木々に囲まれた木造りの家で母親はいつももの悪いに耽つていた。一面の草原にたたずむ彼女に行きずりの医者が声をかけるが、彼女は相手にしない。 スペイン戦争、第2次世界大戦、中ソ国境紛争などの記録フィルムを挿入しながら、主人公の母に対する愛慕、別れた妻と息子の関係を過去と現実を交錯させながら描く。

 

 


 

 

 

こちらは1974年制作の ソ連映画  です。 (108分)

 

「惑星ソラリス」 「サクリファイス」 等の アンドレイ・タルコフスキー監督作品で

 

ございます

 

 

 

 

詩的な映像作品や作家性の強い作品が多く、作品数も少ない為、一部の映画マニアさ

 

ん達に好まれているタルコフスキー監督。 本作はその監督のフィルモグラフィーの

 

中でも、かなりパーソナルな内容となっています。

 

 

 

 

  映画は具体的なストーリーを持たずに進行します。 主人公である作者の過去の断

 

片的な幼少期の出来事と、ソ連の歴史、宗教や芸術といった様々な記憶が交錯します

 

吃音の青年がTVの中で回復訓練を受けている映像。 青年が喋れるようになり、タ

 

イトルが表示されるオープニングは、検閲の厳しかったソ連時代からの脱却を意味し

 

ているようでもあり、タルコフスキーの観念と比喩が込められています。

 

 

 

 

そして作者の少年時代、若い母と農場の家の記憶。 通りすがりの男との会話と風。

 

場面を紡ぐように作者の詩が朗読されます。 祖父の別荘で納屋が燃えた記憶。

 

印刷所で校正係を務めていた母が、印刷物の校正ミスをしたと慌てる一幕。 訪れた

 

老婦人の家で本の一節を朗読する息子。 カップの痕跡が消ていくテーブル。 

 

 

 

 

少年時代の雪の射撃訓練場。 妻と作者の冷めた会話。 苦しい家計の為、自分の宝

 

石を売りに訪れた疎開先の家。 草原でこれから産まれてくる子供の事を語らう父と

 

母。年老いた母が少年期の作者と妹の手をひき風の中を歩いていく。朽ちた井戸、。

 

 

 

 

私達も日常生活のふとした瞬間に、急に幼少期のある日の断片を思い出したり、忘れ

 

ていた風景が蘇るという事があります。 記憶というものに秩序はなく、不連続です

 

タルコフスキーのこの作品は、そんな人間の記憶にある風景と体験を、現在と同様に

 

再構築したような作品です。 それもあってか、母親、妻を同じ女優が演じたり、作

 

者の子供時代と息子も同じ子役が演じていたりして、観ている方は混乱します。

 

 

 

 

妻と母、自分の子供時代と息子。 過去と現在、それらがまるで合わせ鏡のように反

 

射し合い共鳴するタルコフスキーの世界。 監督自身の体験や記憶を映像化している

 

為、こちらが理解する事も感情移入する事も到底無理な作品なのではありますが、そ

 

れがタルコフスキー映画たる所。 隅々まで計算された映像美は、やはり見応えがあ

 

ります。

 

 

 

 

画面に映る水、火、風、光、木 の流れや揺らぎが普遍的な生命の営みを感じさせ、人

 

間の記憶の儚さを印象付けます。  流れ星

 

 

 

 

ストーリーを追う作品ではありませんが、ある人、ある場所、ある時間、確かにそこ

 

に存在した心象風景を共有して、ただただその世界の中に浸ってみるのも良いのでは

 

ないでしょうか? 

 

 

 

 

本作とは真逆に位置するブルース・リーのセリフ 「Don’t think.、Feel!」 が本作を

 

鑑賞するには最も適した言葉かもしれません。 ハマるとクセになるタルコフスキー

 

映画。インテリ向きな映画?と錯覚しますが睡魔に身を委ねるのもありかも、、、はてなマーク

 

 

 

 

という事で、興味が湧きましたらご覧になってみて下さいませ、です。  目

 

では、また次回ですよ~!  パー