狩場勉は就寝中、父の保三に絞殺された。母の良子は息子の首を絞める夫を見つめるだけだった。二人は一人息子を東大に入れるため、一流高校の学区まで転居してきた。勉は同級生の初子に恋をするが、彼女は実の母を亡くし義父に犯され続けていた。勉は初子から呼び出されて蓼科を訪れ、義父を刺し殺したという初子を抱いた。一人で自首するという初子と別れた勉は、その後のニュースで彼女が投身自殺したことを知る。それからというもの、勉は両親に暴力をふるうようになり、さらには母親を犯そうとするのだった。思いあまった保三は勉を絞殺し、懲役三年・執行猶予四年の刑を受けてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

こちらは1979年制作の 近代映画協会 ATG の作品となります 日本

 

1977年に実際に起きた 開成高校生絞殺事件 を元に、脚色された映画であります

 

「鬼婆」 につづき 新藤兼人 監督 脚本 製作 で、父親に 西村晃、 母親に 乙羽信子、

 

息子の勉 に 新人の 狩場勉 という配役で、一つの家族の崩壊を描いた 社会派ドラマ

 

です

 

 

 

 

 

 

オープニングは父親が、自分の息子が寝ている首を絞める というシーンから始まりま

 

す 縄 息子を東大に入れる為、進学校の近所に引っ越してきた家族  家**

 

父親は喫茶店を経営しているが、普通の高校を出た程度の学歴で、息子に過大な期待

 

を寄せ良い大学を出る事こそが将来を左右すると信じ、学歴社会の信仰者であります

 

母親は息子が幼い頃から可愛がり、高校生になった今でも 指を切った息子の指を、自

 

分の口に持って来るような程、過保護気味に育て、父親には従順な妻でした

 

 

 

 

 

 

息子の 勉 はおとなしく、父親の長々とした話にも耳を貸し、自分の意見を口に出せな

 

いような性格で、内にこもるようなタイプです その為か、進学が目的だけの高校で

 

は 友達同士はライバルだ!という校風に馴染めず、孤独な学生生活を送っていたので

 

すが、クラスの一人に好意を寄せ、デートに誘い 行為に及ぼうとしますが拒まれます

 

ある日、彼女の家を覗くと義父が彼女の身体を もてあそんでいるのを見ます ポーン

 

 

 

 

 

 

ショックを受ける 勉   学校へ来ない彼女から電話があり 「蓼科に居るから来てほし

 

い」 と告げられ 勉 は向かいます 母親が亡くなり、義父に乱暴されつづけていた、

 

だから殺したと その場で二人は結ばれます (雪の上でありまして、ここが ATG臭 

 

を感じるのであります)  先に一人で 勉 を返す彼女、翌日のニュースで彼女が自殺し

 

た事を知る 勉 ドンッ 

 

 

 

 

 

 

何かが壊れました その日から 勉 は反抗的になり、仕舞には家のあらゆる物を壊し、

 

両親にまで暴力を振るい始めます 父親という存在を否定し、憎む対象になり そんな

 

父親に従順な母親を自分の手に取り返そうと、母親を 犯そう とまでするのです 叫び 

 

(エディプスコンプレックスの典型でありますな)

 

 

 

 

 

 

遂に限界となった父親は、寝ている 勉 の首を、自分の寝巻きの帯で絞めるのでした

 

当時はまだ、家庭内暴力という言葉や、子供のメンタルケアが不十分だった時代で、

 

実際の事件でも精神科等へ連れて行ったようですが、「わがまま病」 という診断をさ

 

れたようです

 

 

 

 

 

 

彼女のシークエンスは全くの創作であり、家庭内暴力ももっと酷かったようで、5ヶ

 

月間程続いての事だったようです 両親も後を追うつもりだったが死にきれず自首

 

し、裁判では異例の 懲役3年・執行猶予4年 という判決になっております てんびん座

 

映画では 勉 という青年が、父親という存在に大きな憎悪を抱くまでが、ちょっと描き

 

切れていない感じはあるものの、その分、過保護と思える母親との関係を描く事で 勉 

 

という青年の心の歪みを表現しているような気がします

 

 

 

 

 

 

子供を失ってから母親も心が壊れて来ます 象徴的なのが着物にサングラスです 顔

 

を見られたく無い、と同時に彼女も外の世界を遮断した心理を象徴しているようです 

 

印象深いシーンでタクシーに乗り、次々に行き場所を変えては後部座席で歌を歌うと

 

いう奇行の場面です

 

終いには、父親に 「勉 を返しなさい!」 「返してくれなければ私も 勉 の所に行きま

 

す!」 と詰め寄るのであります もうここでは母親も完全に壊れてしまっているの

 

です 

 

 

 

 

 

 

家の近所の住人も、同情しているような顔をして、ドカドカと野次馬のように生活を

 

覗き込んで来ます 目 あし (映画でのメンツが凄いのですが、殿山泰司、小松方正、

 

草野大悟、初井言榮という恐るべき個性的な方々、、これは怖いです)

 

様々な要因によって壊れて行った、一つの家族を描いた映画でありますが、時代とい

 

うのも大きな要因でもあった感もありますが、何処にでも起こり得る恐ろしさも含ま

 

れています

 

 

 

 

 

 

そしてどうしたら良かったのか?その答えはここには見い出せません それぞれがこ

 

の作品を観てどう感じるか、が監督の意図なのかも知れません 貴方ならどう感じる

 

でしょうか?

 

この機会にご覧になってみて、お考えになってみてはいかがでしょうか はてなマーク

 

では、また次回ですよ~! パー

 

 

 

 

 

 

-PS-


劇中 勉 が彼女の思い出と共に何度も聴く 加藤登紀子 の 鳳仙花 勉 の死後、母親も

 

度々聴く事になるのですが、予告動画も無く、曲も無かったので、音は小さいですがスラ

 

イドを作ってみたので、よろしければご覧下さい  音譜