昼は地下鉄の駅員としてキップ切りや駅の清掃をし、夜は口やかましい女房の相手と、単調で退屈な日々を送るしがない男 男はある日、息子が昆虫の標本作りで使う注射器を見てあることを思いつく さっそく薬局で大量のクロロホルムを購入、夜、若い女の住む部屋の窓からクロロホルムを吹き込むと予想通り女を眠らせることに成功した、、、
こちらは１９８２年制作の 日本映画 
です（１０３分）
内田裕也 自身の持ち込み企画で、１９８１年に宮城県仙台市で発覚して世間を驚かせ
た 「仙台クロロホルム連続暴行魔事件」 を元に脚色された作品です 事件の裏を取ろ
うとしたのですが、ネットでは事件の詳細は見つかりませんでした 
確認出来た範囲としては、映画ではひと夏の出来として描かれていますが、実際の犯
人（地下鉄職員ではなく、当時４６歳の建設メーカーの営業マン） は５年以上に渡っ
てドアの鍵穴 （映画では「窓の隙間」）からクロロホルムを注入して部屋の中の女性
を眠らせて宅内に侵入していたようで、その数 ７０人 を超えるという半端ない強姦魔
による凶悪事件であります。実際の犯人が逮捕され、取り調べで 「襲った中に処女は
二人だけでした」 と語ったそうですが、そんな事分かるものなのか、、、
疑問も
感じますがね、、、
駅の改札で乗車券をパンチ （昔は、駅員が切符を切っておりました） する男
（役名なし） そのパンチする音は 
まるで男の心の苛立ちのように聞こえます
妻子持ちの男は、毎日の単調な作業を繰り返す仕事に、いつしか無気力になっていま
した。ある日の帰り道、暴漢に襲われていた女 じゅん を助けて彼女の家まで送り、親
しくなり男の生活にわずかな変化が始まります 休日、家族で訪れた先の茂みで 
男女の交わりを見ます 
その瞬間、男の中で何かの衝動が起きます 
ある日、子供が昆虫採集で使って
虫を眠らせている光景を見て、これを女性に使う事を思い立つのでした 喫茶店で目
を付けていた女性を尾行し、遂に決行する男
注射器に入れたクロロホルムを窓から注入し 
頃合いを見計らいマスクを装着し
て部屋に侵入 （キャシャーンのようなマスク） 
目的を果たすのでした 男はそ
の女に執着するようになり、度々訪れては女の為に朝食を作ったり、風呂掃除、洗濯
をして目覚める前に立ち去るという異様な行動をするようになります
女もいつの間にかその謎の男に興味を持つようになっていたのでした 男の欲望は
暴走し始め、その女意外にも目を付けた女達を次々と襲うようになっていたのでした
本作は 内田裕也による、内田裕也の為の映画であります 演技どうこうというよりも
内田裕也 という存在の 異質感 が全編を覆っているのであります 
空虚な
表情と目の奥に見えるギラギラとした殺気 彼の出演作の中でも一番のはまり役では
ないでしょうか？
覚醒後、坊主で黒装束に変化する所は 「タクシードライバー」 を彷彿とさせます 
彼に度々襲われる女を 中村れい子 という女優さんが演じております （当初は高畑淳
子が演じる予定でしたが、クランクイン目前にドタキャン 
逆に良かった、、） 本
作の中では、とても美しく輝いておりました 他にもチョイ役で、沢田研二、安岡力
也、赤塚不二夫、タモリ、原田芳雄、常田富士男、MIE （ピンクレディー）、藤田弓
子、殿山泰司 と豪華な顔ぶれです。
防犯カメラやセキュリティの意識が高くなった現在では不可能な犯罪ですが、それを
含め、ある時代の一瞬を切り取った映画としても貴重な作品です。
ジンジャエール、養命酒、ポラロイドカメラ、カエルの実験、注射器からの放物線、
コンドームの自販機、シャボン玉、そして男の心象風景を具現化したような 水のない
プール 
シリアスな犯罪映画でもあり、シュールなコメディ映画でもあり、アー
トフィルムでもあります。
大野克夫 が担当している音楽といい、映像といい、映画自体も ザラザラとした異物感
を放つ作品です。実際にロックをしている事を見た事が無い ロケロール！内田裕也さ
んでありますが、本作では ロケロール！されております DVDの特典にはインタビュ
ーも入っており、意外と真面目にインタビューに答えていたのは微笑ましかったです
女性は 嫌悪感 しか持たないかもですが、なかなかカッコイイ 内田裕也 をご覧になっ
てみてはいかがでしょうかです 
では、また次回ですよ～！ 
