

こうとしますが以春にばれてしまいます。 この茂兵衛のほんの少しの気遣いが始ま

 

りでした。 滝汗 

 

 

 

 

以春に理由を問いただされても、おさんの名前は出しません。 その時、茂兵衛に好

 

意を持っていた女中のお玉が自分の為だったと罪を被ろうとします。 口説いていたお

 

玉が茂兵衛をかばう姿は、火に油を注ぐ事になり、余計 茂兵衛に怒りが向けられ、屋

 

根裏部屋へ檻禁されてしまいます。ハッこの事態にお玉はおさんに以春が夜になると寝

 

所へ通ってくることを打明けます。憤慨したおさんは、一策を案じて、その夜お玉と

 

寝所をとりかえて待ち構える事に。 

 

 

 

 

ところが意外にもその夜その部屋にやって来たのは茂兵衛でした。 彼はお玉へ一言礼

 

を云いにきたのでしたが、思いも寄らずそこにおさんを見出し、しかも運悪く以春ま

 

でも登場 ビックリマーク それを見た以春は不義よ密通よと自分の事を棚に上げ、騒ぎ責めます。 

 

このカオス状態にいたたまれなくなった 茂兵衛とおさんは、二人そこを逃げるように

 

出て行く事になり、さまよう二人になるのですが、、。

 

 

 

 

映像や、演出は言わずもがなで、セット、ロケーション、小道具、所作、ディティー

 

ル等は、まったくもって素晴らしいの一言に尽きます。 キラキラ 物語自体はそう難しく

 

なく、現在の私達でも十分理解出来る ある種の ラブストーリーです。

 

 

 

 

ただ、当時の社会制度、階級制度、身分といったものに疎く、学がない私などが見る

 

と、若干 その場その場で自分なりに解釈しなければならない箇所がある事は否めませ

 

ん。町人で刀が持てる、持てないといった差であったり。 妻の不義や密通は届けを出

 

さねばならない?や、密通 ( 二人は性的行為は最後までしておりませんが ) した者

 

は市中引き回しの上、死刑となるという恐ろしい刑罰の時代。 

 

 

 

 

そしてとにかく 家名 に傷をつける事の大きさと代償。 正直ラストの以春の店の末路

 

は、正式に妻の行いを届けていなかった為の お咎めなのか、その家から死刑の罪人を

 

出した為なのか?の判断に迷いました。 はてなマーク 勉強不足な私なのでありましたが、その

 

逆に色々と勉強にもなる映画でございます。 メモ

 

 

 

 

印象深かったのは、まだ恋愛感情になっていない二人が舟の上で起こす所作。 身投げ

 

して死のうとする おさんの着物が死んだ後乱れないように、布で縛る茂兵衛の心遣

 

い。そこからの おさんへの告白! 恋の矢 そして茂兵衛良い人過ぎです。 

 

 

 

 

他にも、二人して逃げ、たどり着いた先の茂兵衛の父親が、茂兵衛を言葉で責めなが

 

らも、二人にしてあげた行動が泣けます。  

 

 

 

 

そしてなんとも言えないラストの 引き回しの場面で馬に乗せられ、縄で縛られてる二

 

人が、やさしく手を取りあって行く姿を見ての女中の言葉 「お家さん (おさん) の

 

あんな明るいお顔、見た事がない」「茂兵衛さんも晴ればれした顔色で、ほんまこれ

 

から死ねはんのやろか、、」 

 

 

 

 

その言葉が聞こえてはいない二人が、ある意味、幕府によって正式に二人になれる瞬

 

間でもあるという、皮肉にも感じますが、二人にとっては 至福の時 でもあるという、

 

悲劇的な感動を味わった私でありました。

 

 

 

 

一つ難を言えば、DVD化しても音声が小さい事でしょうか 音譜 通常の倍のボリュ

 

ームにして観た私。 今後ご覧になろうとしている方は、オープニングタイトルに騙

 

されないようにして下さいませ。 そうそう、音楽も映像と相まった素敵なものです

 

ので、そちらもご堪能下さい。

 

 

 

 

本作以外の作品でも高い評価をされている監督さんですので、他の作品でも1本ご覧

 

になってみてはいかがでしょうか? ご自分の目でご確認してみて下さいませです 目

 

では、また次回ですよ~!  バイバイ