日曜日の午後、高級住宅地に水泳パンツひとつの姿で現れた会社重役ネッド。彼は近隣のプールを順々に泳ぎながら我が家へ帰りつこうとする。だが、彼が出会う人々の態度は次第に奇異なものとなり、ネッド自身も人生への疑問を抱くようになる、、。
- THE SWIMMER - 監督 フランク・ペリー 原作 ジョン・チーバー
出演 バート・ランカスター、ジャネット・ランドガード、ジャニス・ルール 他
こちらは1968年制作の アメリカ映画 です (94分)
アメリカンニューシネマ の代表作に数えられる本作ですが、その中でもかなりの異色
作で、カルト映画にも入る部類の作品です。 かなり昔、この映画を偶然テレビで鑑賞したのですが、エンディングの強烈なインパクトが、トラウマのように脳裏に焼き付いていて、DVDがあると知り、お取り寄せしました。
ニューヨーク校外の高級住宅地。 小高い丘の上に建つプール付きの邸宅に、水
着姿の男が現われます。 主人公 ネッド 邸宅の友人であるネッドは今でも若々しく生命力にあふれていました。 皆がうらやむ中、ネッドは 「ここから友人の家のプールを泳ぎ継いで、自宅まで帰る!」 と言いだします。
友人達は冗談だと思い笑いますが、ネッドは有言実行。 その家のプールを泳ぎ、別れを告げて次の家へと向かうのでした。細かい説明を省いて簡単にストーリーの紹介をすると、自宅に帰る途中に点在している友人の家にあるプールを泳ぎついで、自分の家にまで帰ろうとする男の話です。
シンプルかつ摩訶不思議なお話。 これだけ聞くと変な男のコメディ映画のようですが、内容はかなり シリアスで、シニカルなものです。 それはストーリーが進んで行く事で、徐々にネッドという男性の過去や現在 彼が置かれている状況が、訪ねる家の住人の少ないセリフや、行動によって抽象的に説明される構造になっています。
最初は好意的だった住人が、後半になるにつれ冷たくなっていく住人の言動。 それに応じて前半でのネッド自体も年相応に弱々しくなり、季節まで秋色で空は曇り、最後には猛風雨と化すのです。
ネッドという男をある種の 階級層の象徴 になぞらえ、男性社会や、女性蔑視、特権、肩書といったもののもろさや、愚かさ、儚さが描かれています。 泳ぐ という行為は、ギリシア神話の中のナルシスのエピソードをモチーフにしているようですが、そこまで深く考え込む必要はない気もします。 理屈で思考すると、映画本来の面白さが損なわれてしまいますものね。
他の部分で、ある程度の社会への皮肉は十分伝わって来ますから。 そしてこれまで
にネッドが犯してきた罪は、後悔してももう遅かったのでありました。
心身共々疲れ果て、やっとたどり着いた我が家。 そこで待ち受けていた現実、、。
この半日程のネッドの子供じみた冒険は、彼自身の人生と現実を見つめる旅であると
同時にアメリカの現代社会を象徴したものでもありました。途中で出会った水のないプールで出会った少年は現実だったのか? それともネッド自身の少年期の幻だったのか、、?
ネッドの主観で映画は進み、私達はそれを見ますが、それが全て現実とは限りませんそれは映画が進むにつれ、時折ネッドの言動に危うさが垣間見れる瞬間がある為です
この作品の特異性は、超現実的であり、同時に非現実的という真逆の要素が一つに集約されている点です。 シュールであり現実的、それでいて 奇をてらった いやらしさが無い不思議な映画です。
小難しい映画では?と思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、決してそのような作品ではなく、興味深くご覧になれる作品だと思いますので、気になった方は一度ご覧になってみてはいかがでしょうか?です。
では、また次回ですよ~!