敗色も濃厚となった昭和20年5月 九州のF市にも毎晩のように米軍機による空襲が繰り返されていた 医学部の研究生、勝呂と戸田の二人は物資も薬品も揃わぬ状況下でなかば投げやりな毎日を送っていた そんなある日、二人は教授たちの許に呼び出された それは、B29の捕虜8名を使った生体解剖実験を手伝えというものだった、、、

 

 

 

 

 

 

こちらは1986年制作の 日本映画 日本 です(123分)

 

太平洋戦争末期に 実際に起こった 米軍捕虜に対する生体解剖事件 内臓 を描いた

 

遠藤周作の同名小説を、社会派 熊井啓監督 が映画化した問題作でございます

 

 

 

 

8mm  映画は戦犯として捕らえられた登場人物が、米軍に取り調べを受ける回想の形で

 

物語が進んで行きます  牢屋  昭和20年5月 日本は敗戦の色が濃く漂っていました 

 

煙突 勝呂は九州のF帝大の医学部第1外科研究生として病室に詰めながら、短期現役 

 

(医学生に限り、2年間の期間のみの徴兵という特例待遇)を待つ身でした 旭日  

 

F帝大医学部には勝呂と親しい 戸田 という研究生がいました 勝呂は医療に対して真

 

摯で、患者のために尽力しようという学生でした 対照的に戸田は敗戦の色が濃い大

 

衆の多くの意見 「病院で死なない奴は、空襲で死ぬ」 という、どこか諦観の入った気

 

持ちでいました  真顔

 

 

 

 

そんな中、F帝大医学部では1か月前に医学部長が亡くなり、新たな「医学部長」の椅

 

子の取り合いが始まっていました 候補として挙がっているのは第1外科の橋本教授

 

と、第2外科の権藤教授でした  ある日 有力人物の親戚である婦人の手術が行われ

 

る事になります 研究生の勝呂と戸田も手術に立ち会う事になります 手術は点数稼

 

ぎのため橋本教授自らが執刀しますが、成功率が高い筈の手術が、失敗してしまいま

 

す 手術の失敗の隠ぺいを図る為、「オペは成功した」 しかし 「今夜が山です」 と

 

家族に伝え、遺体を生きたように扱って 隔離室に閉じ込めます そして翌日になって

 

から家族に 「今朝亡くなった」と告げるのでした。  

 

 

 

 

これで手術によって亡くなったという事実は隠ぺいされました もやもや そんな大学病院

 

の医師達の姿を見て戸田は 「まるでコメディだ!」 と勝呂に言い放ちます。そんな中

 

でも警報が鳴り 大学病院も空襲にあいます T-5 生と死 の狭間で苦悩する二人。

 

ある日二人は橋本教授の元へ呼び出されます アメリカのB-29戦闘機が撃墜され、

 

生き残った9名のうち取り調べに必要な機長1名を除く8名を、生体解剖するというも

 

のでした。 ​​​​​​包丁

 

 

 

 

それは軍からの命令で、当時、政府軍の命令は絶対でした 本来は銃殺刑なのです

 

が、どうせ殺すのなら医学の情報収集措置として有用に利用しろという思惑もありま

 

した ドクロ 二人は断る事も出来ましたが、実験の助手をする事を了解します  戸田

 

は 「みんな死ぬ世の中だから」 と死に対する恐怖に慣れてしまっていました  勝呂

 

は日本の医学の進歩とどうせ殺される捕虜だと納得しようとしますが、敵の捕虜とは

 

いえ、健康な人間にメスを入れ殺す という行為の残虐性と恐ろしさで、遂には もう何

 

も考えない 考えることに疲れてしまっていました  そして​​​​​​、その日がやって来るので

 

した、、、

 

 

 

 

以前ご紹介した 「サイレンス 沈黙」 も 遠藤周作の原作でありましたが、本作でも 

 

「神」 というワードが出て来ますが、宗教的、信仰の対象の神とは違った意味合いで

 

使われているのが興味深い所でもあります 戦時中のあのような状況下で「良心」と

 

いうものを保てるものか、空襲で隣人が殺されているのに、敵国の捕虜に 人間的愛 を

 

感じれるものなのか? 軍の圧力もある中で、特に無宗教的な日本人に問われても正

 

直難しいのであります aya しかし、本作の主人公達は医療に携わっている人間、命と

 

いうものの倫理観が強い人達、当然職業上、命を救う立場の彼等ですから苦悩は理解

 

出来ますが、何故か私は戸田の気持ちの方に同情してしまうのでした (ダークサイド

 

の方の力に負けやすいダメな私、、) ヨーダ

 

 

 

 

本作は効果的にモノクロで撮影されています 劇中に度々登場する実物の手術映像と

 

臓器の動くさま 胃袋 ドキドキ カラーでは無理でしょう  同時に、私達が普段見る戦時中

 

の映像はモノクロの映像ですから、その方が物語にすんなりと入り込みやすいという

 

のもあります ヒッチ 映画のエンディング、ナレーションと共にこの事件に関わった人

 

間の顛末が語られます。極東国際軍事裁判において、生体解剖関係者25名は絞首刑 

 

5名を含む有罪判決を受けた しかしその後彼らは朝鮮戦争をはじめとする、国際情

 

勢の急激な変化にともない、全て釈放された、、、 そう戦争なんて、勝った側の都

 

合で、判断やルールも変わるのであります。

 

 

 

 

そこにこそ 戦争 というものの本質があるようで、恐ろしい限りでございます  滝汗

 

ドイツ人らしい登場人物の ヒルダ婦人 ここだけ何やら変な空気を感じたのは私だけ?

 

出演陣は、勝呂に 奥田瑛二 戸田に 渡辺謙 他に 成田 三樹夫、岸田 今日子、田村 

 

高廣、根岸 季衣、西田 健、岡田 眞澄、千石 規子 という渋い布陣です  中でも 西田 

 

健 さんは昔からお顔は知っておりましたが、本作の中では成田三樹夫さんと共にひと

 

きわ素晴らしい存在感でお見事でありました OK(主役二人じゃないのか~い!感) 

 

音楽も意外と良くて重いテーマでありますが (敗戦国あるある) 機会があれば、一度

 

ご覧になってみて下さいませです  目

 

では、また次回ですよ~! パー