シャム双生児をテーマにしたブライアン・デ・パルマ監督の作品。 ヒッチコックへのオマージュも色濃い初期のサスペンス・スリラー。

 

 

 

 

 

 

                   -  SISTERS  -  監督 ブライアン・デ・パルマ

 

 出演 マーゴット・キダー、ジェニファー・ソルト、チャールズ・ダーニング 他

 

こちらは1973年制作の アメリカ映画 アメリカ です(92分)

 

 

  美しいモデルのダニエルと一夜を過ごした男性が殺害される その現場を真向いのマンションから目撃した記者グレースは探偵ジョセフとともに事件解明に乗り出す やがてグレースたちはダニエルをめぐる秘密を知ることに ダニエルは体がつながったまま生まれたシャム双生児だった、、。

 

 

 

 

以前にもご紹介した ブライアン・デ・パルマ 監督の初期の作品で、本来のデ・パルマの作家性である 「サスペンス、サイコ、殺人」 という作風が初めて登場した映画で、なおかつこの作品で既にブライアン・デ・パルマ 映画を確立した、記念碑的な作品です。 映画は、まだ未成熟の胎児の映像から始まります (音楽は、ヒッチコック映画でお馴染みの、かの バーナード・ハーマンが担当しています) 最後はシャム双生児 (結合双生児の事で、タイ出身のブンカー兄弟が、サーカスの見世物として巡業していた時に、シャム(現在のタイ)人の双子 と名乗ったのが シャム双生児 という言葉の始まりだそうでございます) の映像で終わるというオカルト風の不気味なオープニングタイトルで幕を開けます。

 

 

  

 

そこから一変して、「ピーピングトム」 というテレビ番組の収録場面へ移ります。 そこでエキストラ出演していた 美しい ダニエルと黒人男性 フィリップ は親しくなりレストランへ向かいます。 そこへ元夫だという エミールが現われ、二人を引き離そうとしますが、彼はレストランから追い出されてしまいます。 その後二人は良い感じになり、ダニエルのアパートへ向かいますが、窓の外にはストーカーのように、またもエミールの姿がありますが、そのまま二人は一夜を過ごします。

 

 

 

 

ベッドで寝ていたフィリップは、ダニエルと女性の言い争う声で目覚めます。 ただならない空気を感じ、帰ろうとするフィリップを引き止めたダニエルは、今日は誕生日で、双子の妹の ドミニク が同居していると告げます。 ただ、妹はちょっと精神的に不安定なのだと、、、  彼女に同情するフィリップは、頭痛がすると言うダニエルの為に薬を買いに出かけます。  薬局に立ち寄ったフィリップは気を利かせ、ケーキ店に立ち寄りバースデーケーキに、ダニエルとドミニクの名前を入れてアパートへと戻ります。 ロウソクに火を点け、ベッドで寝っているダニエルの枕元でサプライズ! その瞬間、ケーキに添えてあったナイフでフィリップは、メッタ刺しにさえてしまいます  血ナイフ   

 

 

 

 

息も絶え絶えに助けを呼ぼうと窓へと這うフィリップ。 その姿を向かいのアパートの住人で、ローカル新聞女性記者の グレース が見ていました。 慌てて警察に電話をかけ駆けつけた警察と共に現場とみられるアパートの部屋へと向かいます。 しかし、到着したダニエルの部屋には殺人が起きたような形跡は跡形も無く消えていたのでした。 彼女が見たという殺人はグレースの妄想では?と疑う警察を尻目に、グレースは自ら殺人事件の調査を始める事にするのですが、そこには恐ろしい秘密が隠されていたのでありました、、、 

 

 

 

 

映画自体は、既にオープニング映像で双生児についての説明等がされている事もあって、ある程度ストーリーの予測はついてしまうのですが、そこはデ・パルマも当然 計算済みです。 それが如実に表現されているのが殺人が起きた後、デ・パルマの代名詞 でもあるスプリットスクリーン (一つのシーンを分割した画面で見せる) が登場します 二つの画面に殺人を目撃したグレースの行動と、もう一つの画面には殺人現場の処理が同時に映し出されます。 そこで元夫というエミールと、ダニエルの関係性が、さりげなく明かされる仕掛けにもなっています。 こういう見せ方にワクワクする私。

 

 

 

 

フィリップの遺体や、現場の処理をするエミールと、画面反対では警察と現場にやって来るグレース達の姿が同時に描写され、その映像だけでスリリングに展開するドキドキの見応えのあるデ・パルマ演出が見事です。 部屋にあるソファーに遺体が隠してあると目をつけたグレースは、雇った探偵にソファーの行方を追跡させ、自分はエミールとダニエルを尾行します。 その先でグレースはある建物にたどり着きますが、そこは精神を病んだ人々の入院施設でした。 

 

 

 

 

エミールの策略で、グレースはその病院の患者に仕立て上げられ、拘束されて注射を打たれてしまいます。 そこで恐ろしい事実を体験する事になるのですが、この場面ではモノクロの粗い画質で撮影され、まるで昔の怪奇映画のような演出がされています。 そこでエミールは、薬の効いたグレースに催眠術をかけて事件の記憶を消してしまいます。ラストのショットと、証拠になるケーキの顛末に、なんとも不思議なユーモアを感じてしまうエンディングになっています。 滝汗

 

 

 

 

ヒッチコック映画の 「サイコ」 「裏窓」 「めまい」 等の様々な要素を混ぜ込んで、独特のデ・パルマ風味のサスペンス作品に作り替えてしまう手腕はやはり見事です。当時の マーゴット・キダ― のエロティックさとコケティッシュ感がなかなかハマっていて、共演の ウィリアム・フィンレイ のドアップの強烈さはもう一つの見物です。デ・パルマ ファンだけでなくても、サスペンス映画好きの方にはなかなか見所のある作品だと思いますので、興味が湧きましたらご覧になってみて下さいませです。

 

では、また次回ですよ~! パー