能狂言「鉄輪」と、同じ人物設定の現代劇によるオリジナルシナリオとを並列構成して、嫉妬の執念を追究する。脚本・監督は「裸の十九才」の新藤兼人

 

 

 

 

 

 

貴船神社の丑三つ時、嫉妬に燃える中年女が藁人形へ五寸釘を打つ・・古代、11世紀。几帳の中で熱い抱擁を交わしている男女、中年女の夫と愛人の若い女である。突然、女が身悶え苦しむ。五寸釘の呪いだ。現代、執拗に繰り返される男女の情交。

 

 

 

 

 

 

電話のベルが けたたましく鳴る。電話をとっても無言である。電話は切っても切っても繰り返される。永遠と終わらないように。そして今宵も五寸釘を打つ音がこだまする、、。

 

 

 

 

 

 

こちらは1972年制作の 近代映画協会映画 日本 です (91分)

 

こちらでも何作かご紹介させて頂きました 新藤兼人 監督による、異色作品です。

 

能の演目である 「鉄輪」 を軸に、実際の 能 の映像と、室町時代の男女と後妻、そし

 

てメインの話となる、現代の夫婦と夫の愛人の話を交差させた映像によって、女性の

 

持つ「嫉妬」「怨念」 「執着」 といったものを、アートフィルム的な表現で映像化し

 

ております。

 

 

 

 

 

 

8mm  実際の 能 のお話の要約でございます。 デビルハート  おたふく

 

ある夜、神社の社人に夢の告げがありました。 丑の刻 (午前2時頃) 参りをする都の

 

女に神託を伝えよ、というものです。 真夜中、神社に女が現れました。 女は、自分を

 

捨てて後妻を娶った夫に、報いを受けさせるため、遠い道を幾晩も、神社に詣でてい

 

たのです。 社人は女に、三つの脚に火を灯した 鉄輪 を頭に載せるなどして、怒る心

 

を持つなら、望みどおり鬼になる、と神託を告げますが、女とやり取りするうちに怖

 

くなり、逃げ出してしまいます。

 

 

 

 

 

 

女が神託通りにしようと言うやいなや、様子は変わり髪が逆立ち、雷鳴が轟きます。

 

雷雨のなか、女は恨みを思い知らせてやると言い捨て、駆け去ります。 女の元夫は

 

連夜の悪夢に悩み有名な 陰陽師 を訪ねます。 陰陽師 は、先妻の呪いにより、夫婦の

 

命は今夜で尽きると見立てます。 

 

 

 

 

 

 

男の懇願に応じて、陰陽師は男の家に祈祷棚を設け夫婦の形代(身代わりの人形)を

 

載せ、呪いを肩代わりさせるため、祈祷を始めます。そこへ脚に火を灯した鉄輪をの

 

せ、鬼となった先妻が現れます。 鬼女は捨てられた恨みを述べ、後妻の形代の髪を打

 

ち据え、男の形代に襲いかかりますが、神力に退けられ、時機を待つと言って姿を消

 

すのでした、、。 恐ろしいお話でござりまするな~

 

 

 

 

 

 

現代のお話は、愛人の家に暮らし情事にふける夫。ドキドキ  妻に別れ話を持ち掛けますが、

 

妻は 「別れません」 の一点張りで耳を貸しません。 その後、愛人宅で過ごす夫の元

 

に無言電話が執拗がかかってくるようになります。切っても切っても鳴る電話。 

 

二人は逃げるように離れたホテルへ出かけますが、そこでも電話が鳴り続けるので

 

ありました。 

 

 

 

 

 

 

大まかなストーリーはそれぐらいですが、現代に能の装束をした妻が現われたりとい

 

う、実にシュールな映像と 着物 愛人の女が画面に映っている時はほぼ全裸だったり

 

というエロティックな映像。 室町時代の妻が何度も神社に向かって走る走る走る。 

 

藁人形の股間にこれでもか ビックリマーク と五寸釘を打つ打つ打つが、リピートされます。 金槌 

 

もうここまでくるとカルト映画でございます。 いえ、カルト映画そのものです。

 

 

 

 

 

 

主演の 乙羽信子さんの 白塗り顔 のアップの怖い事、怖い事。 真顔  鳴り響く電話

 

の音がまるで女性の叫びのように聞こえる恐怖と、無言で釘を打つ形相の対比。 

 

女性の怨念の恐ろしさを背筋に感じてしまう私でありました。 キャンドル  但し、本作や演

 

歌等では女性が未練がましい物が多いのですが、実際は男の方が未練がましかったり

 

するもので、ストーカーなどは ちらり 圧倒的に男が多いのが事実で、意外と女性はサ

 

ッパリとしているものでございます。 男性の願望の世界でもあるような気もする、

 

ひねくれた私です、あせる

 

 

 

 

 

 

能 表現以外の現代部分が少々凡長で、面白みを感じない所も無くはないのですが、

 

様々な作品を撮りながらも、このような アバンギャルド な映画も作ってしまう 新藤

 

兼人監督のフットワークの軽さに驚くばかりでございます。 なかなか クセが強い 

 

作品ではありますが、この機会にでもご覧になってみて下さいませです。  目

 

 

では、また次回ですよ~! パー

 

 

 

 

 

 

 

まるで本作を歌っているかのような 山崎ハコの「呪い」よろしければお聞き下さい